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2023信越五岳トレイルランニングレース100マイル、気持ちで掴み取った完走。



緊張でうまく笑えない


2023.9.16~18に開催されていた信越五岳トレイルランニングレースに参加してきました。

2019年に信越五岳110km部門に出たとき、100マイルの選手がヘッデンを付けてゲレンデを登ってゆくスタートがキラキラまぶしくて、私もいつか100マイルを走りたい、でもそんなことできるんだろうか?思っていました。

私は2021年と2022年に出場したKOUMI100マイルに2度ともDNFしています。だから、今回スタートするのが本当に怖かった。始まってしまったら一秒も油断できないと思って。案の定、酷暑、雷雨、川のようなトレイル、襲ってくるスズメバチ、厳しい関門時間…。いろんなシチュエーションがあった大会でした。

●信越五岳に向けての練習

JR田中さんのコーチングを受けて1年4か月経過しています。

月一の田中さんとのmtgで、あるとき「1回1回の練習に意味がある」と言われ(当たり前ですね)、練習メニューに手を抜かず取り組もう、と決めました。

例えば「トレイルランニング3時間」というメニューがあったら、3時間ギリギリまでトレイルで粘ります。今までは残り10分時点で登山道口に着いたら、駅までジョグで時間をつぶそうとしていました。もうそれはナシ。残り10分でももう一回トレイルに戻って上り下りします。諦めないメンタルが少しは身についたと思います。

辛かったのはヤビツ峠走!嫌すぎてお腹が痛くなり、始める前は毎回秦野駅のトイレに駆け込んでました。どなたかが「峠走には全てが詰まっている」と言っていましたが、ほんとそうだなー。今回信越を走って、あの辛いヤビツ峠走やっててよかったと思いました。辛くても止まらず、細かくギアを変えて粘る。菜の花台からは全力を出す。鍛えられたと思います。ほんとに行きたくないけどw

真夏のヤビツ峠はつらいしかない

慣れないback to backもつらかったー。毎回、声も出ないくらい疲れて、晩ご飯を外食やスーパーの惣菜ですませることもありました。同じ趣味の夫でよかったw

よく行ったのは鶴巻温泉駅からの権現山、大山


あとはSSRやテンポ走。いいのか悪いのかわからないけど、メニューで提示されたスピードよりほんの少し速く走るようにしました。苦手だったトレミも積極的に利用し、ペースを緩めず走るクセをつけました。

●スタート⇒バンフ


今年はやらないと聞いていた花火が上がります。キレイ…。でも怖いよー…。不安と感動で情緒不安定になっており、泣けてきます。顔もぐちゃぐちゃ。


しばらくは同じく出場していた夫と並走します。登りは早歩き、下りは膝や前腿に負担をかけないように走る。周りの選手のペースに惑わされないことだけを心掛けて走りました。逆に斑尾山や袴岳の登りは渋滞してゆっくりペースだったので、脚を休ませることができたと思います。

●バンフ⇒赤池⇒アパ


表情に余裕がない


アパリゾートエイドまでのゲレンデの長い下りは上手くこなせなかった。こういう急降下は普段練習で走っている山域ではなく、やりづらい。前腿をつかわないように、なるべく上半身で衝撃を受けなきゃと慎重に進みます。でも、自然とブレーキで前腿を使ってしまいます。(まずいな…。)と思ったときにはすでに遅し、序盤なのに筋肉痛のような痛みが出始めていました。

●アパ⇒自然の家⇒池ノ平


自然の家を出る際、日差し対策でモンベルの二等兵帽に変えます。序盤のボス、ゲレンデの900mアップ。直射日光を受けながら心を無にして、足元を見ないよう、5人くらい前の人の背中から目を離さずに上ります。私は幸いにも暑さには強いらしく(アー日焼け止め塗りなおすの忘れちゃったな、またシミがふえるな…)なんて考えていました。あと、何回も自分に言い聞かせていたのは、「もう始まったんだから終わったも同然!」

登りきると、湧き水で水分補給できる箇所があります。冷たい…。気持ちいい…。ボトルにも満タンに補給します。これがないと次のエイドまでたどり着くことはできなかったな。

●池ノ平⇒黒姫


この区間、ゆるやかな登りで無我夢中になりすぎ、マーキングを見逃して2キロくらいロストしてしまいました。やってしまった!と思いましたが、2キロくらいでよかったです。

関川沿いに降りたとき、若いお母さんとチビッコがおおきな桶に掛け水を用意してくれていて、やっとホッとしたのを覚えています。あと、宴会隊エイドのシソジュース。冷たくておいしかった。エイドにいたちゃんぷさんと会話して、気持ちを切り替えました。

●黒姫


予定より1時間早く到着。33時間と32時間のタイム表を作っており、前半は32時間ペースで、後半は33時間ペースで行こうとしていました。32時間ペースより早く着いたのです。

ここでシューズを交換します。ONTAKE100kmでは調子よかったベクティブプロですが、両足とも親指の外側に大きなマメができていました。エイドは早く出たかったのですが、ニューハレのブースでテーピングを交換してもらうことに。ニューハレの方に「ここ張ってるね」と前腿を押され、絶叫します。「痛いぃい!!」シューズはアルトラのオリンパスに替えます。

●ペーサー


同じ厚木大学のジュンジさんにお願いしました。山の経験が豊富で、ここち良い気遣いをしてくださる方なので、後半のぐちゃぐちゃメンタルを支えてもらえると思い、エントリーするときに真っ先にお願いしました。でも正直、ジュンジさんの走力に若干不安はありましたw 終わった今、謝ります。疑ってごめんなさい!!

