イスラエル国連大使の言動について。

 2024年5月10日、イスラエルのエルダン国連大使はパレスチナの国連加盟を支持する決議案に反対するため、国連総会の壇上で小型のシュレッダーを使って国連憲章を細断した。
 この憲章は「国際の平和と安全を維持する」などの設立の理念や加盟国の権利を定めている文書であり、これを尊重することは国際社会の一員としての基本的な義務とされる。エルダン氏の行為は国際的な規範としての国連と国連憲章への深刻な侮辱と見なされる。 同氏は投票に先駆けた演説で、「あなたたちは現代のナチズムに国連を開放した」「イスラム組織ハマスによる将来のテロ国家に特権を与えようとしている」などと各国の大使らに向かって、イスラエル独自の主張と批判を並べた。
 そして、決議案を採択するのは、国連憲章を破壊していると反対の意を示すために、携帯用のシュレッダーで国連憲章の書かれた紙を細断した。イスラエルとしては圧倒的多数の相手に対抗する術がなく、過激な行動に出るしかなかったのかもしれないが、多くの人々がその行為を非難した。
 これに対して、国連事務総長のグテーレス氏は、イスラエルの度重なる横暴に怒りを感じたことだろうが、しかし、国連の反応は冷静で、素晴らしい外交の模範を示した。同日、ハク副報道官は加盟国大使による個別の言動にはコメントしないとしつつも、「今も昔も加盟国による芝居がかったプレゼンテーションはあった」と皮肉を込めて述べた。
 そして、ハク氏は国連憲章の冊子を手に取り、「国連憲章の理想は無傷だ。この組織が存在する限り、憲章も存在し続ける」と述べ、エルダン氏の行為がその価値を損なうものではないと大人の対応を示した。
 国連の対応は見事で、イスラエルとの正面衝突を避け、それとともに個々の加盟国大使の行動が国連という国際組織の基本的な価値を揺るがすものではないというメッセージを送った。
 同日の国連総会では、パレスチナの国連加盟を支持し、安全保障理事会に再検討を求める決議案が採択された。わが国を含む143カ国が賛成し、反対は米国やイスラエルなど9カ国にとどまった。
 この決議の採択は、4月の国連安全保障理事会で、パレスチナ加盟を勧告する決議案に米国が拒否権を行使して否決されたのを受けて行われた。また採択の結果はガザ地区を含むパレスチナ自治政府の正統性を高める意味を持つとともに、ガザでのイスラエルの非道ぶりがあっても、イスラエル支持を続ける米国への圧力にもなる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?