「引きこもりを加速する」から生まれた「サイバスフィアフローズ」
これはcluster Advent Calendar 2019 20日目の記事です。
2020/5/10追記:本noteの加筆版を執筆しました。
『「引きこもりを加速する」から生まれた「サイバスフィアフローズ」』加筆版
https://note.com/m_hayase256/n/n889cb55da8e0
最初に話の要点を書くと、クラスター社の掲げる「引きこもりを加速する」が私の書いた、先日投稿した「サイバスフィアフローズ」の作品の方向性を決めた、という話になります。
サイバスフィアフローズ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13457203
※「サイバスフィアフローズ」を掲載していたLINEノベルがサービスを終了するため、内容をpixivに移しました。なお、移す際に、内容を見直し、表現を一部変更しています。
私は以前から小説を執筆しており、何作品か投稿しているのですが、VRに関する情報を集めていると、VRは小説で扱う題材として面白そうだと感じており、2018年の夏ごろの時点で、新しく書く作品はVRを題材にすることを考えていました。ただ、その時点で書いていた、「初音ミクとリンクする世界 初音ミク編」などの作品でVRの空間内を書こうとしてもなかなかうまく書くことができなかったこともあって、いくつか知っていたVRのサービスのどれかに入って、VR空間の中を体験しながらVR空間内の描写を考えたほうが、VR空間内のより細かく書けると判断しました。そこで、どのサービスを使うかを考えていたところ、出会ったのがクラスター社の掲げる、「引きこもりを加速する」という言葉でした。
「これ、面白い言葉だな…」
私はこの言葉に感銘を受け、次のオリジナル作品は、この言葉を私なりに突き詰め、「VR空間が発達し、家から出ずに引きこもって生活が可能になった近未来の世界のVR空間内」を舞台にすることにし、登場人物はその中で生活している人々にすることに決めました。そうして執筆した作品がLINEノベルに投稿した「サイバスフィアフローズ」になります。つまり、「引きこもりを加速する」という言葉は、「サイバスフィアフローズ」の作中でVRをどう書くかの方向性を決めた言葉と言えます。
小説内でのVR空間の描写に関しては、clusterでのイベントに参加しながら考えることにし、それと平行して、VRの要素以外の世界観や、登場人物の設定を考えることにしました。clusterでは、VTuberの方々のライブなどのイベントやゆるくら会(これは、「ゆーるく くらすたーちゃんと 触れ合う会」の略称です。なお、「くらすたーちゃん」はクラスター社の公式キャラクターです)、バーチャルピッチグランプリ(clusterで開催されたスタートアップピッチイベント)などに観客として参加しながらイベントを楽しみつつ、VR空間内をどう描写するかを考えていました(「サイバスフィアフローズ」作中だと、VR空間内の部屋の壁が場面に応じてモニターのように機能したりする描写や、作中でのライブの描写はclusterでの体験から思いついたものです。他に、どちらかというとAR寄りですが、アバターの周囲にアバターに関する情報を表示する描写は、clusterでイベントを体験する中で「あった方が便利そうだな」と思って書きました)。VTuberの方々のライブなどのイベントなどは、VR空間ならではの演出に圧倒されることも多く、楽しめる内容であると同時に、会場の様子やイベントの内容や演出などは、主催されるVTuberの方の趣向で異なることもあり、VTuberの方々の多様性の一端を垣間見ることができました。
VR空間内の描写を考えることと平行しつつ、作中のVR以外の世界観を考えていました。家から出ないで生活できるようにするには、仕事や教育はもちろん、ライブなどの娯楽といったものや、現在、官公庁や銀行などの窓口で行っている手続きなど全てをVR空間内で行える必要があったので、窓口で行っている手続きを全てVR空間上で可能な設定にしました。また、VR空間の規模については、全世界からアクセス可能であるとしました(VR空間の規模や、VR空間内で何ができるか、という観点から見ると、作中のVR空間は、clusterよりも、サマーウォーズに出てくる「OZ」のほうが近いと感じます)。また、VR以外にも、信用スコアとブロックチェーンの要素を取り入れました。これは、Twitterなどでたまに見る仕事や契約のトラブル(契約内容の言った言わない、仕事内容に対して支払われる報酬が安い、など)に対し、テクノロジーを活用して解決を図る場合、どのようにすればいいか?といった観点から考えた結果です。アバターの作成を例にとって説明すると、信用スコアの要素に関しては、アバターを作成する側は、アバター作成の実績や提示された納期を守ったか、といった複数の要因を総合してスコア化されており、依頼する側はアバターの作成を依頼する際に参考にすることができます。また、アバターの作成を依頼する側も、依頼する段階で妥当な納期や費用を設定したか、契約を結んだ後で条件を変えたりリテイクをした頻度、依頼後に条件を変えた場合、納期や費用の再設定を行ったか、といった複数の要因を総合してスコア化されており、依頼を受けたアバターの作成者が依頼者のスコアを参照することで、依頼を受けるかどうかの判断材料にする、といったことが可能になっています。また、ブロックチェーンに関しては特徴を考えると、仕事の契約内容の改ざん防止に活用したり、契約内容が変わった場合に契約内容の変更の推移を追いやすくなるのではないか?と思い、作中で取り入れました(契約内容以外にも、アバターの作成履歴や作成の過程をバージョン管理のように残すことにもブロックチェーンなどが活用できるのではないかと考え、作中の描写に取り入れています)。
「サイバスフィアフローズ」で続編の構想もあり、書くのであれば、話の本筋を書きつつ、それと平行して登場人物やVR空間自体の掘り下げをしていきたいと考えています。主人公とルームシェアしているメンバーは、どういう理由があってVR空間で暮らしているのか、といったものや、VR空間の規模が世界規模なので、VR空間の中でも現実世界と同じく、多様性のある世界となっていると思われるので、その辺りも書ければ、と思っています(ただ、登場人物を増やしすぎると書くこと自体が大変になりそうなので思案のしどころになりそうです)。また、「サイバスフィアフローズ」の中では書けなかった描写(VR空間上での教育についてなど)も書ければ良いかなと考えています。
最後に余談になりますが、clusterはVRヘッドセット以外にPCやスマートフォンに対応していますので、clusterで行うイベントにバーチャル参加、もしくはWeb配信視聴が可能となっており、ハードルはそこまで高くないと思います(この記事の投稿時点の状況です。なお、スマートフォンは一部イベントのみの対応になっている模様です。途中までYouTubeなどで配信されているイベントもあるので、気になるイベントがある場合はイベントのページにて対応状況を確認して、どうやって参加するかを判断すると良いと思います)。最近のイベントだと、バーチャル学会2019の基調講演がclusterで行われ、興味深い内容で、VRchatで行われた展示に関してもVRとはあまり縁のなさそうなジャンルの展示もあり、非常に興味深い内容でした。