本当に与えられた選択肢しかないのかを考える

今回は私が大学時代、アルバイトを探す過程でいきなりJAXAに直電したときのお話です。

みなさんはアルバイトしたことありますか?
どんなアルバイトをしてきましたか?
そしてそのアルバイトはどうやって探したでしょうか?


私の父はエンジニアから叩き上げで上場企業の役員まで登り詰めた、少しかわった人間(ふつう技術出身の役員は珍しいのです)なのですが、大学時代、数学にハマって寝る間も惜しんで勉強しかしていなかった私に、

「就職してから他の会社を見ることはできない。今のうちにアルバイトでもなんでもして社会経験を積め」

と苦言を呈してきました。


父は他人とお酒を交えると大変よく喋りますが、身内に対してはとても無口で、普段何を考えているのかよく分からにゃい人です。

しかしそんな父がわざわざアドバイスめいたことをしてきた。
さらに彼自身どちらかといえば社会的に成功している。
これはなにかあるに違いない。
ということで、私は素直にアルバイトを探し始めたのでした。


「大学生のアルバイトって言ったら塾講かカテキョか飲食でしょ」


と安易に考えていた私は、さっそく新聞を開き、折り込み広告の時給や条件と睨めっこしました。

私が大学生の頃はまだスマホがなく、アルバイト探しといえば新聞の折り込みの求人広告か、情報誌か、飲食店の張り紙が頼りでした。

ちなみに当時の私は、ホテルで働いたらマナーが身につくかもしれないなどと考えラブホテルに面接申し込みをしそうになるくらいには世間の常識のない人間でした(母に止められた。当時その理由は分からなかった)。

___


数日経った頃、父が「アルバイト探しは進んでいるのか」と声をかけてきました。

受験の時には何も口出ししてこなかったくせに、今回に限ってはいやに干渉してくるじゃあないの。


「モスバーガーにアルバイト申し込んでみようと思う」


と折り込み広告の募集記事を見せると、父は「ふむ」と低い声で唸ったかと思うと、突然「お前は何がしたい」と問うてきました。


急になにその重ための質問。


私は即答できませんでした。

まぁ今考えれば私は本当に何も考えていなかったし、父の意図もまったく分かっていなかったんですね。



私の大学時代は本当に数学漬けで、勉強が楽しくてしかたがありませんでした(土日も大学に入り浸っていた)。

洋服はユニクロのパーカーとジーンズがあれば充分だし、物欲もない。
化粧もお洒落もしない、カラオケも居酒屋も行かないからお金がまったくかからない。

はっきり言ってアルバイトへのモチベーションは皆無でした。
だいたい、将来は大学に残って数学者を志そうと思っていたから、「社会経験」とか言われてもまったくピンとこない。

そんなわけで私が歯切れの悪い返答をしていたら、父が「お前は数学が得意なのだからその得意を使って自分を売り込んだらどうだ」と言ってきました。


たしかにモスバーガーで数学は使わないだろうというのは想像できる。
でもさ、数学を活かせるアルバイトなんてせいぜい塾の講師くらいのもんじゃないの?


インターネットが普及してる今なら、プログラミングのアルバイトとか、インターンとかググればいろんな仕事が見つかるんだとは思う。

でも当時の私はそういう発想がまったくなかったし、とにかく新聞の折り込み広告がアルバイト界へのパスポートだと信じていました。

言わんとしていることがまったく汲み取れない私に対して、父は答えをあげようと言わんばかりに「例えば、宇宙の軌道計算とか会計事務所とか、そういうところはどうだ?」と提案してきました。

相変わらずよう喋る父がそこにいました。

いやいや父、この折り込み広告をよく見てよ。そんな募集ないじゃあないの。

「そんなのは関係ない。履歴書送るなり直接電話するなりして聞いてみれば良いだろう」と父。


えええええーーー?

仕事を募集してない相手にいきなり電話して「俺っち数学が得意なんやけども、雇ってみないかい?」ってアプローチするってこと???マジ???

そもそも私、数学が得意つっても学部レベルだし解析苦手だし、他大のゼミ参加してみたら(当時は色んな大学を渡り歩いていた)すごい人はたくさんいて私なんてミジンコレベルでそんな得意とか言えn


「いいから電話してみろ」


ピシャリ。

話はそこで終わった。


___


しばし悩んだあと、私はタウンページでJAXAの電話番号を調べた。
そして父に言われるがまま、いきなり電話したのである。
今思えば本当に阿保である。


「あっ、もしもし…わたくし、あのっ、大学で数学を勉強しております京野と申します。えーと、その、数学がですね、それなりに得意なんですけれども、御社で何か、お仕事的なものがあったりしますでしょうか」


汗をかきながらしどろもどろにそう言うのがやっとでした。
当時大学2年生だったと思う。

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