マイナ保険証について。

 マイナンバーは国民一人ひとりに割り当てられた番号で、この番号を使用して、住民票、税金、社会保障、預金口座など様々な情報を管理する。このデータが正しく扱われているかどうか調べてみたら、信じられないほど多くの問題があった。
 マイナンバーと各種情報をひも付ける機関は、手続きごとに分かれている。この両者を結びつける接続部分で、方法がバラバラだったり、間違っていたりする。例えば世帯情報なら市区町村、生活保護なら都道府県と市区町村などといった具合である。
 行政手続のオンライン窓口であるマイナポータルで情報を閲覧できる税金、所得、雇用保険など29項目のひも付けを行っている機関は延べ約8万5000に上る。政府はこれらの業務を自治体に任せており、約5000の自治体がそれぞれにデータを点検しなければならなくなった。
 マイナンバー制度は、国民のために作られたものであっても、実際には利権や思惑が絡んでいて、難点も多々あり、運用には改善の余地が多い。政府は今まで調べたことをもとに、各種制度の申請者にマイナンバーの届け出を義務化する省令改正を行うほか、ひも付け機関が情報を照会する「地方公共団体情報システム機構」のシステムを改善するなどの再発防止策を掲げた。
 しかし、専門家からはマイナンバー制度の基本設計に致命的な欠陥を指摘されており、もう一度白紙からやり直す必要性が指摘されている。現行のままでも改修にはかなりの時間がかかるようだが、再び同じミスが繰り返される懸念がある。
 16年からマイナカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」が始まり、来年秋に全部の一体化が予定されている。しかし、患者が医療機関の窓口で支払う費用の負担割合が登録と食い違っていた事例、登録ミス、個人情報漏えいなど多くの問題が露呈し、イメージが大きく低下した。
 約10万人の医科と歯科の開業医が加入する全国保険医団体連合会は8月9日に会見し、政府のマイナンバー情報総点検本部が8日に公表した総点検・中間報告で、新しく1069件の紐付けミスが明らかになったと発表した。そして、会長の住江氏は「氷山の一角にすぎない。全件チェック・全容解明まで運用停止を求める」と訴えた。
 19都府県、164市区町村に及ぶ370(13.3%)の医療機関が、70歳以上の高齢者についてオンライン資格確認と健康保険証で負担割合の相違を経験した。4年の秋以降も、健康保険証の存続を求める声は会員の9割を占めた。
 4036万人が加入する全国健康保険協会は、加入者のうち40万人はひも付けできていないと話した。その理由としてそもそもマイナンバーの提出がなかったり、本人の4情報(氏名・住所・生年月日・性別)を基に照会しても、住所が一致しない人がいたりした。
 まだ道半ばである。

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