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鍵ハモと私

こちらの記事で、おべん・チャラ―は鍵盤というものにとにかくときめいてしょうがないみたいな事を書いた。(多量の脚色)

鍵盤の誘惑はいつも忘れたころにやってきて、「ろくに練習もしないだろうけど、いい電子ピアノ買っちゃえよ、YOU」と私を猛烈にそそのかしてくる。もう何度その誘惑を振り切った事かはわからない。

61鍵くらいあるキーボードか電子ピアノは将来的には入手予定だよ?でもそれは今じゃない、今じゃない。

今はバンド時代に使っていたルシーナさん(39鍵ショルダーシンセサイザー)も使いこなせてないんだから、思いっきり両手弾きしたいとか言える立場じゃない。身の程をわきまえろ。

そんな事より貯金もうちょっと作って安心でも手に入れとけよ。

今日もそんな内なる私同士の戦いを制して、ちょっくら鍵ハモを弾いてきた。

地味な旧友「鍵盤ハーモニカ」

前置きが長くなったが、この記事で書いた通り、今思えば私はピアノの陰で鍵盤ハーモニカを溺愛していた。

がっつり浮気である。望んで迎え入れた本妻(実家の一階のピアノ)に隠れて、手の届かぬ所(実家の二階)で逢瀬を楽しんでいた(演奏していた)のだから。浮気どころか不倫である。きっと男だったら裁判で負けている奴である。おまわりさん、こいつです。

そんな鍵ハモと私のただれた関係だったのだが、諸事情で実家を畳んだ時に長年帰りを待ちわびたピアノは母に持って行かれ、長年密な時間を楽しんでいた、小学校一年生の時に買ってもらったヤマハのピアニカは知らぬ内に廃棄に出された。二兎を追うものは一兎をも得ないとは、まさにこの事。

次に私が起こすアクションは、まあ不倫に例えるとひたすら最低な行為になってしまうので、愛に溺れた男の視点はここで一旦置いといて……。




一人暮らしを始めて幾分落ち着いた私が、Amazonを覚えて手に入れたのは、同じ鍵ハモでもヤマハのピアニカではなくスズキのメロディオンだった。

選んだ理由は、メロディオンの方がピアニカより若干音が丸く感じる所だ。ピアニカだとオクターブ上はもう耳がキンキンして仕方ないのだけれど、メロディオンだとちょっと優しい。あとデザイン。普通に可愛かった。


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ほらね。

昭和感漂ってる感じが逆に好き。

あと賃貸住みの永遠の命題なんだけど、田舎の賃貸は基本的に楽器禁止っていう。楽器練習大丈夫だよ、なんていう所はこの土地に住んでて見た事無いな。

実家の頃はピアノでも鍵ハモでもバカスカ弾けたけど、集合住宅だから仕方ない。弾く時は車の中か、近所のカラオケか、市内にある数少ないスタジオしかない。

バンド時代にお世話になったスタジオには一人では入りたくないし、カラオケも店員によってちょっと厳しい日とかある。車でゆっくりできる所に移動して練習する事が多いので、今日もそんな感じで練習してきた。


「ゼロから始める」のに、遅いという事はいつだって無い

私はnoteで記事を書き始める時と同じく、楽器練習を始めるのにも何故か尻込みしてしまう人間だ。

練習がなければ上手くなるはずが無いのに何をほざいているのだろう、と首を傾げているだろうが、大丈夫だ。私も何故踏み出せないのか首を傾げている。

多分私の中の「理想の像」があって、下手な自分が弾く事でその「理想の像」から離れていっている気がして怖いのではないだろうか。「理想の像」に近づくのは「練習」だという話はまず置いといて。

私自身、「面倒くさい女だなあ」と思いながら長年自分を続けてきている。そんな私の2020年、考えをちょっと変えてくれる番組に出会った。

「さんま玉緒のアンタの夢叶えたろかSP」

その中でフジコ・ヘミングに独学で練習したピアノを披露したい、という本業・漁師のおじさんの夢が叶う。これだ。

めちゃめちゃ感動した。泣いた。

漁師さんのごつくて太い仕事人の指がラ・カンパネラを弾いている。この人には懇切丁寧な教科書も、ピアノの基礎教育も無いのに。

私は、何をしているんだ、と。

目から鱗が落ちると同時に、「何かを始めるのに遅いなんて事は無い」っていうきれいごとが、私の中で真実味を帯びた。本当に遅い事なんてないんだ。ただ、本気で弾きたいって思ってたらそれでいいんだ、と。

そしてもう一つは、かのスーザン・ボイルがあの番組で歌を披露した時の映像。


シンプルに泣いた。

日本で話題になった当時めちゃめちゃニュースで流れてたのに、見てたはずなのに、改めて見て泣いた。

歌声と、嘲笑が歓声に変わった瞬間、あの嘲笑の中に立つ彼女の勇気と何を言われても笑い飛ばす強い心を思うと、一人で号泣してしまった。

スーザンから勇気を貰って、肝っ玉のちっちゃい私は鍵ハモを担いで家を出た。

入門曲を数回弾いただけで感動的な気晴らしになった

鍵ハモは今、ヤマハから「大人のピアニカ」が出るほど、楽器として見直されている。(多分話題的には数年遅いけど)

先日買ったヤマハの「大人のピアニカレパートリー集」をお供に連れて練習してきたが、30分なんてあっという間!

ピアノ習ってた頃、レッスンは週一30分だけだったことを考えると、よくあの時の先生は練習してこない私に対してよくレッスンしてくれたよな、と思う。あとバンドメンバーな。

ピアノは全く弾けなくなったわけではないので、入門曲の練習だけなのはちょっと易しすぎたかなって気もしないでもないけど、本当に楽器を弾くのが久しぶりだったので、今日はこの感覚だけでいいかな、と思って本日の練習は終了。

実はここ最近、色々な事で頭がパンク気味だったんですけど、すっかり楽になっちゃうほど久々に夢中になれた時間でした!やっぱり下手でも「楽器を弾ける・鳴らせる」っていいね!











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