お腹の人とやさぐれ妊婦の奮闘(?)
ある日、私は確信した。
それはとある日の夜だった。
さあ、もう寝ようという寸前で…ふと確信した私はたっつんに告げる。
『たっつん、私、たぶん安産だわ。みんなが言うような痛みも無いし、つるすっぽんだし、安産だってなんか分からないけど確信した。』
なんでいきなりこんなことを言ったのか分からない。
実際にそうなるかは分からない。
けれど、やさぐれ妊婦みのりんはなんだか分からないけど確信していた。
『うん、そうだねぇ。』
たっつんはいつもの調子で返事をして。
その日はそのまま寝ちゃったんだ。
本当に寝る寸前だったから。
なんでか分からないけど、全て順調で全てうまくいくと思いながら眠りに就いた。
そう、そんな夜だったのである。
そんな夜の翌日だったのである。
朝のトイレでやさぐれ妊婦はしばし呆然と立っていたのだ。
便器の中は血で真っ赤だった。
不正出血だった。
いきなりすぎやろがい!
あっれー?
生理かな?
いや、くるわけないだろ。
セルフ突っ込みをした後に血の色と量を確認。
そして、お腹の人の様子を確認。
お腹の人とお腹の様子は全く変わりなかった。
ビックリするほどいつも通り。
かかりつけの産婦人科医院に連絡するとその日のお昼の時間には予約を取ることが出来た。
同居している祖母は大変心配性のため…何も言わずに向かう。
『お腹の張りは?』
『無いです。いつも通りで。』
『うーん、血の色は?』
『赤い感じですね。』
『うんうん、まぁ、とりあえず診てみましょう。』
いくつかの問診の後に内診が始まる。
何度もやってるけど、まぁー、苦手なんだこれが。
でも、不正出血の原因は1発で分かった。
『あー…子宮口近くのポリープだね。結構立派なのあるんだよねぇ。』
お腹の人発覚と同時に分かった子宮口近くの立派なポリープ。
どうやら出血はここかららしかった。
『子宮口はぴったり閉じてるし、長さも十分!早産の心配はないね!』
しかし、どうしようね~と先生は話し続ける。
経過観察の判断をしていたのだけど、さすがは産婦人科の開業医というべきか、そこからの判断が早かった。
『うん、ポリープ取っちゃいましょう。』
ぽりーぷとっちゃいましょう。
とっちゃいましょう。
え!?今!?!?!?
取るの!?!?!?
内診の延長で!?
『あれ、取ってきて。消毒の準備。』
わっつ!?!?
やさぐれ妊婦がやさぐれも出来ない間に先生の指示が飛び、処置は進む。
なんて迅速な対応なんだ。
さすが産婦人科開業医…じゃなくて!!
ああああああああああああああああああ!!!!
※心の声
誇らしげなお顔
『一応これは顕微鏡検査に回すね。』
ちゃぽちゃぽと揺らす瓶の中にはうっすら赤く染まった生理食塩水と人の小指の先ほどのポリープが浮かんでいる。
なかなか立派だった。
『こんな簡単に取れるもんなんですね…。』
緊張と気疲れでじっとりまだ汗ばみながら瓶の中のポリープを見ていると、先生は『簡単っていうかねぇ…』と言葉を続けた。
『妊娠が発覚してポリープも見つかって、妊娠の経過を経ることでポリープにも変化が起きて根元が脆くなってたんだよね。取れるタイミングになったというか、取れる状態になっていたって感じかな。』
あれ?それって。
お腹の人のおかげかもしれない。
私はまた直感で助けられたと思った。
帰りの車の中で報告を聞いたたっつんは『良かった。順調だね。』と言った。
『ポリープが出来た要因をてんてんが手放せたってことかもしれない。何にせよ、これで心配ごとは1つ減った。』
その通りで、なぜか私は妊娠を機にどんどん健康的になっていた。
家に帰ってからの報告で案の定心配性の祖母は結果を聞くまでハラハラしていたし、最後にはポリープを取れたお祝いをしよう!とまで言い出した。
母はすぐに『お腹の子に私は感謝しなくてはね。本当にあなたのことをよく守ってくれる。』と感激して鼻を赤くしていた。
防げたかもしれない胃ガンで早くに父を亡くした母はどうしても結びつけちゃうものがあるらしく、涙が出るくらいに嬉しかったようだ。
最後に妹は『ふーん、だからかなぁ。』とお腹を見ながら話し出した。
『お腹の人、だからそんなに誇らしげな顔してるの。』
妹にはお腹の人の顔が見えている。
ぼく、やってやりましたよ!みたいにふふん!とした顔をしていたみたい。
ほんとにお姉ちゃんは大丈夫だよ、ポリープだって取れちゃったし!だって。
『僕はお母さんを守ると決めている。』
だから、お母さんにだってその人生は譲れない。
初めてお腹の人と話した時のセリフが返ってきた。
やさぐれ妊婦はお腹の人にはもう頭が上がらない。
全てうまくいくと確信を得た次の日に起きたポリープ騒動。
本当にお腹の人が奮闘した結果なのか定かではないが(笑)
やさぐれ妊婦の日々は見えない流れの中で不思議な出来事と人々に囲まれながら過ぎていく。
予定日までもう少しで3ヶ月というくらいの出来事だった。
リアルな見えない世界の体験を綴ろうと思っています。自分が感じた感覚をそのままに。私の大切にしたい世界が伝わることを願って。見えない世界も大切にしたいと思う方はサポートしてくれると嬉しいです。