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エッセイ|概ね、市中引き回しの上、磔獄門です。

平日の朝、寝巻きのジャージ姿で幼児を抱えたまま家の中に入れなくなった。もちろんすっぴん。極薄の青白い顔はさらに青白くなる。 夫が玄関の鍵を閉めて出勤してしまったのだ。 見送りのため、わたしは毎朝、子を抱えて共用の廊下に出る。夫はわたしたちに遅れること数分、小走りで玄関から飛び出る。彼がもたもたするのも毎日のことで、いつも「早く! 遅れるって!」と尻を叩くのがわたしの役割だった。 我が家の前の共用の廊下は、1階のエントランスから公道に出る道が見渡せる。見送り場所にはちょうど

    • エッセイ|自分はなにを書きたいのか、について考えた。

      引っ越しをする直前、靴紐が切れた。 生まれてこの方初めてで、あと数日でサヨナラする家の玄関で立ちほうけた。 いや、それは嘘。厳密には1秒考えたくらいだ。横で「みてぇぇぇー!!!」と幼児が一人で履けた靴を見せびらかしている。生まれて初めての出来事があっても、平日の朝にじっくり味わう時間はない。もう玄関を飛び出し、自転車に荷物と子どもを乗せて走り出す時間だ。出勤時間が迫る。 わたしは急いで玄関を出て、子どもと共にエレベーターに吸い込まれる。駐輪場までは腕の筋トレ、自転車に乗れば

      • エッセイ|急にやってくる言葉たち

        数日前に関東から地方都市へ引っ越した。 そこはわたしの田舎で、住むのは実に10年ぶりだ。最後に住んでいたのは大学生のころで、結婚し母となり、夫の仕事の都合で家族とともに帰ってきた。 こっちの人はすぐ子どもに触る。 まだ引っ越してきて数日しか経たないのに、2歳になる娘は毎日通りがかりの大人たちに「可愛いね」「元気ね」「お母さんと手を繋いでえらいね」と頭を撫でられ、ときにはぷくぷくほっぺをつつかれる。 誰もがピョコピョコと歩き回る小さな娘に慈愛の眼差しを向けている。そこにはなに

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