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急展開に続く急展開

数年ぶりの山形

 2021年12月半ば。
たつみのりは山形にやってきた。

このご時世もありひっそりと…数年ぶりに戻った山形は例年以上の大雪の当たり年だった。
まさか年末に実家で過ごすことになるなんて…12月に入った時には(寧ろ1週間前でも)予想していなかった。

今実家にいるのは祖父と祖母の2人。
2人とも凄く喜んでいる。

『仕事を無理をしたからか体調が本調子じゃない。』

そう言うみのりんを気遣ってか、年末には実家にみんなが集まって早めに医者にかかるように進めてくる。

うーん。
確かにこのご時世だし。
免疫力が落ちて本調子じゃなくなってたり、ホルモンバランスが狂っているならそれはそれで大変。

実は会社への出社が2~3週間以上ぶっ続けで続いた時、急に体を冷やしたのも重なって最後の方は微熱っぽく、お腹を下す状態が続いていた。
それから生理も止まっている。

そうしたこともあって、しっかりと自分のための時間を取れるようになった今だからこそ自分の体のメンテナンスを始めることにした。

後ろから闇討ちされた衝撃

そうしてまず最初に訪れた産婦人科。
ホルモンバランスは大事よね!とまずはそこから取りかかることにしたみのりんはまさに闇討ちのごとく、暗闇の中で後ろから辻斬りされたような衝撃を受けた。

内診の時にすごい激痛。
心の中でなんかよく分からん叫びを上げた。
いやー実際に声に出さなかった自分を褒めたい(笑)
診てくれた先生もこれに気付いて内診すると…。

『あぁ、ポリープがあるね。
結構大きめの…。』

ポ、ポリープ…!?
そんなものいつの間に!?

なんといつの間にかポリープ持ちになっていたみのりん。
内診の時の激痛はポリープに思いっきり器具が触れてしまったかららしい。

『これはこれでしっかり検査と処置しないとねぇ。』

ぜ、ぜひともそれはお願いしたい。

『で。』

くるっとモニターに写し出された影に一気に冷水をぶっかけられた気分になった。
丸い黒い球体の中にミジンコみたいな影が浮いている。

『こうして大きさを計ってみると2cm。
もう9週目の大きさになるねぇ~。
大分大きくなっちゃってるみたいだね。』

え?え?え?
2cm?
ミジンコがいる。
9週?
何言ってるの?
ミジンコがいる。
九州じゃなくて?
きゅうしゅう???
ミジンコがいる。

パニックになって涙が浮かんでくるみのりんの前でモニターのミジンコがぴよぴよ動いた。
ミジンコ生きてる。

『お、動くねぇ~。』

先生の声がやけに遠かった。

荒れまくるみのりんの胸中。

自分の人生において…妊娠したり、子育てをするのは別にしなくていいと思っていた。
はっきり言ってしまえばやらなくていいならやりたくないと思っていた。

そんな私がいきなり自分の腹の中にいるらしい人をモニターで見て、しかも動いているところを見てしまった。

『妊娠していた場合、検討中とのことですが…9週で赤ちゃんは既にかなり大きくなってます。個人医院では処置してくれるところは多くないでしょう。大きい病院でも…入院が必要になるかと思います。』

受付の人が神妙に静かに教えてくれた事実に
そうですか。
と、呟いて支払いをして1週間後の予約を取ってからたっつんの待つ車に戻る。

感染対策で建物内にはたっつんは入れなかった。

『お腹の中に人がいた。』

それだけ言ってモニターの写真を見せた。
たっつんは事実を事実として受け止める人だ。
そっか、と受け入れて車を走らせた。

『今の気分は?』
『ちょっと話す気分じゃない。』

気分を聞かれても整理して言葉を出す前に涙が出た。
あーこれは事実に感情の方が先に反応してしまっている。
しかも、クソでかい感情の塊が。

車の中での会話はそれで終わって会話もなく家に戻り、その後はずーっとずっと泣きっぱなしだった。
頭も痛くなった。
鼻血も出た。
それでも涙は止まらない。

嬉しくなかった。
戸惑いの方が大きかった。
実家で冬の季節を過ごしたら今度はどこに行こうかと話をしたばかりだった。
今のうちに山形でやり残していたことをやってみようかと考えている矢先だった。

じゃ、処置する?
目の前でぴよぴよ動いたあの影を。

(無理だ…。)

無理だけど。
そこから思考が先に進まない。
みのりんはお腹に人がいると分かったその瞬間にマタニティブルーになった。

そんなみのりんを取り囲むように見守るのは宮崎で一緒になったあの家族だった。

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リアルな見えない世界の体験を綴ろうと思っています。自分が感じた感覚をそのままに。私の大切にしたい世界が伝わることを願って。見えない世界も大切にしたいと思う方はサポートしてくれると嬉しいです。