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木の家に住まう 3


ずっと憧れていて、一度は行って見てみたい建物があります。
スイスの建築家、ピーターズントーが設計したセント・ベネディクト教会と呼ぶ建物がそれなんですが、未だ行ったことがありませんし、コロナ禍で足が向きにくいのも理由ですが、何せスイスの山中に建っている小さな建物ですので、ちょっと行ってくるわ、と言った感覚で出掛けることは出来ませんので、今の所写真の中での憧れです。

楕円形の平面をした建物の外壁は木の皮を魚の鱗のように張り巡らし、屋根は流線型をイメージしたサイクリングヘルメットのようにも見えますし、中から見れば木の葉の葉脈ようにも感じる軽快なデザインです。
興味のある方は「セント・ベネディクト教会 スイス」などのキーワードでお調べ下さい。

さて、そんな話題に引き続き、今回も建物の屋根にまつわるお話です。

●切妻屋根
前回は片流れ屋根のお話でしたが、今回は切妻屋根です。
切妻屋根とは、子供さんが家をお絵かきで表現すると、屋根の形を三角に描くことが多いほどポピュラーな形ですね。

木造の建物の場合、片流れ屋根か若しくは切妻屋根が多いと思いますが、切妻屋根の場合、屋根の形が三角に見える面を「妻面」若しくは「妻側」などと言う呼び方をします。

そして、この三角に見える面に建物の出入り口を設けると「妻入り(つまいり)」と呼びます。観光地に行くと妻入り商家と呼ぶ建物が連なって残っていたりします。

それに対して妻側と直交する面を「平側」と呼び、この面に出入り口を設けると「平入り(ひらいり)」の建物と表現されることがあります。

●屋根の勾配について
そして屋根の勾配によっても、ずいぶんと受ける印象は違ってきます。勾配が急になると見える屋根の面積も大きくなるため、大きな建物のように見えます。

又、勾配を緩くするとコンパクトにまとまった建物のように見えます。温暖な地域だと、緩い勾配の屋根も魅力的ですね。

●屋根の材料による勾配
又、屋根を葺く材料によっても適応できる勾配が違ってきます。瓦の場合は一般的に4寸勾配以上にするように言われます。これは材料の吸水率なども関係しているのですが、4寸勾配とは、水平に1.0m、垂直に0.4m進んで出来る斜辺の勾配になります。

瓦の原料は土です。土を焼いて成形しているため緩い勾配だと水をスムーズに流し難くなりある程度の勾配を設けないといけません。現在では3寸から葺ける瓦も発売されています。

金属板による屋根の場合は葺き方によって若干、許容できる勾配が変わりますが瓦よりも緩い勾配にすることが出来ます。

●耐震性を考える
阪神大震災以降、瓦屋根の重さに注目されるようになり、耐震性に劣ると言う触れこみで瓦が敬遠される傾向がありました。
しかし、昔は屋根の上に土を載せ、更にその上に瓦を「置いているだけ」の仕様でしたので、当然大きく揺れると瓦は落ちます。
又、これはその重さを支えるだけの壁の量が少ない事が原因ですので、瓦屋根の場合は計画の際に、その点をしっかり考えておけばクリア出来ることだと思います。

最も、現在では屋根の上に土を載せることも無く桟瓦葺きが主流になっていて、瓦も1枚1枚釘で桟に打ちつけられていますので、少々の事で瓦が落ちる可能性は低いと言えます。

●何故、重いと耐震性に劣るのか?
平時は屋根に載っている荷重を支えればいいだけですが、一旦それが揺さぶられると、その荷重が仇となり、揺さぶり方が大きくなります。加速度が増すと表現すれば分かり易いでしょうか?
そのために、それに耐えるだけの壁を多く必要とすることが原因で、そのように言われます。

●遮熱性を考える
一方で、夏の暑さを考えると金属屋根に比べて瓦葺きの屋根は遮熱性が高くなります。もっとも、屋根を構成する材料は金属板や瓦だけではなく、断熱材なども関係するので、全ての構成部材を含めてトータルで遮熱性を考える必要があります。
とは言え、同じだけの性能を確保しようとすれば、金属板の屋根ではその分、断熱材を分厚くする必要があります。

●最終的に
結局、どのような材料が良いのかは個人の好みや判断による部分が多いと思います。当方では、屋根の軽量化を意識してガルバリウム鋼板葺きの屋根が多くなっていますが、瓦屋根の建物も設計しています。
ガルバリウム鋼板は昔の金属板とは違い塗膜の耐候性に優れているので、直ぐに錆びて駄目になることはありません。
雨音に関して言えば、ガルバリウム鋼板単体の場合、雨音はうるさいですが、屋根を構成する材料の組み合わせで、それらを低減するようにしていますので、昔の小屋のイメージとは少し違うように思います。

瓦屋根も趣があって良いと思いますし、雨や風にたいする工夫もされるようになっていますので、耐震性だけ気を付けて壁量などをしっかり確保すれば問題ないと思います。但し、新しく出て来た、平板瓦と呼ぶ洋瓦は納まり上、少し用心する必要があると思います。

●今日の写真
今日の写真は、大屋根、下屋ともに切妻屋根の住まいですが、平面的に少し角度を振っているため珍しい感じになっています。
瓦屋根と金属板(ガルバリウム鋼板)を組み合わせた屋根の葺き方で「越し葺き」又は「腰葺き」と言います。京町屋などでは良くある方法ですが軒先の荷重負担を軽くすることが出来ますが、手間は掛かります。
軒先がシャープに仕上がるのも特徴です。

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