「ヤマダくん」と、

つい2、3週間ほど前、Twitterにて衝撃を受けたことがあった。

「ヤマダくんが…運営終了…?!」

ヤマダくんとは、正式名称を勇者ヤマダくん。
Onion Gamesよりリリースされているスマホゲームである。
美男美女、3Dグラフィック、多くのプレイキャラのはびこるこの時代に
オッサン(36才)、ドット絵、プレイキャラは主人公のみといった
まさに時代逆行なスマホゲームだった。
そうか…運営終了か…最近の運営傾向から少し嫌な予感はしていたが…残念…

スマホゲームを運営していく上で、切っても切れない関係にある金銭問題。
儲からなければすぐ撤退するし、儲かるならどんなに酷いバランスだろうと
何年でも続けることができるのがスマホゲームである。
ではヤマダくんはどうだったか。
結論から言えば、ゲームは最高。でも集金には向いてなかったといえる。

まず一つに「課金アイテムによるスタミナ制度の撤廃」がでかい。
例えば、スタミナゲージの回復にゲーム内課金通貨(以降オニギリ)を一つ使うとしよう。
オニギリ一つにつき120円とするなら、回復する度120円の儲けが出る。
(実際には全然違うかもしれないが、わかりやすく話を進める上でこうする。)
ステージを進める度に消費するスタミナは増えるのだから、当然「早くストーリーを進めたい!」「ここのステージにこんなアイテムが出るから周回したい!」なんて考えのユーザーはバンバン回復するだろう。
するとその都度120円の利益が発生しつづける訳だ。
が、ヤマダくんはこれを課金にて消滅させるシステムを採用している。
値段は960円、オニギリ8個分である。
確かに最初に「課金」の壁が立ちふさがっているが、それを越えられる人間からすれば安いことこの上ない。
なにせ「960円払えばスタミナの概念から解放される」からだ。
スタミナの回復待ち時間は無い、スタミナ消費量を計算する必要も無い、
自分の好きな時に好きなだけ遊ぶことが出来るのだ。
ゲームとしては大変優良だが、集金手段が一つ消えたのも事実である。

次に「天井ありのガチャ」である。
ゲームがリリースされてしばらくして、装備ガチャが追加された。
(ガチャに近いシステムは以前から存在したが、素材や消費アイテムが手に入るものだったのでゲームの進行にはそれほど強い影響を与えなかった。)
装備はイベントに特攻効果をもつもの、ストーリーに変化があるものといったもので、いずれも強力なものばかりだった。
さて、これが世の一般的なスマホゲームだったらどうなるだろうか。
答えはこうだ。「確率激絞りの青天井ガチャ」の誕生、コレである。
確率は射幸心を煽りやすい。「〇%ってことはn回引けば一回は…」と考える人間が少なからずいるからだ。勿論んなこたぁない。
では、ヤマダくんはどうか。
5回で天井制度を設けた。ユーザー思いがすぎる運営だ。
ガチャ一回にオニギリ2個。つまり10個で確実に一つは手に入る。
さらに一度に複数の武器が排出されるとくれば運がよければ一発でゲット。
どんなに悪かろうと5回引けば手に入るのだ。見てるか売上ランキング上位。
もっと細かいことをいえば武器の場合は進化させる都合上2つ必要だったり、ガチャ内容が更新された際は初回のみオニギリ1個で引けたり、確定枠は下一桁が0か5の時なのでうまく調整すれば11個で確実に武器2つ手に入るなど色々あるが、とにかく良心的なのは確かである。

この2つが特に大きな要因だと言えよう。
スマホゲームの中でも最高レベルのゲーム性とユーザー思いの運営だったが、それがかえって仇となってしまったのかもしれない。

「じゃあ上の要素がなければよかったか?」と言われると、そうではない。
もしそうだったらサービス終了を惜しむ人は少なかったと思うし、そもそもサービス終了まで遊んでいなかったかもしれない。
もっといえばサービス終了がもっと早まっていた可能性もある。
そう考えればこれでよかったのか…いや、これ以上は言うまい。

12月20日に運営終了となる勇者ヤマダくん。
私はこのゲームを忘れることはないだろう。
約3年間、ありがとうヤマダくん。

以上、課金要素全開放&Mamazonプラチナ会員の盛岡デミタスでした。