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広至9~天使じゃないGメジャー~

天使じゃない

「俺たちは天使じゃない」というアメリカ映画をご存じだろうか。
私はリメイク版のロバート・デ・ニーロとショーン・ペンとデミ・ムーアが演じる郷愁溢れる美しい映画しか知らないのだが、原作は戯曲で、ハンフリー・ボガートらが演じた映画もある名作だ。
私は、脱獄囚と娼婦と聾唖の子供の織り成す愉快で美しい情景が、今でも忘れられない。
そんなことを思い出すNGT48の歌う2曲と出会った。
賞味期限は僅か20時間もないどうでも良い話なのだが…。

「シャーベットピンク」と「絶望の後で」

NGT48が7月22日に5th.シングルをリリースする。
その収録曲のうち2曲が、ラジオ番組で流れた。
ちょっと長くなるが、不正確な聞き取りの歌詞と簡単に区分けした構成で、2曲を紹介したい。

「シャーベットピンク」
1番Aメロ
なぜ季節は 気付かない内に 変わってるのかな
街の景色も 花たちの香りも 着替えている
Bメロ
「元気だったかい 何をしてたの? 久しぶり」
Cメロ(サビ)
君らしい シャーベットピンク
似合ってる スカートの色
そよ風に 裾ひるがえし
可愛すぎる人と
待ち合わせた Summer day
2番Aメロ
工事してた 鉄骨のビルが 完成したのか
人は誰でも 目の前のことしか 見てないんだね

Bメロ
「少し痩せたみたい 髪を切ったせい? 大人っぽい」
Cメロ(サビ)
太陽と シャーベットピンク
あの海へ 誘いたくなる
横断歩道 駆け寄ってきた
今でも好きな人と
やっと会えた Holiday
間奏→Cメロ(サビ繰り返し)
愛しさは シャーベットピンク
さりげなく 思い出させる
あの頃は言えなかったけど
君が1番好きだ
Cメロ(大サビ、半音上げ)
君らしい シャーベットピンク
似合ってる スカートの色
そよ風に 裾ひるがえし
可愛すぎる人と
待ち合わせた Summer day

爽快感の強いGメジャーの曲だ。
ピアノのイントロで始まることや合いの手で入る音が鐘の音を想起するような強いエレキギターが重なっていることも合わせて、AKB48グループでいうなら「ポニーテールとシュシュ」のイメージと重なる。
曲は、殆んどが4分音符の極めて分かりやすいリズムと、キーも最後のサビで熱狂を呼ぶ箇所で転調するだけで、聞く側もシンプルにノリやすい。
歌詞でも教条的なセリフは殆んどなく、「人は誰でも目の前のことしか見てないんだね」の一言より「再会」の歓びの方が溢れている。
あの頃は言えなかったセリフは、今だったら言えるのか、やはり噛み殺してしまうのか。
(恐らく作詞したであろう)秋元康のイズムもよく出ている。
きっとMVも含めて全てが、歓喜と祝祭で彩りたくなる熱い曲に仕上がっているだろう。

「絶望の後で」
1番Aメロ
心の中を 全部吐き出せたのかい
言葉の滓は もう残っていないかい
カッコなんかつけなくて良いんだ
ホントの気持ちをさらけ出せ
僕らは 天使なんかじゃない
Aメロ(繰り返し)
そう誰だって口汚くなるよ
感情的になっちゃいけないのか
生まれてからずっと信じて来た
大切なものに裏切られて
冷静に なれるわけない
Bメロ
Ah... 真実とは
誰も開けちゃいけないパンドラの箱か
Ah... 知りたくなんてなかったよ
正義はどこにある
Cメロ
愛よどうして 優し気に微笑んで近付く
僕から 何を奪おうと企んでるんだ
これ以上 もう誰も信じたりはしない
今すぐ 絶望すれば楽になれるさ

2番Aメロ
見てないふりを すれば良かったのか
誰も傷付く ことなかったのか
口をつぐんだって関係なく
この世の中は回っていくんだ
何事も 無かったように
Bメロ
Ah... 青い空は
何も迷いのないまま晴れ渡っている
Ah... 雲はどこに隠したんだ
憂いは捨てたのか
Cメロ(サビ)
愛はどうして 哀しみを追い払えるのだろう
痛みを そんな簡単に忘れられるか
誰かを もっと恨んだっていいんだよ
希望は 絶望の淵見上げるものだ
Dメロ(展開部)
全てを1度 失えば
悩みの中に見えてくる
諦めたのは 何なのか
失ったものは何なのか
Ah... Oh...
何も持ってない てのひら開いてみせろ
Cメロ(サビ)
愛よどうして 優し気に微笑んで近付く
僕から 何を奪おうと企んでるんだ
これ以上 もう誰も信じたりはしない
今すぐ 絶望すれば楽になれるさ
後奏
奪われてから
初めて気付く
失ったもの

こちらは疾走感のある4/4拍子ながら3,3,2とやや不規則に低弦セクション(チェロ、バス)とピアノが刻むリズムが基本の曲となっている。
伴奏のアレンジは、刻んでいる楽器に(恐らく)ヴァイオリンがコードを乗せていくパターン。
キーはAメロ、BメロはF#メジャーという複雑な音階で雲がかかったような曲が、サビに入るとスッと光が射すようにGメジャーに収束する。
歌詞も、透明感のある声とは裏腹に、「傷」、「裏切り」、「企み」、「奪う」といったキツいフレーズが多く並ぶ。
タイトルに即した「再生」の色合いが濃い曲だろう。

2曲を繋ぐG

リズムも歌詞もアレンジも、色合いが全く異なる2曲だが、私には強く連携して聞こえた。
理由は明快。
サビがGメジャーであること、だ。
#が1つついただけで 、非常に聞いていて分かりやすく明るいこのキーが両曲を緊密に繋いでいる気がしてならない。
そして、シングルの表題曲であるシャーベットピンクは、もう一歩進めた希望を描くかのように、最後は転調して更に明るい音で終わる。
それは、彼女達の道に希望が失われていないことを示すように思えた。
「俺たちは天使じゃない」のラストシーンが、国境の町に留まるショーン・ペンに新たな仲間との日々とメキシコへ渡るロバート・デ・ニーロの自由を描いたように。

勇気

自分の欲求を聞かれた時、自分より他人を優先することは殊更に難しい。
私自身、つい最近も自分の保身と諦念に改めて恥じたことがある。
しかしあるメンバーは、自分の理想の姿として「他人の勇気」になることを明言していた。
彼女の言葉が、単に奉仕精神を前面に出した偽善には、私には到底思えなかった。
美しい人が、決して美しいだけでは済まないような水に身を浸らせて尚、言い切れる「他人の勇気」という言葉の重みに、私はただ仰ぎ見て敬意のまなざしを向けることしかできない。

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