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赤坂太郎 公明党を怒らせた茂木の驕りと誤算

「下駄の雪」が自民党に牙をむいたのはなぜか?/文・赤坂太郎

主流派と非主流派の分断

2月10日午前。衆院第二議員会館の11階に、公務の合間を縫って首相の岸田文雄が現れた。訪問先は前首相の菅義偉の居室。岸田はこれまでワクチン3回目接種の数値設定に消極的だったが、接種が進展せず、菅の看板だった「1日100万回」をこの3日前に掲げざるを得なくなっていた。

岸田は「接種加速するにはどうしたらいいでしょうか?」と問い、菅は「体制が整うのを待つのでなく、途中で問題が起きても、とにかく早く多くの人に打つべきだ」と指南した。

岸田はバイデン米大統領との関係構築についても助言を求めた。「日本の政治家で大統領になったバイデンと会談したのは菅さんしかいないので」。戦後最長の専任外相を務めたのが誇りである岸田が、外交が不得意とされる菅に教えを請うてみせたのは、菅の自尊心をくすぐる狙いだった。

非主流派の中心人物である菅をあえて岸田が立てるのには理由がある。昨年末来、自民党内の主流派と非主流派の分断が顕在化してきたからだ。12月22日、東京・雷門の鴨料理店で安倍晋三、副総裁の麻生太郎、幹事長の茂木敏充の主流派閥の三首脳が会食した同時刻、菅や前国対委員長の森山裕、元幹事長の石破茂らが集結。元幹事長の二階俊博は地元関係者の不幸で欠席したが、参加する予定だった。菅らは今後の連携を確認した。

岸田政権のワクチン接種遅れへの不満に反比例するように、菅の手腕を再評価する声が高まる。菅は自ら推進した不妊治療の4月からの保険適用をツイッターに発信し、14万件以上の「いいね」を得た。こうした流れに呼応してか、側近議員は「菅派」結成に向け、水面下で動き出す。2月15日には当選同期で元総務相の盟友、佐藤勉から麻生派離脱と、今後は菅と行動を共にする意向を伝えられた。菅も4月以降に勉強会を立ち上げる考えを示した。

菅の強みは、岸田政権はパイプが細い公明党及び支持母体の創価学会と蜜月関係にあることだ。昨年の首相退任直後には信濃町の創価学会本部を訪ね、原田稔会長に「在任期間中はお世話になりました」と頭を下げた。首相経験者が御礼に来るのは異例で、原田は周囲に「なかなかできることではない」と漏らし、ご満悦だったという。

現在、自民、公明両党間では参院選の「相互推薦」が暗礁に乗り上げている。相互推薦とは、公明党が参院選で32ある改選定数1の「1人区」で自民党候補を推薦する代わりに、公明党が擁立する改選定数3人以上の「複数区」の埼玉、神奈川、愛知、兵庫、福岡の五選挙区で自民党の推薦を受けるものだ。詳しくは後述するが、これが自公の決定的な亀裂となりかねない。

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カット・所ゆきよし

「相互推薦」で自民にひじ鉄

事態を憂慮する選対関係者からは「菅さんに頼んだ方がいい」と、菅の出番を促す声も上がっていた。このため、岸田が菅に原田との仲介を依頼したのではないかとの見方が浮上した。菅は番記者から「相互推薦の件は話題に出たか?」と何度問われてもイエスともノーとも答えなかったため、その臆測が広がった。

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