頑張るぞい

最近、生活環境が目まぐるしく変化した。
思わぬタイミングで発表された旦那の転勤。去年の9月の話では、4月くらいかも、という話をしていた。まあ、憶測での話だったが。
同部署内での転勤が正式に通達されたのは今年の1月の真ん中。社長との面談が入った、と言った彼の顔は、少し緊張しているように見えた。
異動になったのは、彼が今の会社で、初めて勤務した場所。
「結局戻るんかい」不思議と彼は笑っていた。遠くない場所に行かなくて済んだことに対して、安堵したのだろう。
そんな中私は、去年の10月から新しいバイトを始めていて、やっとその環境に慣れてきた、というところだった。

前の仕事を辞めてから新しい仕事に就くまでに、少しだけ時間を置いた。それは何故か。
以前働いていた職場は、少しぼかしていうと携帯を売る仕事だった。
高校卒業後すぐその会社に就職した私だったが、最初の頃は、まったくの使い物にならない存在だったと自分でも思う。
元々、人と会話することが好きだった私は、“接客業に就きたい”という未確定な希望を持っていた。
しかし、訳あってかなり中途半端なタイミングで、進学から就職に切り替えたのだ。何もかもをノリと勢いで決めていた自分にとっては、この変更は、本当に良かったのだろうか、と数年たった今でも思うことがある。
何故その仕事を選んだのか、と友人に聞かれた時、理由を考えてしまった。
そういえば、どうしてこの仕事を選んだのだっけか。
私はとっさに、興味があったから、と答えた。
別に嘘ではない、確かに興味はあったのだ。
しかし、就職という大きな行事に対しての答えが、興味があったから、と言うのは、浅はかなのでは?と思った。
しかし、時はこちらの気を知らずに進んでいく。その進んでいくときの中で、私は成長した。気づけば、5年も働いていた。
しかし、離職率が高いと言われる携帯販売業に、そこまで長く身を置くことはできなかった。
どの仕事も、全部が楽しいとは限らないことは知っていた。
しかし、この業界は常に数字の世界だった。言ってしまえば、数字で優劣が決められているようなものだった。
そこまで明確に優劣はつけられていなかったが、少なからずそう感じる事があった。
次第に私の精神は、疲労していった。幾度となく家族に、友人に、辞めたいとこぼしていた。労働環境、給与、すべてに置いて周りから見れば、少しずれているのではないか、と言われていた。
しかし、私は続けていた。それは何故か。
私は、その仕事が全く嫌いではなかったのだ。接客の最後にお客様から感謝された事、中には、いつもお世話になっているから、といって差し入れをくれる人もいた。
誰よりも遅れている。そう言われてから、周りに追いつこうとして努力をした。そうすると、次第に上司から、周りから、少しづつ褒められるようになった。
それが単純に嬉しかった私は、もう少しつづけよう、そう思った。

しかし、人間とは難しいものだと思う。長くその環境にいると、自分の思考が凝り固まっていくのだ。こうすればいいのではないか、と周りから言われても、それを、すぐに受け入れることを少しづつしなくなった。
当然、周りは良かれと思っていってきてくれているのに、私はそれを拒否したのだ。
自分の存在意義とは何か、どうして今の職場にいるのだろう。
考えても考えても答えは出てこなかった。
迎えの車の中で、何も悲しくないのに涙が出た。
そんななかで、私は一つの新たなる趣味に出会った。
そう、今少しづつその知名度を上げてきているボードゲームだ。
私にとってボードゲームは、私の人生を変えてくれたものだと思う。まあ、その話はいづれしようと思う。
職場の近くに、ボードゲームカフェがあった。こじんまりとした場所にあるが、雰囲気が良い。いつのまにかそこを、第二の私の居場所としていた。
そこで、私は久しぶりに、たくさんの友人を作った。
その中に、かなり気の合う男性がいた。聞けばその男性は、カフェの近くにある、あるショップに勤めているらいしい。
そこは、ボードゲームも取り扱っており、在庫の相談等もした。仕事が終わった男性は、暇があればそのボードゲームカフェに寄っていた。
ボードゲーム知識が豊富だっった彼を、私はいつしか先生と呼んでいた。
何故先生なの?と聞かれ、詳しいから、となんの捻りもない理由を述べた。
特段、不思議がることはしなかった。
いつしか、仕事の相談も、彼にし始めていた。なんと彼も、以前は私と同職業だったらしい。
彼は、私の仕事の話を親切に聞いてくれた、アドバイスもしてくれた、本当に、先生のようだった。
今思えば、彼に出会わなければ、私は今どうなっていただろう。
ふと思った。
そんな彼が、私に告白してきたのは、一昨年のことだった。
彼は、私とご飯を食べている時、こう言った。
『俺とか、どう?』
それは、告白ととって良いものだったのかわからないでいた。
彼氏いない歴が長い、いやむしろ全くなかった私にとって、その言葉の返事に困ってしまった。
その時は、うまく返事ができず、少し時間が欲しいと言った。
でも、その帰り道、気がついた。ああ、私は彼が好きなんだな、と。
すぐさまLINEで、メッセージを送る。
私たちが正式に、付き合い始めたのは、その2日後だった。
ある日彼は、私のこう言った。
『今の君は到底見ていられない、だからどうか、今の仕事を辞めて欲しい』
その時期、私は、かなり参っていた。何をしてもうまく行かず、ただひたすら涙を流す日々が続いていた。
今まで、全く関わりのなかった精神科にも初めて足を運んだ。
ようやっと、私は、仕事を辞める決心をつけた。
それからは、案外早かった。
その次の年の4月、私は仕事を辞めた。案外周りは、悲しそうにしていた。
辞めても一緒にご飯行こう、当時の女性副店長は言った。私は、副店長のことをかなり信用していた。
それから、私は結婚した。交際期間一年という、短い期間だ。
しかし、私は後悔はしていない。何故なら、幸せだから。
その間も、友人は増えていった。旦那の仕事でよくお世話になっている人とも、友人になった。
もちろん、夫婦の友人もできた。私は、この上なく生活が楽しかった。生き生きしていた。
新しく始めたバイトも、同じような販売業だった。しかも、前歴の実力も気に入られ、かなり暖かく出迎えてくれた。
前の会社と比べるのは良くないが、環境がかなり良い。こんなに、楽な気持ちで仕事できるとは思っていなかった。

ドラマの中でしか、小説の中でしか見たことのなかった、結婚。
まさか私が結婚すると思っていなかった、親は言った。しかし、嬉しそうだった。
私も、こんなに早くに結婚するとは思っていなかった、という。
結婚式はまだ挙げていない。その代わり、2人とも一生懸命に仕事をしている。
いつか、子供の頃に夢見たウエディングドレスが着てみたい。綺麗に化粧して、綺麗な式場で、結婚式がしたい。何より、自分のできなかったことをしたい。

今、私たちは、新たな環境で生活をしている。きっとここでも、以前と同じように、もしかしたらもっと楽しい生活ができると信じて。

こんな恥ずかしいことよくかけたな、なんやこいつ。



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