見出し画像

「経費で落とすからいいよ」魔法の言葉にご注意!

こんにちは。
メタップスでre:shineと人事労務を担当しているイケダ(@m_ike)です。

皆さんは、フリーランスや会社経営をされている知人と食事に行って、「それ、経費で落とすからいいよ!」(意訳:ご馳走するよ)と言われたことはありませんか?

「経費で落とす」まるで魔法の言葉です。会社員のイケダにとっては羨ましい限りですが、でも、経費ってそんなに使えるものなの? 税務署に怒られたりしないの?? と、思うことがあります。

今回は「経費」についてのお話です。


そもそも、経費って何?

経費とは「事業のために使用したお金のこと。収益を得る目的で使用した費用」を指します。国税庁のHPを見ますと、次のように定義されています。

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
(2)その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額 

やさしい必要経費の知識(国税庁)

フリーランスの場合、次のような計算で所得税の納税額が決まります。
つまり、経費が多いほど納税額が減ることになります!

※因みに、ふるさと納税は、所得税では所得控除に該当し、住民税では税額控除に該当します。

経費で落とせる(=経費計上出来る)もの

どんなものが経費で落とせるのか、弥生さんの記事を元にお話します👀

かなり幅広い項目が経費に出来ますね。
身近なところでは、通信費(スマホ代・インターネット料金)、旅費交通費(移動の電車代・タクシー代)、消耗品費(事務用品代・名刺代)、接待交際費(取引先との飲食代・贈答品・慶弔金)等があります。

冒頭の「経費で落とすからいいよ(ご馳走するよ)!」は、接待交際費(会議費になるケースもあります)に該当します。

この飲食代を経費で落とせるかどうかは、簡単に言うと「飲食を共にした相手が、事業に関係すると他者に説明ができるかどうか」で判断できます。仮に、接待したにもかかわらず仕事に繋がらなかった場合でも、事業の発展・維持継続のために使用したお金ですので、経費として落とせます。

基本的には領収書保存が必要となり、領収書には、次の項目を余白に記載しておくようにしましょう。

参加した事業関係者の氏名・名称、その関係、参加人数

もしワリカンで、自分の分しか支払わなかった場合も、経費に出来ますので、ワリカン前後の総額・総人数を追記しておくようにしましょう。

こうしておくことで、次に説明するように5000円以下の場合は「会議費」として処理が可能になりますし、税務調査の際に「私的な支出ではないか?」という指摘を受けたとしても、しっかり説明が出来る備えとなります。

全額、接待交際費でいいの?

飲食代は「1人あたり5000円以下で!」という言葉を、よく耳にしませんか? これは、特に法人の場合、損金算入の可否を決める重要な金額になります。一人当たりの飲食代が5000円以下の場合は、接待交際費ではなく会議費として処理できるのです。

会議費 ・・・ 損金算入 = 納税額が少なくなる
接待交際費 ・・・ 損金不算入 = 納税額が多くなる

しかし、接待交際費だからと言って、全て損金不算入になってしまう訳ではなく、資本金によって損金として認められる金額が決まっています。
例えば、資本金1億円以下の法人の場合、年800万円まで損金に出来ます。
尚、個人事業主の場合は、接待交際費について上限はありません!

「自分は個人事業主だから、細かい事は気にせずに、全部、接待交際費でいいんじゃない!?」と思われるかもしれませんが、接待交際費は税務調査で最も厳しくチェックを受ける項目の一つです。経費の内、接待交際費が占める割合が大きくなり過ぎないよう、経費の内容をきちんと理解して、会議費と接待交際費を使い分け、適切に計上するようにしましょう。

「交際費/会議費との違い・損金算入」については、freeeさんの解説を参考にしてみてください。

それなら経費を沢山使った方が得だね!?

もちろん、節税に繋がりますからメリットはあります。

会社員の場合は「経費=会社が負担してくれる!」となりますので、自腹を切ることがなく、メリットばかり!と感じるでしょう。

では、フリーランスの場合は?

経費で使ったお金は自分自身が支払ったお金です。手持ちの現金が減ることに即繋がります。

例えば「8月末は個人事業税や住民税の支払があるのに、経費を使い過ぎて現金が足りない……。」「パソコンが壊れた!新しく買うお金がない😢」なんてことにならないように、事業を続ける上でキャッシュフローを意識することは、とても重要です。

また、節税が出来る!ということは、そもそも納税すべき税金があるということです。売上が少なく赤字の年に経費を沢山使ったとしても、減らすべき税金がありませんので、経費の使い方としては効果的ではありません。

逆に今年は頑張った!  売上も増えて、このままだと税金が高くなりそう。
そんな時こそ、上手に経費を使いましょう。

例えば「来年もよろしくの意味を込めて取引先と食事に行く」「10万円未満のちょっと大物の消耗品を買う(業務用の机、業務用のタブレット等)」。

 更に経費を積み上げたい時は、特例を使いましょう!
パソコンやマウス等の周辺機器をセットで買って10万円以上になると消耗品費に該当しなくなりますが、青色申告者の場合は「少額減価償却資産の特例 ※」を受けることで、30万円未満のものであれば一括でその年の経費にすることができます。(※適用期間:2024年3月31日まで)

このように、経費を効果的に使うためには、経営状況がどうなってるか把握している必要があります。年末になって慌てることがないよう、定期的に経理処理を行い、経営状況のチェックをしましょう!

