医師の概況について。

 2024年3月19日に厚生労働省が公表した統計によると、届出された医師数は34万3275人に達し、人口10万人当たり262.1人となり、わが国の医師数が初めて34万人を超えた。この統計は医療機関の医師の数を示すが、届出漏れや非常勤、フリーランス、産業医、高齢の医師、子育て中の医師など届出外の医師も多数存在することから、40万人と言わないまでも、実際の医師数は35万人を超える。
 施設の種別では、「病院(医学部付属の病院を除く)」が16万426人で最も多く、「医学部附属の病院」が5万9670人、「診療所」が10万7348人を示した。医師の平均年齢は50.3歳だった。
 医師数の推移を見ると、1970年には11万9000人(人口10万人当たり114.7人)、2000年には25万6000人(同201.5人)、そして、20年には34万人(同269.2人)と、半世紀で医師数は約3倍に増加した。近年の20年間だけでも医師は約10万人増え、人口10万人当たりの医師数も50人以上も膨張した。
 一方、少子高齢化社会の進行に伴い、09年からわが国は人口減少社会に突入し、50年には総人口が1億人を下回ると予測されている。この人口動態の変化によって病院と病床数が過剰となり、過去20年間にわたり病床数の削減や病院の統合など医療体制の縮小が進められてきた。
 医師数の飛躍的な増加にもかかわらず、医療機関の敷居は依然として高く、アクセスや利便性の面で厳しい状況が続いている。医師の適正数や医師不足、地域間や診療科間での医師の偏在は、医療アクセスの公平性や医療サービスの質に直接影響を与えており、医師の配置や養成に関する政策の見直しが急務となっている。
 しかし、これらの政策の見直しは容易ではなく、医師数の飽和状態が医師の給料を抑制する大きな原因となっている。医学部や入学定員の削減が必要であるにも関わらず、医師数の絶対的不足と地域間での偏在は依然として医療提供体制における重要な課題であり、OECD(経済協力開発機構)諸国と比較しても、わが国の人口千人当たりの医師数は低い状況が続いていると主張する人も多い。
 とくに地方や過疎地では医師の不足が顕著であり、都道府県別に医師の分布を見ると、地域差が大きいことがわかる。人口10万人当たりの医師数は徳島県が337.7人と最も多く、次いで高知県335.2人、京都府334.3人、長崎県327.6人、東京324.6人と続く。
 一方で、埼玉県は180.2人と最も少なく、次いで茨城県202.0人、千葉県209.0人、新潟県212.7人、岩手県218.4人となっている。関東圏の3県の医師数の少なさは、東京一極集中化の影響を受けている可能性がある。

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