~定家卵のレシピと江戸の卵料理~

みなさま、いかがお過ごしですか?クリスマスも終わり、大掃除や正月の準備で大忙し…といった所でしょうか。
私たち武蔵大学学芸員課程は、12月20日から「遊びとしての食~江戸時代の料理~」の情報を発信し始めました!

レシピ動画とレシピブックを配布するだけでは何か物足りない…。
そう思い、展示内で取り上げる3つの料理について、コラムのような記事を書くことにしました。
記念すべき第1弾は、ふわふわ卵の食感が楽しい「定家卵」の紹介です!

そもそも、定家卵って何?

卵

突然、「定家卵」と言われても想像するのは難しいですよね。
一言で表すと、「汁物の上にスフレ状の卵が乗った料理」です。
その出典は「萬寳料理秘密箱 玉子百珍(まんぽうりょうりひみつばこ たまごひゃっちん)」です。一発で読み方が分かった人には拍手を送りたいと思います👏

なんと、この本には103もの卵料理のレシピが掲載されています。江戸時代には豆腐や大根、こんにゃくなど食料別に「百珍」シリーズが刊行されてました。一つの食材から、100もの調理方法を編み出せるのはすごいですね。


この本は1785年(天明5年)に発行されたものです。1785年ごろといえば、日本では老中の田沼意次(たぬまおきつぐ)が実権を握っていた時代です。冷害や浅間山の噴火(1783年)といった災害に見舞われ、天明の飢饉(1782年~87)が起きてしまいます。
一方、世界ではアメリカの独立が承認され(1783年)、フランス革命(1789年)が起ころうとしていました。

江戸時代の卵料理事情

江戸時代の卵は現在と比べて高価で貴重だったので、全卵(白身・黄身の両方)を使う料理が多い傾向にあります。また、「萬寳料理秘密箱(まんぽうりょうりひみつばこ)」に掲載されている卵料理のうち、約25%が「蒸す」調理方法です。生卵を短時間蒸すと、臭みを取り除くことが出来るため、お手軽調理法として多用されました。

卵を蒸すとは言っても、卵液を出汁で希釈して蒸したり、豆腐やミンチなどと混ぜて蒸すなど、さまざま他の材料と混ぜ合わせて調理していたようです。蒸すだけでもこんなにバリエーションが豊富だとは…驚きです。

画像2

画像出典元:うまだし 江戸時代の高級料理 うまだしで作るたまごふわふわ<https://www.umadashi.jp/recipe/recipe-3073/>

また、江戸時代に流行した卵料理に「ふわふわ卵」があり、「卵ふわふわ」とも呼ばれていました。卵をふわふわに調理する方法は、すでに日本初のレシピブック「料理物語」(1643年)に見られます。なんと、将軍家の献立にもあり、高級料理だったのです。おそらく「定家卵」も、この一種だと思われます。

実際に自宅で定家卵を作ってみた時に、卵白を手動で混ぜたのですが、メレンゲ状になるまで10分くらいかかり、めちゃくちゃ手が疲れました。
当時は菜箸を5、6本使用していたらしいのですが、手に負担がかかっていたことに間違いはないでしょう。
このように作るのに労力がかかるので、高級料理とされるのも納得です。

最後にレシピを配布しますので、一番上の動画も参考にして作ってみて下さい!

次回のレシピコラム第2弾は「揚げ出し大根」です。お楽しみに~

★レシピブックはこちらから

参考:江戸食文化紀行ー江戸の美味探訪問ー No.11 江戸時代の卵料理
 <https://www.kabuki-za.com/syoku/2/no11.html>
名倉秀子「萬寳料理秘密箱『玉子百珍』に掲載された卵料理について」
<https://jumonjiu.repo.nii.ac.jp/index.phpaction=repository_action_common_download&item_id=1224&item_no=1&attribute_id=22&file_no=2&page_id=13&block_id=21>

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