フリーランスの経費あるある

自宅を事務所として働いているフリーランスの場合、家事按分(かじあんぶん)を行い、経費に計上しましょう。

家事按分:一定の基準に基づいて、費用を事業用と生活用に分けること

家事按分が出来る主な経費には、次のようなものがあります。

  1.  家賃(第三者に支払っている場合)

  2.  固定資産税

  3.  電気料

  4.  ガス、水道料

  5.  通信費

  6.  自動車関連費

家事按分の金額は、次のような方法で求められます。

スマホ本体の購入費も経費計上が可能です。家事按分により消耗品費(10万円未満の場合)で処理しましょう。

携帯電話にかかる費用は、按分せずに業務用に購入・別契約をするという手もあります。

これは経費で落とせる?

🙆🏻‍♀️ 経費OK 

  • 交通系電子マネーのチャージ代(交通費で利用した分)
    利用履歴の保管をし、日付・行先等、利用目的を明確にしましょう

  • 取引先に対するご祝儀や香典などの慶弔金
    領収書がでないので、招待状や会葬御礼ハガキを保存し、出金伝票で金額や日付・支払先を記入しましょう

🙅🏻‍♀️ 経費NG

  • 本人や家族の健康診断費用
    但し、健診結果で疾病が発見され治療を行った場合は、医療費控除の対象となります。

  • 本人や家族の国民年金・国民健康保険の保険料
    但し、所得控除とすることが出来ます。

🤔 ケースバイケース

  • スーツ代
    一般的には経費になりませんが、業務上に必要な場合は経費に出来ることもあります。例えば、講演会やセミナーに登壇するために購入した、取引先に常駐するためスーツ着用が必要となり購入した場合等も、経費算入が認められやすくなります。

ケースバイケースになるものは「事業目的の購入か、仕事で必要なものか」によって決まります。明確な理由を領収書等に記載することで、税務調査の指摘に備えておきましょう。

マネーフォワードさんのこちらの記事こちらの記事が参考になります!

税務調査で経費を否認されてしまったら

繰り返しになりますが、経費として落とせるかは「事業のために使用したお金かどうか。収益を得る目的で使用した費用かどうか」で決まります。また、事業の内容や取引規模から判断して社会通念上、妥当な金額であるとともに、妥当な支出回数であることもポイントとなります。

税務調査では、領収書やレシート等の証拠書類が保存されていること、帳簿や決算書類が作成・保管されていること、これに付随して支出の妥当性を証明する情報が揃っていることが大切です。

領収書には、次の内容が記載されているか、必ず確認をしましょう。
・お店の名前
・購入した日付
・商品やサービスの内容
・購入金額
・購入者の氏名(または会社名)
特に、接待交際費や会議費の場合は、追加情報(参加した事業関係者の氏名・名称、その関係、参加人数)の追記も忘れずに!

これで、税務調査で調査官からの指摘を受けたとしても、明確に回答することが出来ますね! 

それでも、経費が否認されてしまうことも……。

否認:申請した内容が認められず、追加の税金が課せられること

否認されると、修正申告を行ったり、更正処分を受けることになります。
これにより、新たな税額が決定され差額を納税することになりますが、この差額分の他にも、次のような加算税等が発生します。 

但し、正しく経理処理をしている場合は、しっかり説明をし申告是認を受けるようにしましょう。修正申告を行うことは、不服申し立ての権利を放棄することになりますので、注意が必要です。

「修正申告/更正処分との違い・加算税等」については、freeeさんの記事を参考にしてみてください。 

否認を受ける要因として、家事按分が実態と比較して多すぎるケースがあります。税務調査は現場確認も行われますので、例えば、実際は事業スペースが居住スペースよりかなり狭いのに、50%の家賃を経費としていた場合は指摘を受けることになるでしょう。電気代やガス・水道料も同様です。

欲張って多くの額を経費にしようとすると、税務署から疑われやすくなりますし、悪質と判断されると重加算税のペナルティもありますので、あくまでも適正に。

節税のために経費を増やしたい気持ちは理解できます。でも、正しい経理処理と適正な納税をすることで、追徴を受けないようにすることも事業を続けていくうえでは大切です。

また、過度な節税を行うと所得が低くなりますので、金融機関から事業資金の借入れをする時・住宅ローンを組む時・賃貸物件を借りる時やクレジットカードの発行時等、確定申告書類の提出を求められるような場面では、社会的信用度のマイナス要因として捉えられることがありますので、くれぐれも適正な経理処理を心掛けてください。

確定申告時期に慌てないように、日ごろから領収書の保管・管理(月ごとに分けておいたり、利用状況をメモをしたり)をやっておきましょう。


re:shine(リシャイン)というフリーランスや副業の方向けのお仕事のマッチングサービスを運営しています。ぜひこちらもご覧ください。 🙇🏻‍♀️



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?