産後、搾母乳を4ヶ月半続けた話。

この記事は、産後に直母がうまくいかなくて、それでもすぐ完ミに切り替えるのではなく、搾乳でできるだけがんばってみようと考えている方に捧げたい。

直母ではなく搾乳でなんとかしようとするのは無謀と思われがちだが、私の場合は生後4ヶ月半まで搾乳で母乳をあげることができた。ただ条件(後述)が揃っていたこともある。あくまで「こんな例もあるよ」という個人体験談なので、軽い気持ちで読んでいただきたい。

前回の記事で書いた通り、産後トラブルで出産の翌朝に転院し、赤ちゃん(以下、娘)と数日間離れることになった。娘は産院で預かってもらえたため心配はなかったものの、最初の数日間の食事はミルク。ごくごく飲んでいたそうだ。

ちょうど転院先から戻ってきた頃におっぱいが張り始め、助産師さんのマッサージのおかげで初乳が出た。産院で借りた授乳ポンプにかき集め、哺乳瓶で娘に飲ませることができた。

しかし、傷口にはまだドレーンが入ったまま。とてもじゃないが痛くてまともに座れない。円座ですら傷口が引き攣れるように痛む。なんとか編み出した方法は、産院のU字型の椅子の上にタオルを分厚く敷いて、さらにできるだけ背もたれに寄りかかったリクライニングの姿勢を取るというものだ。

なんとか座っていざ授乳と構えるも、娘は最初の数日間ですでに哺乳瓶に慣れてしまっている。吸わないと出てこないおっぱいに怒り爆発、全力で泣きわめく。首の座っていないふにゃふにゃの新生児を抱えながら右往左往しているうちに傷口の痛みが強くなり、ギブ。5分が限界だった。

まずは自分の回復が先だと悟り、入院中は授乳練習はほどほどにして授乳ポンプでの搾乳を続けることに。退院後も授乳体勢を取るのがしんどかったため、しばらく搾乳でがんばるしかないか……と覚悟し、ピジョンの電動搾乳器をメルカリで購入した(洗い替え用に部品は二つ購入)。

ちょっと脱線。
退院後になぜ完ミに移行しなかったのか?
その理由は、乳幼児突然死症候群(SIDS)が怖かったからだ。以下のサイトにあるように、生後3か月前後に多いと言われている。

SIDSはさまざまな悪条件が重なったときに発症するとされており、そのリスクを下げる一つとして「母乳育児」が推奨されている(厚労省HPより)。
他のリスクは可能な限り排除していたが、なるべくならリスクをもっと小さくしたいと考えていたのだ。

そんなこんなで電動搾乳器を使っての搾母乳生活がスタートした。
娘が寝れば、次の授乳に備えて搾乳。
暇さえあれば搾乳……(取れた母乳は冷蔵庫で保管した)。
心を無にして、もはやホルスタインになった気分で臨んでいた。

そんな生活を続けてみて、見えてきたメリット・デメリットは以下の通り。

【メリット】
・搾母乳・ミルクともに飲ませる量が明確に分かるので、「足りてないのでは?」と心配しなくていい。
・形はどうであれ、母乳成分を飲ませることはできている。
・詰まっていそうなところをほぐしながら搾乳できるので、乳腺炎になりにくい。
完母では乳アレルギーを発症するリスクが高まると複数のサイトで目にしていたので、ミルクをあげられている安心感がある。

【デメリット】
・「少しだけ飲ませたら泣き止むはず!」というときもミルクを作る/搾乳する必要がある。
・哺乳瓶や搾乳器の部品など、洗うものが多い。
・上記を揃えるのに(メルカリで買ったとはいえ)お金はかかるし、もちろん別途ミルク代もかかる。
・なにより搾乳自体が面倒。
・自治体や産院でもらうパンフ、送られてくるDM、すべて母乳礼賛。「災害時も母乳なら安心! お湯や哺乳瓶がなくてもいつでもあげられる!」って、そりゃできることなら直母であげたいよ……。
※ただ災害時はストレスで母乳が出なくなるリスクもあるらしい。液体ミルクを常備しておくのがいいと思う。

