東京都千代田区の「千代田ムラ」について。

 大都会のど真ん中にムラがある。千代田区永田町にも、建設ムラ、河川ムラ、医療ムラ、教育ムラ、原子力ムラ、金融ムラなど、あるいは大手町の経済団体連合会にも、鉄鋼ムラ、電機ムラ、自動車ムラ、ITムラなど多くのムラ社会がある。ムラ社会は東京から全国の村、集落に至るまで存在し、多様な利権構造が蔓延っている。
 利権ムラとは、特定の利益を共有する組織や人びとのことをいう。これらは政治的な力を悪用し、不透明と不公正を利用し、自分たちの利益を守ったり拡大したりし、公平な競争を阻害し、社会全体の大きな利益を損ねている。
 千代田区は東京都の中心に位置し、政府機関や多数の企業が集まる地域である。したがって、しばしば「千代田ムラ」と呼ばれる現象が生じ、政治家、役人、企業が密接に関わり合うことで知られている。
 2024年3月9日、警視庁は千代田区の元区議を官製談合防止法違反容疑で再逮捕した。事件の発端は2年8月区役所の「職員有志」から警視庁に出されたとされるペーパーが関係者の間に出回り、嶋崎区議が非公開の入札情報を漏洩したと告発があった。
 同年10月にも、嶋崎議員らと共謀したとして逮捕された行政管理担当部長吉村氏らの区役所の幹部らの実名や、漏洩があったとする6つの工事の入札経過調書が出回った。事情聴取に応じる覚悟の者もいると付記されていた。
 一連の事件は嶋崎議員が中心となり、17年頃から業者からゴルフ接待や飲食費の支払いなどの利益供与を受けていた。20年には区立お茶の水小学校・幼稚園の改築工事の入札で、業者から賄賂を受け取る見返りに入札情報を漏らした疑いがある。
 総合設備企業の日管株式会社(静岡県浜松市)は、地域社会の安全と防災活動への貢献を目的として、管工事業者十数社と協力体制を築いていた。このグループは、嶋崎区議から提供される入札情報を共有していた。捜査当局は日管グループと嶋崎区議との間に不適切な関係があったと疑い、公正な入札プロセスが損なわれた可能性があるとして捜査を進めている。
 このような状況は昔からわが国のあちこちで見られる日常的な光景である。今回の問題は、公共事業の入札情報を業者に漏らし、その見返りに地元業者を含む任意団体と金銭授受を行っていた。
 こういった問題は社会の隅々に根付いており、常態化している。透明性と公平性を保つためには、すべての関係者が法令を遵守し、倫理的なビジネスの習慣を守ることが必要である。

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