第9波への警戒。

 新型コロナウイルスの感染者数が全国で増え続けている。2023年4月19日厚生労働省は専門家会合を開き、過去の感染拡大のパターンと今後の予測を示した。5月のゴールデンウィーク後には感染が急増する可能性が高く、国民には対策を徹底するよう求めた。
 専門家会合はこれまで感染状況や医療体制の分析や評価、対策の提言を行ってきた。しかし、5月8日に感染症法が改正され、新型コロナは季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に分類されることになる。これに伴い、専門家会合は必要に応じて開催される。また感染者数の把握方法も、毎日国が公表していた「全数把握」から指定した医療機関が週1回報告する「定点把握」に変わる。
 このため、休日や行事で感染者が増えた場合にもすぐに把握できない恐れがある。免疫を持つ人が少なく、変異株が広がっていることから、一部の専門家は「第9波」が「第8波」よりも深刻になると警鐘を鳴らした。
 「第8波」は昨年末から今年初めにかけて最も多くの感染者を出した感染拡大で、その後は感染者数が横ばいに推移していた。3月末から上昇傾向に転じ、4月18日には新規感染者は1万人を超え、全国的には上昇率は緩やかだが、大都市部では若年層の感染者が目立っている。過去のデータから分かるように、冬と夏は感染拡大の季節で、本年もゴールデンウィークが終わった後、夏にかけて再び感染が急増する可能性が高い。
 国内で流行している新型コロナウイルスの変異株は、22年10月以降BA.55から徐々に変わり、新しく現れたBN.1やBF.7などの変異株が増えてきた。23年2月からは、オミクロン株の一種であるXBB系統が急速に広がり、東京都のデータでは、3月下旬に検出された変異株の半分以上を占めた。
 XBB系統はオミクロン株の中で2つの遺伝子が入れ替わった「組換え体」で、BJ.1とBM.1.1の2つのオミクロン株が組換えされて生まれた変異株で、XBB、XBB.1.5、XBB.1.9.1の3つの亜系統が存在する。
 XBBはスパイクタンパク質にR346T、N460K、F486Sという変異を持っている。これらの変異は免疫から逃れる能力が強いと考えられ、オミクロン株よりも危険性が高いと言われる。
 しかし、今のところ感染者数が急増しているわけではない。過剰な心配は不要だが、わが国ではオミクロン株に感染した人の割合が海外に比べて低い理由から、大規模な流行になる可能性は否定できない。

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