(2):統計用語とその意味に関する問題(記述統計編)

知ってるつもりに要注意

教科書を読んでいると、「なんとなく知っている用語」は、つい読み飛ばしがちだったりしません? 今回の問題になっている用語も、ついよく似た別の用語とごっちゃにしてしまいがちです。
「靴のサイズは?」と聞かれたら「25㎝」とか答えるのが普通で、「スニーカーだけで10足はある」とか答えたらヘンでしょ。「数じゃなくて、サイズを聞いてるんですけど~」となる。ていう感じの覚え方はどう?

「知ってるつもり」の話題に戻ると、運動生理学の科目で「呼吸」とか出てきて「知ってるじゃん、当たり前に」とか思っていると全くイメージが違っていたりする。「細胞呼吸」(内呼吸)は、少なくとも日常用語の「呼吸」のイメージではないですね(細胞はお口をあけて息をしません)。意味が分からなかった人は、Wikipediaで「呼吸」のページを読んでください。

これが、「背外側前頭前野」とか「視交叉上核」とか、どこからみても専門用語!な感じだと、いやでも立ち止まって考えてしまうのに、「学習」とか「データ」とか、日常的に聞いたことのある感じの用語だと、「わかったつもり」で先に進んでしまう。そう、試験問題の作者はそこを狙うのですね。

幸い、放送大学の教科書は、章の最初に「キーワード」が掲げられていて、覚えなさいよね~というオーラを放っていますし、「心理学統計法」では、太字になっていたり、わざわざ英語が添えられていたりして、「専門用語だぜオーラ」を放っているので、気を付けて意味を確かめましょう。

記述統計って何さ

タイトルに「記述統計編」と書いたので、この言葉について書き足しておきましょう。記述統計は英語で descriptive statistics なので、英語の descriptive を辞書で引くと、「記述的[叙述、描写、説明]な」という訳語が見つかります。この統計はこんな意味なのだということを、記述する、描写する、説明する、という場面で、記述統計が使われるわけですね。

また、「記述統計」は「推測統計」と対比する形で説明されることが多いので、私の持っている教科書から両者の違いを引用してみましょう。

記述統計学 descriptive statistics

データの特徴をまとめる方法(「身近な統計’12」p.15)
得たデータを要約するための統計手法(「心理学統計法’21」p.11)

推測統計学 inferential statistics

標本データに基づいて,標本データが取られた背景全体(母集団)を推測する(「身近な統計’12」p.15)
得られたデータから,そのデータ発生源である母集団と呼ばれる対象の性質を推測する(「心理学統計法’21」p.12)

引用部分は、違う教科書からそれぞれ引用しているのですが、ほとんど同じ説明になっています。こうして比較すると、たとえば、「データを要約する」というのは要するに「特徴をまとめる」ということなのだな、という理解が得られるとか、「母集団を「データ発生源」と書いてあるのはどうしてだろう」と疑問がわいたりとか、新たな気付きが得られます。統計に限らず、教科書を比べて読んでみるということは深い学びのためにはよい方法だと思われます。