捜査の主眼は?

 自由民主党はパーティ券を巡る裏金問題で混乱している。この問題は多くの議員が関係していると見られるが、東京地方検察庁の特捜部は安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)が重大な違法行為を行っていたとして、捜査の主眼を置いている。
 とくに注目されるのは国会議員99人を擁する安倍派で、岸田首相にとって友好的な派閥である。しかし、安陪派は前回の総裁選挙では高市氏を支持したことから、岸田氏は切り捨てた可能性がある。
 検察庁は法務省の所管であり、政府の一部である。エリート検察官は法務省と検察庁を行き来する人事でキャリアを築き、政府や与党との関係も密接である。そのため検察庁の捜査には政治的な意図が介在するという批判があり、事件を隠蔽したり、情報を漏らしたりし、国策捜査だという批判が強い。
 裏金問題は20年以上も前から三塚氏と森氏が派閥を支配していた時代から続いてきた。森氏は政界引退後も影響力を保ち、安倍氏の死後は安倍派の最高指導者となっている。
松野官房長官や西村経産大臣などの安陪派5人衆による集団指導体制がとられたが、彼らは森氏に裏金を提供していたとされる。また功労金などの名目で安倍派から森氏に裏金が流れていた疑惑もある。
 これらも捜査対象となっているが、まだ裏金問題として関連する問題が隠れている可能性があり、さらに事件は拡大するかもしれない。今回は安陪派の閣僚4人と世耕参院幹事長が辞任し、党内では萩生田政調会長と高木国対委員長が辞任した。しかし、検察の判断によって彼らの処分には差が出る可能性がある。
 一方、特捜部が政治家を捜査しても軽微な罪に留まり、結局は表面的に処理することになるという悲観的な見方が多い。本当はあってはならないことだが、実際に検察の扱いは政府高官と一般人では大きく異なる。一般人なら冤罪で逮捕し名前も公表するにもかかわらず、政治家や警察官などは逮捕もされず名前も公表しない。
 国民は検察に対して不公平や恣意を排除し、公正公平に事実を究明してほしいと強く望んでいる。検察は国民のために働く立場として、この問題を徹底的に調べ、真相を明らかにする義務がある。
 裏金問題は自民党だけでなく、わが国の政治全体に影響を与える可能性があり、またこれを契機に政治を正そうとする動きがある。単なる汚職事件として終わらせると、国民の大きな期待を裏切り、さらに政治体制や国際関係に深刻な状況を招く恐れがある。

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