衝撃の岸田首相襲撃事件。

 2023年4月15日和歌山市の雑賀崎漁港で、岸田首相が選挙の応援演説を行おうとした時、爆発音が響き渡った。現場にいた兵庫県川西市の木村隆二容疑者(24)がパイプ爆弾を投げ込んだ。
 これは明らかに民主主義に対する暴力的な攻撃であり、断じて許されない犯罪行為である。警察官の機転で首相は無事だったが、警察官と漁師が軽傷を負った。木村容疑者は威力業務妨害容疑で現行犯逮捕された。
 本件は前年の7月に奈良県で発生した安倍元首相銃撃事件からわずか9カ月後に起きた。選挙制度や政治活動を脅かし、国民の意思を無視するもので、白昼堂々と公衆の面前で暴力が行われる社会は、国家安全保障にとっても深刻な危機である。
 インターネット上では、岸田首相や警察官への心配や応援の声が多数寄せられた。一方で政府や与党への批判や不満を表明するコメントも散見され、一部に木村容疑者に対して同情的な意見もあった。
 安倍元首相が暗殺された事件は、社会に大きな衝撃を与えた。世論調査では国民の約8割が「非常に残念だ」と回答し、犯人や背後関係者への厳罰を求める声が強かった。しかし、1年以内に元首相と現職首相が立て続けに襲撃されるという異常事態は、社会全体に深刻な危機感を抱かせるとともに、政治家や警察官への不信感や不満を増幅させる恐れがある。
 今のわが国は多くの困難に直面する。経済は長期間停滞し、その上に感染症対策に追われる中で、最近は物価の高騰が著しく、さらに貧困や格差が広がった。少子高齢化や地方の衰退が進んでいる。安全保障や宗教問題も切迫しており、政治と官僚の失態や不祥事が相次いでいる。
 これらに対して国内では不満や不安が鬱積している。岸田首相はアフリカ諸国への訪問を予定していたが、それを取りやめるべきだった。この危機的状況に対応するには国内にとどまり、陣頭指揮を取り、懸命に信頼を回復するために努力しなければならない。
 しかし、4月30日から5月5日まで、岸田氏はアフリカ諸国とシンガポールとの関係強化を理由に外遊に出かけた。これは国際社会への責任感を示す姿勢とも言えるが、同時に内政から目を背けていると思われても仕方がない。
 事件の背景にはわが国の選挙制度への不満があったと考えられる。それは些細な問題であるかもしれないが、木村容疑者は19年に国を提訴し、自分のブログやSNSで衆議院議員選挙の不公平さを訴え続けていた。
 彼は小選挙区制で得票数が多くても当選しないことや、比例代表制では政党名簿順で決まる点に反対していた。また国会議員候補者の年齢制限や高額な供託金についても批判した。
 今こそ国民の声なき声を傾聴すべき時だが。

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