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【読書記録】2024年1月

新年早々、色んなことが忙しかった。
……割には、結構冊数を積み上げていてビックリである。
1月の結果、計27冊。
そこから、6冊、良かったものを紹介したい。



『君は君の人生の主役になれ』 鳥羽和久

「愛」「勇気」「仲間」「冒険」みたいなものに対して、僕は斜に構えた目線を投げがちだ。へそ曲がりで天邪鬼。そんな普段の僕なら、絶対に手を出さないタイトルの本。何故この本に手を出したのか。それは、選書において信頼を置いている、独立系書店の店主さんがおすすめしていたからだ。(注:一度信頼を置いた相手に対しては、とことんまで素直なのである。)
正直に、良かった。鳥肌が立つような「人生を手放しに礼讃する綺麗事」は、ここには書かれていない。

自由というのは常に自分自身が揺れ動くことを許容することであり、安定や安心とは真逆の価値観なのです。

『君は君の人生の主役になれ』鳥羽和久

他人を尊重するということは、へたに自分の不安を他人にばらまかないということです。

『君は君の人生の主役になれ』鳥羽和久

……身につまされる至言である。しかし、厳しさだけではなく、寛大な優しさのようなものもそこにはあった。

あなたはこれからも、善き人を追い求めながら、そのたびにあくどい自分を見出して絶望しながら生き抜いてください。人を気遣い、配慮すればするほど、自分に避けがたく悪が忍び寄ることを全身で感じながら、自分の善意にことごとく挫折しながら、それでも強く生き延びてください。

『君は君の人生の主役になれ』鳥羽和久

『砂漠の教室』 藤本和子

「イスラエル」と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。「イスラム教」「キリスト教」「ユダヤ教」3つの宗教の聖地があり、紛争で不安定な国。僕にとって遠い国─イスラエルに滞在していた、翻訳家の藤本和子さんのエッセイ集が、この『砂漠の教室』である。

初版が1978年とのことだが、時代を感じさせない新鮮さに、この方の文章の力量を感じた。

「平和への願いを確認」だなんて、むなしい。自分の平和への願いを確認するために、他者の死を利用するのか、わたしたちは?

『砂漠の教室』藤本和子

『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』 済東鉄腸

僕にとって遠い国といえば、この本も読んだ。こちらはルーマニアである。

この本の魅力はルーマニア語について知ることができるだけではない。著者の済東鉄腸さんの人間性にある。済東さんは、引きこもりだ。ルーマニアに行ったことはないし、何なら日本から出たこともない。そして難病を患って、目下治療中の身である。しかし、だからといって人生に対して投げやりにはならない。彼の人生の物語は、どんなに苦しい状況にあったとしても、工夫次第で世界はこんなにも広がるんだということを、読者に示してくれる。
読み終わった後に、「ままならないこともあるけど、僕もできることをやってみるか〜!」と僕が伸びをしたのは言うまでもない。

『うたわない女はいない』

女性歌人36人の、短歌+エッセイを合わせたアンソロジー。仕事もプライベートもさまざまな女性たちが、短歌とエッセイで描く世界は、色彩豊かだ。
そんな中でも、僕に一番響いたのは、本業では古典の先生をしている歌人さんのエッセイだ。描かれているのは、古典の授業での一幕。(申し訳ないことに)僕もそうだったが、古典の面白さを高校生で理解するのは難しい。彼女の目の前には、退屈そうに授業を聞く40人の生徒がいる。

なまじ、私自身が古典というものをちょっと好きなのがまずい。自分の好きなものが目の前の四十人の足元でぐちゃぐちゃに踏み躙られてゆくのが見えてしまう。(…)働くことによって、誰しもが何かしらを犠牲にしているのだと思う。たまたま私の場合は、それが自分の好きなものと自分自身の心だったというだけだ。

『うたわない女はいない』

最近、職場の研修で「面白かったことをシェアする」ことを週一でやっている。僕はそれが苦痛で仕方がない。何故かというと、僕は自分が「面白い」「好き」と思ったことに対して、他の人より少しプライドが高くて、人から良い反応がもらえないと、とても落ち込むからである。だから、この文章を読んだ瞬間、彼女と握手をしたくなった。そうなんですよ。悲しくなりますよね。

『きみの言い訳は最高の芸術』 最果タヒ

言わずと知れた最果タヒさんのエッセイ。タヒさんの詩集はすでに何作か読んでいるのだが、エッセイはノーマークであった。タイトルからしてキャッチーである。中身も、もちろん、僕に刺さった。自分の抱えるモヤモヤが、的確に言語化された文章を読むと、肌がゾワっとする。

コミュニケーションはある程度深くなると、あとは互いのエネルギーの問題となる。もはやエゴとエゴのぶつかり合いしかならないから。なにを知ってほしくて、なにを共有してほしくて。そして、相手になにを、教えてほしいのか。どこまで相手の沼に沈んで、相手を自分の沼に沈めて、それをたのしめるぐらいの余録を残しておけるか。

『きみの言い訳は最高の芸術』最果タヒ

読みながらベッドの上でジタバタと暴れた。すごく分かる。この分野に関していうと、僕はかなりエネルギーが少ない。すぐにバテる。相手の沼に足を取られると、溺死寸前まで追い込まれる。だから、

浅い関係でいてくださいと、願うようなこともある。共有するのは感情だとか苦労だとか不幸だとかよりも、お天気や食べたケーキがおいしいことだったり、そういう他愛もないものであってほしいと思っている。

『きみの言い訳は最高の芸術』最果タヒ

というのも、すごく理解できてしまう。みんな、僕と道端に落ちていたメガネの話とかしようよ。すごい穴の開き方をしたジーンズを履いている人の話とかをしようよ。そういうくだらないことでいいんだよ。でも、そんな話を聞いてくれる生身の人間は稀だから、自然と僕は聞き手に回っていたりする。

(…)私は他人から見て「透明」になりたいのではなく、自分から「透明」になりたいのだと知った。

『きみの言い訳は最高の芸術』最果タヒ

うわーん!オーバーキルだよ!!と悶えながらも、一気に読み終えてしまった。図書館で借りた本だけど、手元に置いておきたいので、近々購入する。

『続きと始まり』 柴崎友香

西荻窪のfuzkueさんが1月28日を最後に休業に入った。ゆったり読書を楽しみたい時に何度か利用させていただいていたので、残念でたまらない。早期の復活を待つばかりだ。
休業日2日前の1月26日。最後の「会話のない読書会」を開催するというので申し込んでみた。課題図書は『続きと始まり』。柴崎友香さんの作品は初めて読んだが、物語で流れる時間と自分の人生を重ね合わせて、のめり込むように読み進めていた。(そういえば、僕が高校時代は、まだ新宿のビックロはなくて、ジュンク堂書店だった。学校帰りに通って、本を眺めた記憶がある。)


2月は焦らず無理せず……と思っている。
周りは気にしすぎず、自分のペースでいたい。
もちろん読書は続けたい。
だけど、これがなかなか上手くいかないんだな〜(大の字

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