インフレによる税収増加と予算の膨張。
2024年9月4日、財務省は各省庁から提出された来年度予算案の概算要求を取りまとめ、一般会計の総額が117兆6059億円になると発表した。4年連続で110兆円を超え、過去最大を記録した。
膨張の主な理由は、年金や医療などの社会保障費、防衛費、そして国債費の増大による。
これに金額が明示されていない事項要求や補正予算を加えると、総額が120兆円を超える可能性がある。
厚生労働省は高齢化に伴う社会保障費の増加で、今年度予算を4500億円以上上回る34兆2763億円(29%)を要求した。防衛省は防衛力の抜本的な強化を進めるため、デジタル庁との重複計上分を除いた額で8兆5045億円を要求し、初めて8兆円を超えた。今年の7.9兆円から6000億円ほど増加したが、米国からの高額兵器購入や国産ミサイルの開発が予定されているが、まだ煮詰まっていない部分もある。
文部科学省は教員の処遇改善や働き方改革などへの対応として、今年度よりも6100億円余り多い5兆9530億円となった。これによって、教育の質の向上が大いに期待される。
国債費は国の借金である1200兆円の国債の元本と利息の返済に充てられる費用で、利子の上下によって、この負担は左右される。財務省は日本銀行の金融政策の転換で、長期金利が上昇し、国債の利払い費が増えると見込んでいる。
そのため、今年度予算よりも1兆9000億円余り多い28兆9116億円と見積もった。そのうちで利払い費は12.8%増加した。今後懸念されるのが利上げによる国債費増大で、低金利と金融緩和による国債発行が続くと、円安とインフレが進むので、さらなる利上げが必要となり、さらに国債費の比率が増大する。
今後、財務省は査定を本格化させ、例年通り12月下旬に当初予算案をまとめる予定である。今回の概算要求では、事業項目だけを記して金額を示さない事項要求が認められており、物価高騰対策の費用が後から上積みされる。このため予算編成過程で一段と規模が拡大する可能性がある。
国の主要な収入源は税金で、経済成長や税制改革によって変動するが、この2年ほど無理なインフレ政策によって、国民は困窮したが、大幅に税収が増加した。しかも、今年は財政収支も大きく改善する見込みである。
財務省は財政の健全化を目指し、防衛費をはじめ、万国博覧会、地方創生臨時交付金、公共事業、観光事業支援などの予算を編成過程で精査し、無駄を省く努力を続ける必要がある。