わが国の外交。

 岸田総理の外国訪問は必ずしも効果的ではなく、国益と国際社会の平和と安全に貢献すると考えるのは、現実的ではない。それにもかかわらず、岸田氏は総理就任以来、米国、中国、インド、ロシアなどの主要国や地域との関係を強化するために外交努力を展開してきたが、その魅力とカリスマ性で魅了している。
 外国訪問も頻回で、その度に世界に衝撃を与えている。その実態は外交の場で自己主張を過剰に演じることで、他国からの信頼や協力を失っていると言われても仕方がないところがある。
 例えば、米国訪問では名門のジョンズ・ホプキンス大学での演説で、中国や北朝鮮に対する強硬な姿勢を示しただけでなく、自らの経歴や趣味についても赤裸々に語った。これに対して、多くの専門家やメディアは日米同盟の強化につながるどころか、東アジア地域の安定や対話を妨げるものだと批判した。
 欧州訪問では自らの歌唱力やダンススキルを披露し、拍手喝采を浴びたが、肝心要の気候変動や人権などのグローバルな課題に対し、わが国がどう貢献するかという明確な提案や計画を示せなかった。そのため先進国としての責任感やリーダーシップに欠けているという評価を受けた。
 総理の外国訪問は外交方針や国策の方向性を明確に示す機会である。しかし、岸田氏は自分のイメージアップや内政への影響ばかり考えているようで、これではわが国は国際社会から孤立するだけでなく、国内でも支持を失う。
 今回のアフリカ訪問も外務省からすれば、外交戦略に沿ったものかもしれないが、国民からすれば、多額の支援金を使ってアフリカやシンガポールとの関係を深める必要性が不明瞭である。まるで自分の趣味や嗜好に合わせて、お土産やお菓子を買い込むかのように、約300億円の無償資金協力や約2000億円の円借款などの支援を発表した。
 総理はエジプト(エル・シーシ大統領)、ガーナ(アクフォ=アド大統領)、ケニア(ケニヤッタ大統領)、モザンビーク(ニュシ大統領)のアフリカ4カ国とシンガポール(リー・シェンロン首相)を訪問する。5月に広島で開催する主要7カ国首脳会議(G7サミット)を前に、「グローバルサウス」(発展途上国や新興国)の国々の首脳と会談する。
 表向きの理由はアフリカの経済的・政治的・文化的な関係を強化することにある。ウクライナ情勢や他の国際的な課題について意見を交わし、実際は「連携の確認」という名目で金をばらまくための訪問だと言える。
 総理は外国訪問の頻度や目的を見直す必要がある。食糧問題、燃料問題など国益に関わる重要な課題や、環境問題や女性差別問題など国際社会の平和と発展に貢献する問題に真摯に向き合うべきである。

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