ポスト・コロナ時代を迎えて。

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が2020年3月に新型コロナウイルスの「世界的大流行(パンデミック)」を表明してから、11日で3年が経過した。世界に未曾有の被害を与えた感染症は、依然として終息のめどが立っていない。ウイルスは変異する特性があることからも、当面終息は期待できない。
 今月7日までにWHOへ報告された世界の累計感染者数は7億5940万人を超え、死者は686万6400人余りに上った。実際の感染者数や死者数はこの集計をはるかに上回る。
 ワクチン接種は世界で延べ132億2900万回に達した。感染の拡大に余り有効ではなく、その他にも有害作用で悩まされた人も多く、検証不十分のワクチン接種後に死亡した人も少なくない。専門家によると、人口14億人の中国では約80%(11億人超)が感染したと指摘した。
 世界の三大感染症である結核、HIV感染症、マラリアを上回るインパクトがあった。SARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)ほど致死的ではないが、アルファ株、デルタ株が流行した時期は、多くの肺炎を起こした人が救急搬送・入院となった。一方、感染しても8割か9割は無症状か感冒の程度の軽症で済んだ。
 政府と医療現場と一般国民の受け止め方に大きなギャップを生み、社会が分断された。わが国では今年1月、コロナの感染症法上の位置付けについて、5月から季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げる決定をした。
 利権と便宜を優先し、科学的根拠を後回しにする最悪の感染対策に固執したわが国は、
3337万人の感染者と73400人の死者を出した。感染対策の反省を含めて、権力と人権の兼ね合いについて真剣に議論する必要がある。
 昨年12月中国は一時WHOからも絶賛されたゼロコロナ政策を終了した。厳しい規制の影響で経済が冷え込んだ事態も方針転換を余儀なくされた理由となった。中国にかぎらず各国政府は、感染防止と国民経済の両立という難しいかじ取りを強いられてきた。
 昨年から多くの国は正常化への歩みを進め、「ポスト・コロナ」「コロナとの共生」への時代に備えた。110万人超えの死者を出した米国でもトランプ政権が発令した「国家非常事態宣言」が5月で終了する。
 今年から本格的なポスト・コロナ時代を迎え、新しい潮流が生まれようとしている。直接の理由は膨大な不良債権のせいだろうが、米国とスイスでの銀行破綻の連鎖と金融不安は、この流れを加速する。

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