22年度の食料自給率について。

 2023年8月7日、農林水産省は国内消費のために供給された食料がどれだけ国産で賄われたかを示す食料自給率(概算値)が22年度はカロリーベースで38%となり、前年度と比べて横ばいだったと発表した。
 食料自給率は国内で消費される食料のうち、自国で生産された割合を示す指標で、安定供給や国際的な競争力を測る上で重要な指標である。通常、カロリーベースと生産額ベースの二種類を使用する。
 カロリーベースは食料のエネルギー量を基準に計算し、生産額ベースは農作物の市場価格を元に算定する。22年度は前年と比べると、カロリーベースでは変化なく、生産額ベースは5ポイント低下した。
 この問題を6日付けの日本農業新聞は、生産額ベースで前年度を5ポイント下回る58%となったと報じ、穀物などの国際的な値上がりや円安で輸入価格が上昇し、輸入額が増えたのが原因だと解説した。国内では野菜の高騰が大問題になったけれども、国産農産物の価格は低調だったとみられ、生産コストを十分に価格に転嫁できていない実態が浮き彫りとなった。
 国内食品別の自給率(重量ベース)の上位5位を見ると、米99%、野菜79%、魚介類54%、小麦15%、大豆6%の割合であった。生産額ベースは米99%、 野菜79%、果物64%、卵63%、 魚介類54%を示した。
 これらの資料からも理解できるが、昔からわが国は米と野菜の自給率は100%である。しかし、スエズ運河での船舶の座礁、タンカー事故、ウクライナ戦争など何かの非常時に今にも列島中に食料不足が起こりそうな危機感を盛り上げるのは、いい加減にしてもらいたいと思う。
 自給率の割合の高い品目は、国内での生産量が多く、輸入に頼らないものが多い。一方、小麦や大豆などは、国内生産量が少なく、輸入に大きく依存する。今後は国産農産物の需要拡大や輸入品への依存度低減などによって、自給率の向上が期待されるが、多くの課題が残っている。
 政府は30年度に食料自給率を生産額ベースで75%、カロリーベースで45%とする目標を掲げるが、いずれも目標値との差は大きく、達成は見通せない。農林水産省は目標達成に向け、引き続き引き上げに取り組むとしているが、本当に真面目に取り組む気があるのかどうか疑わしい。
 戦後のどさくさの中で全国民がひもじい思いをした1946年度のわが国の食料自給率は、88%だった。ところが、その後ゆるやかに下がり始め、平成時代に入ると50%を割り込み、2000年代は40%前後でほぼ横ばいに推移した。
 15年は39%、17年には38%まで低下した。この時点で政府は25年までに45%へ引き上げる目標を掲げたが、もはや目標達成は絶望的である。自給率の回復に向けた努力の痕跡が見えない。

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