詩 野村喜和夫「LAST DATE付近」

LAST DATE付近

在りし日に向かってすすむ、私の在りし日に
向かって、あるいは冬の旅、すすむ、薄明の霧の
なかに浮かび上がる、稲妻のようにギザギザした枝々を
荒々しいまでに張りめぐらせた裸木と、その向こうの、
どこかで戦争でも始まっているのか、すすむ、炎症性の
箱のような家の、異様に明るい窓と、あふれ出す文字列、
「忘却と死よ、早く通り過ぎてくれ」ときみは言う、
「私の足を速める低い祈りの声」ともきみは言う、
私はすすむ、嵐の情報をまとい、乳房や享年をもくぐり
抜けて、在りし日に向かってすすむ、光の成就かそれは。

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