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チャックの話

そして僕は明日も、チャックを上げて家を出る。

なんで地域が面白いかというと。

いや、「おもしろい」だけでは言葉が足りないですね。

美味しい・自然が豊か・住みやすいとかはあるでしょう。

それは確かにある。

ある一定の貯蓄を持って移住すれば

それは理想の生活を手に入れることになるかもしれない。

でも、多くの人が言うように

ここはゆったりとした時間がずっと流れてるわけではないし、

むしろ地方は【せわしない】。毎日結構大変です。

必死だから。

海や山があるだけでそれが変わるわけではない。

最近は若くして地域に飛び込む挑戦者たちもいる。

彼は仮面ライダーやウルトラマンか?

そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

本物か?着ぐるみか?

僕は常に着ぐるみであってほしいと思っている。

本物なんていない。どこにもいない。

見たことない。

前にも書いた。

愛すべきは【チャックの付いたバレバレ仮面ライダー】である。

必死に戦って勝っても、あの怪人にも家族がいた。とか。

倒してくれて良かったけど、おかげであの角の壁壊れたね。とか。

結構言われるわけで。

またそれが聞こえる距離だったりするわけで。

それでもまた正義を信じて戦うときはチャックを上げて家を出る。

それくらいの強さがないといけない。

善悪がはっきりしていない世界の戦いなんです。

地域にあるのは安定や安住ではない。

決してない。

そうであれば、こんなに過疎化となるはずがない。

人が残れない環境や状況がずっと続いている。

ずっとだ。

でも僕はこの町が好きです。

諸先輩方が築き上げてきたこの町が好きです。

嘗て新卒一年生の若干18歳の僕は、

当時70歳を越えた尾鷲を築き上げた大先輩方のお酒のお供を

よくさせていただいた。

大変貴重な時間を共有させていただいた。

スナックのカウンターに座り、軍歌を謳う先輩方の横顔。

古き良き尾鷲の栄華を誇らしげに、雄弁に語る。

なんとも格好良かった。

あーなりたいと。

思った。

今、日本中の地域、地方が疲弊している中で、

都市部からの人の流出も実は始まっている。

さぁ生きるように働くとは?なんだ?

すでに東京にそれはないのか?

あなたの選択は本当に間違っていないのか?

地域には本当にあるのか?

みんな考えてる。

今、ここ地域にあるもの。

誰も勝てないであろう【過疎化・人口減少】っていう大怪人。

強大な敵だが、はたしてこれは本当に敵なのか?

突き詰めるとそんな疑問すら出てくる。

ちょうどいい感じの疲労感と達成感が残れば。

それはそれでって話もある。

東京になくて地域にあるもの。

あなたが戦うことができる強大な敵である「環境」と

いくつかの挑戦できる行政や企業が用意した仕組み「着ぐるみ」

僕は生まれ育った町で死ぬと18の時に決めた。

今もそう思う。

あの格好良かった軍歌を謳う大先輩のように。

この町の未来のために仕事ができるなら。

どんな着ぐるみでも僕は着る。

今来ている着ぐるみが破けて割けてボロボロならば、

縫ってまた着よう。

ウルトラマンの着ぐるみが縫っても縫っても破けるならば…

今度は仮面ライダーの着ぐるみを着よう。

今日も膝のあたりがちょっと破れてた。

でも大丈夫。

次のもちゃんとハンガーにかかってる。

そう。

そして僕は明日も、チャックを上げて家を出る。

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