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生きていると、慣用句を肌で体感するような瞬間に巡り合うことがある

ごきげんよう、ナガセです。

昨日の続きです

山頂まで行ってお参りをした後に

いつもなら適当にカフェ寄ったりして帰るんだけど、見たいものがあったんです。

これ。

伏見稲荷大社の公式サイトでは、「お茶屋」と書かれている場所。

ナガセは大層無学なので はるみつ って読むんだったかしらなんて思っておりました。

予想と全然違います。
かだのあずままろ。
絶対噛むわ。
「ま」一つ余計に言うわ。

万が一クイズ番組で、賀茂真淵、本居宣長あたりはヒントもらったりすれば出てくる可能性がわずかにありそうだけれど、平田篤胤とこの人はもう確実に無理。
見覚えが全くないとはいわんけど、学生時代も
「なんやっけ、この人なんて読むんやっけ」
って眉根を寄せていた気さえする。

おっと、閑話休題。

  • 重要文化財のため、通常時は非公開

  • 年に数回は、こうして公開されている

と説明に立っていらしたスタッフの方が教えてくださいました。

「どちらから来られましたか?」
「す、すみません、京都府在住です……」
うろたえて、雑な人狼みたいな返事したのは内緒である。

棟方志功の襖絵がどうしても見たかった!

以下、撮影禁止につき、伏見稲荷大社の公式インスタグラムアカウントより引用。
※瓜田李下の如く、スマートフォンはしまいっぱなしで見てました。

毎日眺めるには迫力がありすぎて落ち着かないかもしれないと感じたけれど、いやー、でもこれが家にあったらいいよなーと妄想してしまった。

大正時代のガラスだから、表面がちょっと歪んでてうちのガラスもこういうのにしたいなあと思った(なお、家を建てる予定は全然ない)。
あれ好きなんよね、表面がちょっとだけゆるく波打っているような感じで。

脱線するけど、鳥居ってこうやって文字入れられてるんやと思ってしげしげと眺めてしまった1枚をついでに。

2階があった

親切なスタッフさんが2階もどうぞと教えてくださって、わりと急な階段をギシギシ登ってみると、開放的で天気も相まって風が気持ちよく吹き抜ける空間。

この畳は入って良いスペースなのか? ダメって書かれていないってことは大丈夫なはずだけどと恐る恐る踏み入る。

床の間に棟方志功のポスターがあって、思わず真正面に正座してしまった。
わたしは絵心をさっぱり持ち合わせていなくて、こう、笑いに持っていけないタイプの画伯なんですわ。
可愛げが、ない。
いいなあ、和室。
起きて半畳寝て一畳っていうくらいだから、うちにも畳無理やり突っ込もうかなあ。
ソファより寛げそうな気がする。

そうして何となく左を向くとそのまま窓というか、ガラスはなくて、総天然色の景色が飛び込んでくる。
敷地の端の方でちょっと離れて見えていたいくつかの屋根は、別に珍しい作りでもない。
わざわざ京都のそれっぽさを演出するような建物もそこにはない。

ただ、目の覚めるような鮮やかな新緑と階段のようにも見える屋根の瓦が連なって、とんでもなく美しい光の反射がその枠の中で溢れかえっていた。

あっけにとられ、呼吸が出来なくなる。
甍の波ってこういうことだったのか。
息を呑むって、今みたいな状況で本当に息を吸いっぱなしで吐き出せなくなるからだったのか。

このなにもない2階の部屋は、景色を切り取って収めるために完璧な余白として存在しているのか。

更に顔を動かして、床の間を背にして座り直す。

その位置からは中庭にあたる部分が一望できる。
同じ緑のはずなのに、もう少し柔らかい光が射していて、手の届かない世界をぼんやり眺めているような感覚。

自分が今どこにいるのかわからなくなる。
僅かな衣擦れだけが、現実感を運んでくる。

何時間でもいられそうだけれど、帰らないとまずい。
見惚れて動けなくなる。

その後、その2階から見えていた中庭をぐるりと一周した。
いままで高いホテルに行っても
「ロビーが広いな、贅沢」
くらいしか思い浮かぶことがなかったんだけどさ。
今回のお茶屋を見て、ようやく肌感覚で余白の意義がほんの少し触れられた気がする。

そうなるとナガセの部屋、地獄みたいに物があるんだが。
そして、あんなにバシッと慣用句を味わう瞬間が生きていて降ってくるとは思わなかった。
本当に美しかった。
あれを一割も書き表せない自分の貧弱な筆力に絶望しそうになったけれど。

こないだ書いた

音程がきっちり合っている
しかし、正解から一ミリ解れた(ほつれた)歌声

なんかねえ、美術館や博物館へ行くと、もちろん実際には触ってはいけないのだけれど、どんな感触なんだろうかとつい手を伸ばしかける展示物があったりしない?
わたしだけかもしれないけど。

そういう、手を伸ばす途中で
「ああ、触っちゃいけないんだった」
と我に返って手を引っ込める。

そういう歌声になりたい。
伝わる?
(これ無理なのでは)

この先の生きていく時間に、一ミリ解れた歌声が欲しい

まさにこれ。
しかし、あの美しさが努力で得られるものだとは今は思えない。

難しい。
今のわたしには、おみくじよりもずっとずっと強い言伝に思えた。

今日も長くなった。
景色が美しかったことだけ覚えて、あと忘れてください。
じゃ、またね!


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