異例な東京都知事選挙。

 わが国の潮流が大きく変わろうとしている時、また変わらなければならない時、今回の東京都知事選は異例づくめで、多くの観点から見て興味の深いものがあった。その一端を記録して、足跡を残したいと思う。
 今回は過去最多の56人が立候補したが、その数と内容はいずれも異例であった。当初、各メディアは小池氏(71)と蓮舫氏(56)の女性同士の一騎打ちを盛んに煽り、田母神氏(75)はある程度の名が知られていたが、石丸氏(41)は全国的には無名であった。しかし、石丸氏の躍進ぶりには目を見張るものがあった。
 結局、現職の小池氏が約292万票を得票し、3選を果たした。予想外の結果で、違和感を覚えた人も多かった。直前まで広島県の安芸高田市長を務めていた石丸氏は石丸ブームを巻き起こし、約166万票を獲得し、次点に付けた。
 当選または次点の下馬評が高かった前立憲民主党参院議員の蓮舫氏は約128万票で、3位に沈んだ。続いて元航空幕僚長の田母神氏は27万票、AIエンジニアの安野氏(33)は15万票を獲得した。
 7月7日の都知事選と同日に東京都議員の補欠選挙が9選挙区で行われた。裏金事件などで逆風下にある自由民主党が8選挙区で候補者を擁立したが、6敗を喫した。この辺りも自民党を基盤にした小池氏の得票との解離が目立った。
 小池氏は都政2期8年の評価や少子化、首都防衛など災害対策が主な論点だった。選挙活動は街頭演説や討論会を避ける一方、現職の有利さを濫用してバラマキ政策を行い、自民党とその友好団体、公明党と創価学会、連合東京などの支援を受けて、それを固めるステルス選挙戦を展開した。現在、進行中の大規模開発の晴海フラッグ(オリンピック選手村)、神宮外苑再開発、築地市場跡地開発については三井不動産との濃厚な癒着が露呈し、裏金疑惑も強まった。
 蓮舫氏は若者支援とガラス張りの都政を公約として、神宮外苑再開発問題にも鋭く切り込んだ。石丸氏は政治屋の一層などの政治改革や東京一極集中化の課題を公約に掲げ、国政レベルの論点で選挙戦を展開した。
 前代未聞だが、選挙期間中に小池氏は3つの告訴を受けた。何といっても、国立カイロ大学学歴詐称問題が燻り続けてきた。この問題はエジプト政府と小池氏の特別な関係を示唆し、都政や国政が外国勢力の影響を受ける可能性を秘めている。
 同氏の元側近で、学歴詐称問題に一部関与した都民ファーストの会の事務総長を務めた小島弁護士は6月18日これを取り上げて、公職選挙法違反(虚偽事項公表罪)の容疑で東京地方検察庁に告訴した。
 また都民ら175人が6月26日東京都内の52区市町村長が小池知事に知事選出馬を要請した点を巡って、公選法違反(公務員の地位利用)容疑で告訴した。さらには郷原弁護士と、神戸学院大学法学部教授上脇氏の2人が7月5日に選挙期間中の6月28日に行われた知事の定例記者会見の中で、公務中に候補者としての活動を行ったとして訴状を提出した。
 都民として、若くて、利権にとらわれず、税金を正しく活用してくれる人に知事に就いてもらいたいと願うのは当然である。その上に石丸氏と蓮舫氏は正直な政治家であり、理想的な候補者と言えた。
 とにかく、異例な選挙であった。

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