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空調機器の2025年問題を解説する!

どうもこんにちは、沖やんです。
今回は設備設計オタクの回をやります。しかも時事ネタです。

ここ最近、法改正などで大きく業態が変化していく中で、例えば物流業界の「2024年問題」など、問題を掲げられている業界が多くありますが、空調機器にもそのような問題があり、今回は来年(2025年)に期限を迎えるために空調機メーカーがその対応に追われている現状を解説します。


空調機器の「2025年問題」とは

家庭用や業務用のエアコンは、主にフロンガスを使用して空調しています。ものを冷やす原理については以下の記事をご覧ください。

そんなフロンガスですが、かつてはオゾン層を破壊する成分が含まれていたため、オゾン層を破壊しないフロンガスの種類に置き換えた経緯があります。

今では冷媒R22などオゾン層を破壊する恐れのある冷媒は製造されなくなりましたが、地球温暖化の観点からみると、二酸化炭素より数百倍~数千倍影響の大きいガスが大半を占めているため、その影響が小さいフロンガスに置き換えることが目標として定められています。

ちなみに、地球温暖化係数(GWP)という、二酸化炭素を1とした場合の温暖化影響を強さを表す係数があります。主要冷媒のGWPは以下の通りです。

かつて使用されていた冷媒R22:1810
現在使用されている冷媒R410A:2090
R410Aに替わる冷媒R32:675

 出展:https://www.env.go.jp/earth/furon/files/gwp_list.pdf

また、フロンガスを漏らさないにようにすることも義務付けられています。具体的には、エアコンを廃棄するときにフロンガスを回収することなどです。

これによって、エアコンはR410A→R32に置き換えられつつありますが、どうして2025年問題になるのでしょうか?

それは、ビル用マルチエアコンにも低GWP冷媒採用を規定する指定製品化の期限が2025年に訪れるからです。すなわち、ビル用マルチエアコンに低GWP冷媒を採用する必要が出てきたからなのです。

でも、家庭用エアコンや店舗用エアコンではすでに採用されているR32でなぜ、ビル用マルチエアコンではメーカーが大変な対応に追われているのかというと…

それは冷媒R32が燃える性質を持つからです。

ビル用マルチエアコンとほかの空調機器の違い

ビル用マルチエアコンは、比較的大型の施設で使用されることが多いです。ちなみにフロンガス使用製品で能力が小さい順に並べると…

↑小能力
●ルームエアコン
●店舗用エアコン
●ビル用マルチエアコン
●モジュールチラー
↓大能力

という順番になります。その中で、ビル用マルチエアコン以外は以下の特性があります。

●ルームエアコン・店舗用エアコン
冷媒配管が室内にも存在するが、比較的能力が小さいため万が一冷媒漏れが発生しても換気をしっかりすれば問題にならない。

●モジュールチラー
比較的能力は大きいが、フロンガスの冷凍回路は屋外機で完結するため、万が一冷媒漏れが発生しても室内に影響することはない。

一方、ビル用マルチエアコンは…
比較的能力は大きく、さらに冷媒配管が室内にも存在するため、万が一冷媒漏れが発生した時に一気にフロンガスが室内に充満してしまう。
ということが起こりえます。

さらに冷媒R32は可燃性ガスなので、引火して火災の恐れもあります。(正確には微燃焼性ガスなので、爆発には至らないのですが)

そこで空調機メーカーの対応は

上記の通り、来年までにビル用マルチエアコンを冷媒 R32対応しないといけないのに、その冷媒 R32が燃える性質があるために、空調機メーカーは冷媒漏れ対策に追われているのです。

具体的には以下の対策をすることになります。
①冷媒回路の冷媒量を制限する
万が一冷媒漏れが発生しても、引火する濃度に達しないように冷媒量を制限する。

②機械換気装置を設置する
万が一冷媒漏れがあったときに、機械換気装置を連動させて強制的に換気することでフロンガスの濃度を薄くしたり、フロンガスを排出させたりして引火を防ぐ。

③冷媒回路に遮断装置を設置する
万が一冷媒漏れがあったときに、冷媒回路を遮断することで冷媒漏れを最小限にする。

④冷媒漏れを検知・警報する装置を設置する
万が一冷媒漏れがあったときに、警報音を鳴らすことで利用者に危険を知らせる。

上記の対策は、①の規定を満たせない場合②~④の規定を満足しなければなりません。

各空調機メーカーはそれらの対策品を提供するのですが、今までになかった対策を必要とするために、ビル用マルチエアコンのセット価格は上昇するでしょう。ただでさえ物価高騰しているのに

実際、設備設計にはその対応のために、より複雑な設計が必要になるのと、積算価格の上昇に頭を抱える状況がすでに発生しています。

これが空調機器の「2025年問題」です。

おまけ

この問題で一番対応に追われているのはダイキン工業です。

なぜならダイキン工業は冷媒R32を世に送り出した冷媒メーカーでもあるために、その責任は大きく、特に周知させているようです。

ダイキン工業R32冷媒マルチエアコンカタログより
https://ec.daikinaircon.com/ecatalog/DKCB106/catalogview.html

ということで、設備設計オタクとして、空調機器の「2025年問題」を解説しました。
また気が向いたら設備設計オタク回やります。
ここまでお付き合いありがとうございました。スキやコメントお待ちしております。

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