地域医療構想について。

 団塊の世代が75歳以上になる2025年の医療需要を推計し、地域の人口や医療ニーズに応じて、最適な病床数や医療サービスの提供体制を構築することを目的とする。本来、これは都道府県の業務かもしれないが、18年の4月から始まった政府の第7次医療計画の一部として位置づけられた。
 15年3月に厚生労働省が公表した地域医療構想策定ガイドライン地域医療計画に基づいて、各都道府県は地域ごとの地域医療構想を作った。近年、高齢者の人口がピークから減少に転じる2040年とコロナ禍で浮き彫りになった課題を考慮に入れた25年以降の新しい地域医療構想の策定が検討されている。
 この計画は医療費の抑制と効率化を目指す側面もあるが、それでは実際に地域の医療需要に対応できない可能性がある。例えば病床数の削減は、入院患者の早期退院や在宅医療への移行を促すが、これらのサービスは十分に整備されていない場合が多く、患者の安全や質の高い医療を確保するのかが困難となる。また医療機関の救急医療や重症患者の受け入れ能力を低下させることにもなり、地域医療の崩壊を招く危険性があると言える。
 医療需要は地域によって異なり、高齢者人口や人口の増減などでも必要な病床の種類や数は変わる。地域医療構想は二次医療圏を基本に全国で341構想区域を設定し、構想区域ごとに医療機能を高度急性期、急性期、回復期(回復期リハビリテーションなど)、慢性期(難病、重度の障害者など)の4つの医療機能に分類し、それぞれの病床の必要量を算出する。
 都道府県は地域医療構想調整会議を年4回開催し、25年における役割や医療機能ごとの病床数を調節する。具体的には公立・公的医療機関で先行して検討されており、医療機関の再編や病院の統合が行われている。
 また24年4月から本格的に始まる医師の働き方改革によって、医師の時間外労働が制限されるようになる。これまで地域によっては一部の医師の長時間労働で現場が支えられてきた問題があり、医師の過剰な負担は医療の安全や質を脅かす。
 持続可能な地域医療を提供するためには、各地域に必要で十分な数の医療機関を配置し、医療機関の役割分担と連携が必要不可欠である。これは医師個人が効率良く、無駄なく働くことにつながる。医師の働き方改革への対応としても、地域医療構想は重要である。
 25年までに全国の人口の高齢化率は30%に達し、高齢医療の需要は都市と地方で様相が異なり、都市部では高齢化が進み、地方では過疎化が進行する。2008年からわが国は人口減少時代を迎えた。65年には人口が9千万人を割り込み、高齢化率は約40%に上ると予想されている。これに伴って、医療や介護の担い手となる生産年齢人口が急速に減少する課程で、25年の約7千万人から40年には約6千万人になる。
 人口構造が変わる中、地域の事情に合わせた医療を提供する必要がある。細部には種々の問題があるだろうが、昨年の3月末に合意と検証済に至った医療機関は60%、病床単位では76%と、調整の進捗が確認されている。

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