文言噺『命』

五月。一年の中で最も自殺者が多い月の一つだ。(4月もよく死ぬ。)
恐らくその選択をするまでに多くの出来事があったのだろう。他人から見れば「そんな理由で?」と思うかもしれないが、当人にとっては「そんな理由で」十分だったのだ。自身の人生を閉じるのには。

しかしもったいない…実にもったいない…
「生きていたならば得られたかもしれない幸福」に重きを置きすぎているのかもしれないが、実にもったいなく思う。
今より悪くなる可能性が無いわけではない。不幸に底はない。
しかし、悪くなる可能性だけではない。よくなるかもしれない。
その可能性に賭けてみるのも面白い…と思うんだがなぁ…

もし今人生の淵に立ちかけている人がこれを読んだならば
「なんだコイツは、お前に私の気持ちがわかるわけないだろ」と思うだろう。
当たり前である。私とあなたは別の人間だ。わかるわけがない。
例えその人生を出生から今に至るまで追体験したとて、同じ感想は抱かないだろう。むしろわかるやつの方がおかしい。何者だソイツ。

だが、わからないからこそ何かの助けになるかもしれない。
そのための「他人」だ。頼れるものはなんでも頼る。迷惑は二の次だ。
親が無理なら友人、友人が無理なら専門家、専門家が無理ならネット…
人で解決できないならどこかへ行ったっていい。

人生を自らの手で幕を閉じるのは、生きているうちじゃまだ早い。