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君にもらったプレステIII

もう10年以上前かな。

プレステは最新の4が出た頃だったと思う。


当時勤めていた会社の隣の部署の同僚、Aくんは見るからにひねくれ者で

でも発する言葉がわたしにはいちいち面白くて、異性としてというよりも友達としてとても興味を持って

すれ違うたびに大げさに話しかけ、やがて仲良くなってご飯でも、ってなって出かけたんだった。

懐かない犬が徐々に懐いてきた感じで、恋愛的かというとそうでもないかな、と思いながらうれしかったのでよく覚えている。


その日は何かのイベントの落語を見に行き、そうだその落語を誘ってくれたのもセンスある!と歓喜したな。

で、渋谷をブラブラしてご飯を食べたんだったか。

その時に彼は「こんなに気が合うとは驚いた」とか「男同士ならもっと仲良くなれたのに」とか言っていた。

なんか機嫌がいいんだなというのと、人間として受け入れられていることがよく分かった。


盛り上がって話しているうちにわたしの家にDVDプレイヤーがない、そして彼が新しいプレステを買ったなんてことが分かり

「オレの古いプレステあげようか?」

と言われて、もらう流れに。


今度会社に持ってきて、がふつうの流れでしょう

ここでは。

しかし彼は

「うちに取りにくる?」

と言ったわけです。

その時、時間は終電が近づくころ。

ふつうなら少し構えるけれども、なにせわたしは人間的に受け入れられたと思っているので、確かにその方がいいかと思い、そのままタクシーに乗って彼の家の近くのコンビニで一緒に降り、頂き物をするのだからいっぱい買うね!なんて言いながら酒のツマミやら何やらたくさん買い込んで彼の家に向かったのだった。

彼の部屋は漫画がたくさん置いてあって、わたしは無邪気にどれを読むか物色して初めて来た家とは思えぬ勢いでくつろいだ。横にすらなっていたかもしれない。


間接照明のほの明るい部屋。


何かがおっぱじまったとておかしくないが、わたしはなにしろ人間として認められた存在だと信じて疑わなかったし

万が一、何かおっぱじめようとしてもそれを断れるくらいの意志の強さを持ち合わせていると自負していた。

終電はまだあった。

けれど、これだけくつろいだらわたしはもうマンガ喫茶にきたくらいの気持ちだった。


家に入って30分も経ってないと思う。

漫画も一巻読み終えないうちに唐突に

「ちょっと、あんた帰んなさい!」

と言われ、は???

面倒だというわたしに彼は

「ダメ。ダメなんだよ、オレが!こういう空気にのまれるから無理!」

って言われて家を出された…。


なんだよ!結局、おまえ男かよ!と思いながらわたしは紙袋に入れられたプレステIIIを持ってまたタクシーに乗ったんだった。

終電には間に合った。


もらったプレステIIIはそのあと出来た彼氏が喜んでいた。

このプレステ買ったの?

には、

あー、中古だよ


とだけ答えた。








#プレステの思い出

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