8kテレビについて。

 2024年2月6日、電気機器メーカーのシャープは、24年3月期の業績予想を下方修正し、純損益が100億円の赤字になる見通しだと発表した。昨年11月の予想では100億円の黒字を見込んでいた。
 23年3月期の純損益がパネル市況悪化に伴う2608億円の赤字だった同社は、黒字回復を最重要の課題としてきたが、今期は目標の実現は難しくなった。業績悪化の理由の一つには8Kテレビ事業の不振がある。
 同社は今年の8kテレビの出荷台数を前期の2.5倍30万台の目標を掲げてきたが、コロナ禍で需要が低迷し、10万台程度にとどまるという。これが事実だとしたら、世の中の状況を見誤った結果である。
 シャープは17年12月に世界で初めての8kテレビを家庭用として高画質で高付加価値な製品として発売した。現在、8kテレビは国内メーカーではシャープとソニー、海外ではLGエレクトロニクス(韓国)から販売されている。
 しかし、高価格や放送・配信コンテンツの不足などで普及が遅れており、国内で8k放送を行っているのはNHKのBS8kのみで、先進的な技術にもかかわらず、テレビ界や政府の応援は少ない。
 8kテレビはフルハイビジョンに比べると、およそ16倍の画素数があり、鮮明で繊細な映像を映し、店頭でも圧倒的な存在である。優れた技術が使われていても、性能を発揮できるコンテンツが少ないためと高価格のため、なかなか主流の商品として普及しない。
 いずれ、世代交代が進むだろうが、その場合価格が何よりも重要な要因となる。景気が落ち込んでおり、しかもテレビ離れが進んでいる世の中で、一般的な家庭ではそれほどの買い物をする余裕はない。
 シャープは製品開発や技術革新に力を入れており、現在は「8k+5Gエコシステム」という戦略を打ち出している。1962年にわが国初の家庭向け量産型の電子レンジを発売し、空気清浄機や冷蔵庫などで一定の強みを持っている。しかし、国内の市場全体が縮小しており、輸出に頼る以外には成長の余地が乏しい。
 以前は同社の製品は無駄を徹底的に省いて、価格と品質のバランスが良かった。8kテレビも将来の布石を念頭に置いて、低価格の販売を考慮し、本来はこういったテレビは大画面でその迫力を楽しむものだろうが、43や40インチほどの製品を販売するなど、普及に努める必要がある。
 16年に台湾の鴻海精密工業(フォックスコングループ)に買収され、子会社として健闘しているが、最近は価格が高価になっているようだ。この辺りを解決すれば、8kテレビも普及するのではないだろうか。

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