アーサー・C・クラークから学んだ未来予測の方法

以前noteで私が取り上げた、アーサー・C・クラークから私が学んだ未来予測の方法について、作品を挙げて説明します。

1.本編

クラークが発表した短編の中に、「月面の休暇」(「90億の神の御名」に掲載)という作品があります。作品のあらすじは、月の天文台に勤めている父親が、妻や子供を月に呼び、休暇を過ごすという内容です。作中の描写から、人類が月に進出した結果、月に天文台ができ、天文台研究の中心は月に移ったという描写があります。地球と月の大気を比較すると、月の方が薄く(月の大気の濃度は、地球の海面上の大気の百兆分の一以下)、地球ほど大気の影響を受けないため、月に天文台を建設するという描写には妥当性があると考えられます。さらに、人類が月面に進出するのであれば、作中のように地球~月間の定期便の運航が発生し、その結果として月に住んでいる住民が地球に住んでいる家族を月に招き、作中のように月で休みを過ごすような光景というのもあり得ると思います。
(なお、同書の巻末に掲載された解説によると、後に宇宙飛行や月面の風景は現実とは異なっていることが判明しましたが、1951年の作品であり、当時の知識を土台にしているため仕方のない部分もあります)

私がクラークの小説に惹かれる理由はいくつかあり、「幼年期の終わり」や「都市と星」のような壮大なスケールで書いた小説の描写が素晴らしい一方で、「月面の休暇」のような新しい技術がどのように生活を変えるか?というテーマに関するビジョンの提示した作品も素晴らしいという点があります。"SFプロトタイピング"という言葉がありますが、SFプロトタイピングをする時の発想の方向性は同じだと思います。また、ビジョンの提示に関してや、その時代の「新しい技術」を題材にする姿勢は、時代を問わないと思います。このような『ビジョンの提示』や『「新しい技術」を題材にする姿勢』は、私がメタバース(ただし、書いた当時はメタバースという言葉はこのnoteを投稿時ほど一般的ではありませんでした)を舞台にした作品を書いた背景や書き方として参考にした所はあると思います。私の場合、メタバースが生まれれば、住んでいる場所による「機会の格差」が、完全に0にならなくとも、解消する方向に進むという予測ができたことを起点にし、クラークの考え方を参考に、「メタバースが生まれ、機会の格差が0(に近い)になった時、生活はどう変わるか?」という考え方と、考えるタイミングで出会うことが出来た、VRSNS"cluster"内での素晴らしく、かつ大いに想像力を刺激する体験が組み合わさることで生まれた作品です(具体的には、メタバースで機会格差の解消はされますが、時差に関しては解消が難しく、また、メタバース内では、アバターが重力や物理法則を無視した動きが出来るため、ライブなどでは、メタバース内を飛行したり、空間転移する演出が容易になり、実空間とは大きく異なる演出になる可能性があること、また、特定個人のアバターを作成する職業が生まれるであろうという予測し作中に反映させたりしましたが、十分な時間がなかったこともあり、作中に十分反映できなかったり、描写として不足する部分が散見される作品になってしまいました。なお、それ以前には「幼年期の終わり」や「都市と星」から影響を受けた作品も書きました)。古い作品であることは否めませんが、SFのジャンルとして普遍性という観点からすると、今でも輝きを失っていないと感じます。
私のnoteを読まれている人の中には私がクラークの小説をかなり推していると感じている人がいらっしゃるかもしれませんが、実際に私が感銘を受けたことは事実ですし、それと同じ位に、「現在でも絶版になっていない」ということは大きいと思います。どんなに素晴らしい小説でも、絶版になっていると一気に勧めづらくなってしまいます。


2.余談


このツイートの言葉ですが、この言葉はクラークの墓石に刻まれた言葉です。文の大まかな意味は、「彼(クラーク)は大人になることはなかったが、成長することも止めなかった」という意味合いになるそうです。墓はクラークが後半生を過ごしたスリランカ国内のボレッラという所にある共同墓地にあり、実際に墓参りをした人もいるようです。なお、ツイートした日付ですが、クラークの没日(2008年3月19日)を調べ、そこから10年後(2018年3月19日)にしています。
この言葉は、クラークの没後に新訳版が出た「都市と星」の書籍版に記載された解説で知ったのですが、Kindle版にはその解説が記載されていません(「都市と星」の背景も知ることができる良い解説なのですが)。私自身、考え方など、ありとあらゆるが変化し、日々アップデートを怠らないようにすることの必要性を感じますが、そういう意味で、この言葉は現在でも当てはまる、普遍性のある言葉ではないかと感じています。

3.参考項目

3-1.書籍

90億の神の御名 ザ・ベスト・オブ・アーサー・C・クラーク

幼年期の終り

都市と星(新訳版)

3-2.Wikipedia

月の大気

ボレッラ

3-3.本編に関連する私のnote

「初音ミク」という名の「未来」~「初音ミクとパラダイムシフト」シリーズ・「初音ミクとリンクする世界」シリーズ よもやま話

『「引きこもりを加速する」から生まれた「サイバスフィアフローズ」』加筆版


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