●黒姫⇒笹ヶ峰


もう前腿終わってます


ジュンジさんと合流した安心感からか、痛いところとか疲労感がどっと出たような気がします。笹ヶ峰到着の直前から雷雨があったのかな?暑いし、レインを着るのが面倒くさかったのですが、ジュンジさんに促されモンベルのシェイクドライを着こみます。あ、そびえ立つ階段があって一瞬嫌だなと思ったけど、何も考えずに登ればよかったから「階段って楽だな」と思えました。

シェイクドライはいいですね。


しかし、このあたりからだんだんペースが落ちてゆくのです…。ただでさえトレイルの下りが下手くそなのに、雷雨でぬれた岩が滑って下れない。爪もうっ血していて着地するたびに悲鳴を上げそうに痛い。前腿ももちろん痛くて踏ん張れない。横向きになってゆっくり下ります。まだ元気な100kmの選手が合流しているので、下りを待たせているプレッシャーも地味に嫌でした。

笹ヶ峰では雷雨も最高潮に。エイドのカレーに雨がジャンジャン入ります。でも、食べられてる。カレーおいしいな…。食べられてるな。まだ身体は大丈夫だな。ここでやめようという気持ちにはまだなっていません。

●笹ヶ峰⇒西登山道⇒大橋林道


実は腰も痛くなってきていました


笹ヶ峰から西登山道まではゆるやかなアップダウンだったので、痛いながらもまだ32時間ペースで進めていたと思います。西登山道⇒大橋林道がキツくて長かった。ここで心が折れました。
「もう下りれない」
「100マイルって難しいな」
「前半飛ばしすぎたかな」
もう止める前提の発言が増えます。そのたびジュンジさんに励まされます。
「いいから走るんだよ!」
「あっちゃん(夫)と田中さん(コーチ)から大会前にメールもらってるんだよ。織江さんはどんなにつらくても淡々と走れる力があってそこが長所だから、めげそうになったら励ましてやってくれって」
「俺をゴールに連れて行ってくれよ!」
そう、ジュンジさんはここ7年、DNF続きなのですw

大橋林道ではエイドで一番楽しみにしていたパタゴニアのスープを2杯飲みました。あったかいスープ、胃腸が生き返るなぁ…。

ここで友人が救護スタッフをしており、
「この時間だったらもう間に合わないですよね!ねっ!!」
と掴みかからんばかりの勢いで尋ねる。友人も困ったと思いますw
「そんなに食べられて元気があるなら大丈夫だよ」
と励まされ、戸隠林道エイドに向かいます。

●大橋林道⇒戸隠スキー場


戸隠スキー場エイド、関門が23:30のところ、22:22に到着します。田中さんに作ってもらったSub33(制限時間ギリギリ)のタイムスケジュールでも、22:00には到着していないといけません。ここは関門時間ギリで到着したらぜったいに間に合わないから、最低でも関門1時間前には到着しておくように言われていた場所です。

やめたいよーって何回も言ってるところ


半泣きで「もう間に合わないからやめたい」と言うも、サポートに来ていた仲間のヒサエちゃんに「ここまで着いたのはすごいよ、もう行くしかないよ」と励まされ出発します。
(絶対に間に合わないに決まってる。瑪瑙山に登りたくない。瑪瑙山付近にはきっとスタッフがいるから、そこでやめよう)
そう思っていたとき、ジュンジさんからある言葉をもらいます。

●気持ちのスイッチを入れた言葉


なんと、ペーサーのジュンジさんはコーチの田中さんから、私を励ますメッセージを預かっていました。

織江さんが諦めそうになったら、この言葉を伝えて励ましてください。

『精神が肉体を凌駕する』

限界を超えるスイッチを入れることは僕でもできないことがあるし、できることもまれにある。できないかもしれないけど、スイッチを入れるチャレンジをしてください

スイッチ、たぶん入ったんだと思います。もう、水ぶくれの痛みも大腿四頭筋の痛みも爪先の痛みも全部感じなくなった。もちろん登りは走れませんし、途中少し歩いたりもしましたが、登りは全力で速歩きしたし、走れるところは体感キロ5で走った。何ならジュンジさんに「もっと飛ばしてください」って言った。完走できなくてもいい、今の全力を出し切ろう。全力でゴールに向かおう。

●ゴール


ゴールテープを見てやっとここがゴールだと認識しました。
よく見るとペアルックっぽい


ゴールが見えたとき。本当にあそこがゴールだと思えなくて、ジュンジさんに何回も
「あれは本当にゴールなの?またゲレンデ登るんじゃないの?」
って聞きました。本当にゴールにたどり着いたんだ…。夫も仲間もみんな待ってる。ゴールしたら泣くのかな?と思っていましたが、脳みそのスイッチが入ったままなのか現実感がなく、残念ながら泣けない。もう走らなくていいんだ、座ってもいいんだ…。安堵感で身体の疲れと痛みが一気に襲ってきました。

【結果32:48:19 女子35位(37人中)】

気持ちは晴れやかです。

正岡子規になった

ゴール後、スイッチが切れたのか全く歩けなくなりました。実力以上の走りをしたのだと思います。インフルエンザに罹ったときと同じくらいの弱り方です。次の日会社の休み、取っておいてよかった…。あと、新幹線で帰宅するというのも無理だっただろうな。来年参加される方はそのあたりの手配も気をつけてください!

支えがないと歩けない。意地でも表彰式は出る。

●最後に

レース後、Twitterを見ていたら、こんな記事を書いている方がいらっしゃいました。PERF. index別の完走率。

私のPERF. indexは471。完走率は21.4%。全体の完走率よりさらに低いです。ほんとに蜘蛛の糸を手繰り寄せたんだと思います。


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