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【読書記録】2024年2月

気づいたら、3月半ば。
2月分の読書記録を出すにしては、大遅刻である。
正直に告白すると、すでに忙しい時期は越えている。
なので、現在、心に余裕はあるのだが、アウトプットよりインプット欲の方が強くて、読む方ばかりにかまけて、書くことを先延ばしているうちに、こんな時期になってしまっていた。

さて、2月の読書結果は……計24冊。
忙しかった割に、まずまずである。
いつもの通り、その中から、面白かったものをご紹介していこうと思う。



『結晶質』 安田茜

雪山を裂いて列車がゆくようにわたしがわたしの王であること

『結晶質』安田茜

帯に書かれたこの短歌が、僕の心をギュッと鷲掴みにした。
目を閉じると、白銀の世界を切り裂くように走るSLの姿が浮かんでくるようだ。
それは、まるで王者の品格を湛えている。
真っ白な装丁ともぴったりな一首である。
安田さんの短歌には、幻想的な儚さがある。
しかし、その儚さは「脆い」という意味ではない。
地に足のついた力強さがあり、それが確固たる世界観を作り出しているような気がする。

どうしても進むのならばゆきなさい
百日紅散るあとをよすがに

『結晶質』安田茜

『ねにもつタイプ』 岸本佐知子

岸本さんの文章、本当に大好きだ〜!
どこからが本当で、どこからが嘘なのか、はたまた全部本当なのか、読んでいて分からなくなるところが楽しい。

某月某日、狭い歩道を歩いていたら、後ろからチリチリとしつこくベルを鳴らし続け、どかずにいたら横に並んできて「どけよ、こっちは鳴らしてんだからよ」とどなった小洒落た黄色自転車の日焼け男。脳の奥で静かに小部屋の扉が開く音がする。こういう場合、使用するのは鋼鉄をも断つ斬鉄剣だ。このようなアメーバ以下の生物に使うのは業腹なれど、その不釣り合いにオシャレな黄色マウンテン・バイクは普通の剣では切れぬ。

『ねにもつタイプ』岸本佐知子

まず『死ぬまでに行きたい海』から入り、その世界観に魅了された。
続いて、『ねにもつタイプ』を2月中に読み終わり、3月に入ってから『なんらかの事情』を読んだ。
どれも良かった。
結果、今すでに『ひみつのしつもん』と、岸本さんが翻訳された小説が二冊積んである。
そして、彼女が帯文を書いた他の方の小説にも手を出していて、それも面白くて……。
と、ここ最近、岸本佐知子さんブームが僕の中で到来している。
ご本人の書く文章が面白いのもだが、ご本人が推薦する本も面白いとは……信頼ができる。
何を食べたら、こんなに魅力的な書き手になれるのだろうか。

『〈公正〉を乗りこなす』 朱喜哲

論の展開が見事で、とても惹き込まれた一冊だった。
本書では、「正義」や「公正」という誰もが知っているけれど、何となく使いづらい/使えない言葉について、(ロールズやローティなどの学説を引用しつつも)分かりやすく解説されている。
「正義」は「善」とは何が違うのか。
「道徳」とは何が違うのか。
「公正」は「正義」においてどのように働くのか。
これらの疑問に対して、提示される答えが簡潔で納得しやすい。
著者の技量、編集者の技量が感じられた一冊であった。

『孤独を生きる言葉』 松浦弥太郎

吉祥寺のブックマンションにお邪魔した時に発見し、縋るような思いで買ってしまった本。
この本が、なかなか良かった。

プライドというのは言うなれば、心に秘めたお守りです。誰にも見せず、そっとしまってあるけれど、たしかにそこにあって自分を自分でいさせていくれるものです。

『孤独を生きる言葉』松浦弥太郎

依存するとは自分をなくすことです。

『孤独を生きる言葉』松浦弥太郎

何かと「孤独」は悪いものだと言われる。
でも、「一人でいられる」からこそ、他者と健全な付き合いができるのではないか。
だったら、孤独も悪くないかもしれない。
そんなことを思わせてくれる一冊だった。
実はこの本を買った時、職場で面倒な人間関係に巻き込まれて、少しまいっていた。
しかしこの本を読んで以来、僕は周りに振り回されることなく、栄誉ある孤立を楽しみながら、心軽く仕事に励めている。


来月は、早めに載せます。頑張ります。
(反省札)

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