なかでも母乳礼賛が地味にきつかった。1ヶ月健診でも医師に「できるだけ母乳続けてね」と言われ、しんどいなぁ……と思った。医師の言葉ももちろん分かる。ただ「辛かったら完ミでもいいよ」と誰かに言って欲しかったのだ。そんなことを新生児訪問で来てくれた助産師さんに相談する(愚痴る)と、意外なことを教わった。

「もう少ししたら赤ちゃんの舌も伸びてくるから、そしたら授乳しやすくなるはず。」

……目から鱗だった。
てっきり母親が根性でなんとかしないといけないと思い込んでいたが、娘も成長するのだ。口の使い方が上手になり、おっぱいを咥えやすくなるらしい。

実際、生後1ヶ月半を超えた頃から直接吸えることが増えてきた。娘の身体が少しずつしっかりし始め、授乳姿勢を変えられたことも大きかったように思う。
(授乳姿勢はこちらのツイートを参考にさせていただいた→https://twitter.com/ua_0802/status/1395567071149260800

とはいえお腹が空いているタイミングでは、すぐ出てこないおっぱいに怒り、哺乳瓶を欲しがって泣く。この頃になると搾乳のメリットを結構感じていたため
搾乳(哺乳瓶)→ミルク(哺乳瓶)→少しだけ直母→寝落ちさせる
というルーティンが出来上がった。

この時点で生後2ヶ月目に突入していた。そこで、まずは最初のゴールを「3ヶ月目が終わるまで」、次のゴールを「離乳食を始める前の4ヶ月の終わりまで」と決め、それまでは今のルーティンで頑張ってみよう(どうしても無理になったら完ミにしよう)と決めた。

途中で生理が再開し直母を拒否られたりもしつつ、なんとか4ヶ月目を迎えた途端、寝返りをするようになった。まだ首を持ち上げることができないので、うつ伏せになったらひっくり返さなくてはいけない。さらに吐き戻しが増えて身体洗ったりシーツ洗ったりとバタバタし、搾乳の時間を作ることがしんどくなった。

こりゃ無理だと悟り、搾乳を徐々に減らしていくことに。いきなり断乳は怖かったので、母乳外来で断乳マッサージをしてもらうことにした。母乳外来こそ母乳礼賛の本家本元という感じだが、「どうしてもまだ身体はおっぱいを作っちゃう時期だからね〜」と言われつつも、「もうちょっと頑張りなさい」なんてことは言わずに処置をしてくれた助産師さんに感謝したい。

結果、搾母乳は生後4ヶ月半まで(以降は完ミ)となった。この経験で感じた「搾母乳を続けるための条件」を列挙したい。

【条件】
・第1子かつ比較的よく寝る(手がかからない)子であること。
第2子や抱っこしないと寝ない子だったら「赤ちゃんが寝ているうちに搾乳」なんて時間も作れないだろうから、退院時点で即完ミに切り替えていたと思う。
・洗い物の多さを許容できること。
哺乳瓶は多めに、搾乳の部品は2つ用意しておくと少し楽になるかもしれない(メルカリに大感謝)。
・消毒は電子レンジでの煮沸消毒にすること。
産院ではミルトン消毒だったが、1時間以上薬液に漬けておくなんてとても無理だと悟った。

ただ正直、今はここまで頑張らなくてもよかったとは思う。母乳は確かに素晴らしいかもしれないが、娘は母乳よりもミルクにがっついて飲んでいたし(なんだかなという気持ちではあった笑)、搾乳をやめた途端に気持ちがすごく楽になったのだ。それだけストレスがかかっていた証拠でもある。

育児はともすると完璧主義になりがちと感じる。うまくいかないことに目を向けるよりも、どうやったら母親のストレスを減らせるか? を第一に考える方が、結果的に赤ちゃんの幸せにつながると思う。

これからさらにSIDSの研究も進むだろう。いつか、今の過剰とも思える母乳礼賛の空気が落ち着いて「母乳かミルクか」で悶々と悩むお母さんが減ることを願うばかりだ。


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