塩野七生 漱石の場合 日本人へ232
『満韓ところどころ』とは漱石の軽いエッセイで、だから眠る前の読書には最適と手にとったのだが、これが大いなるまちがいであった。読み始めるや笑い出し、安らかに眠りにつくどころではない。だがこれくらい、漱石が貧乏書生であった頃からの親友の中村是公(ぜこう)が、四十代というオトナの年頃になってもどんな男であったかを活写したものもないのだ。ちなみに、漱石は是公と、是公は金ちゃんと呼び合っていた二人は同じ年の生れだが、東京っ子の金ちゃんに対して是公のほうは広島の産。冒頭からして次のように始まる。
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