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愛のアーチケリー


※2023年11月5日「その後の履き心地について」を追記しました


はじまりはアーチケリー(出会い)

2020年12月初頭、Arch Kerryに出会う。それはSANTARIに出会うちょうど一週間まえのこと。

なぜだか示しあわせたかのように、その月にそれぞれが大阪でオーダー会を開催。Arch Kerryが第1週、SANTARIが第2週、たしかそんなスケジュール。告知を知って早々にどちらともに予約をした。

すでにホールカットモデルを展開していたArch Kerryが本命であり、その当時まだホールカットデザインをラインナップしていなかったSANTARIのオーダー会にまでなぜ予約を入れたのかは今となっては定かではない。

ただArch Kerryに出会い、そしてSANTARIに出会うことは、もはや必然であったろうことは確信して言える。

というのも、Arch Kerryの靴(現MTOモデル・新HAND MADE)を作っているのはSANTARIの中の人だからだ。

Arch Kerryのオーダー会でフィッティングサンプルに足入れさせてもらい、明らかにタダモノではないことは一瞬にして悟るも、どうもツマ先のアタリが気になりその旨を伝えると、Arch Kerryの中の人こと、清水川ディレクター(以下清水川D)に翌週SANTARIが来阪するので中の人に相談してみてはどうかと持ちかけられ、こちらもすでにSANTARIのオーダー会は予約してあったのでそれはちょうどいい、というのがそのときの経緯。

そう、仮にそのときまではSANTARIの存在を知らなくても、確実にSANTARIに出会うよう仕組まれていたのである。

そして迎えたSANTARIオーダー会。当時のラインナップには影も形もないホールカットの話と、Arch Kerryの木型の話でさんざん盛り上がった挙句にその日はそれでお仕舞い。ただ思うところがあって最終日にあわてて駆け込んでSANTARIローファーをオーダーしたのがことの顛末。

そう、さんざん清水川DにはArch Kerryの靴を持ち上げ、思わせぶりなことを言いまくった挙句に、結局Arch Kerryは買わなかったのである。

さすがにこれはひどいと思ったので後日清水川Dへ詫び状を書きましたですハイ。いつか必ずArch Kerryをオーダーしますから、と。

これはそんな約束の靴のおはなし。

誓いのShoehorn

その後は、ご承知のとおり、SANTARIホールカット4種が超新星爆誕してしまったため、ますます約束からは遠のき、迎えたちょうど2年後の2022年12月。

因縁の大阪オーダー会(2回目)

ふたたびArch Kerry大阪オーダー会が開催され、さすがに挨拶に伺わねば悪かろうと、Arch Kerryホールカットのカスタムプランをあーでもないこーでもないと思案しつつ、一方で上手いこと理由をつけて先延ばしできないものかとも考えながら(サイテーである)、一応のホールカット案を抱えて顔を出したところ、清水川Dから、いよいよArch Kerryがブーツ展開するという話を伺い、「あ、そっちのほうがよさげかも」と思ったのが今回の靴のはじまり。

というのも、すでに手持ちの革靴のうち2/3近くはホールカットで占められ、しかもSANTARIホールカットコンプリートもまだ道半ば、という状況だと、Arch Kerryのホールカットに着手できるのは一体いつになるのか、気の遠くなるお話しである。

そして、今回考えていたArch Kerryホールカットの仕様が、アッパー馬革・ライニング馬革という馬×馬仕様で、むしろブーツスタイルのほうが向いているのではないかと思ったこと。

というわけで、このチャンス?に便乗しない手はないと、大きく大きく舵を切って、今回の靴、Arch Kerry Vチップブーツへと至ります。


Vチップブーツへ続く道(長い)

とはいえ、当初からVチップブーツにしようと考えていたわけではなく、仕様決定までは結構難航いたしまして、清水川Dにはたいへんご苦労をおかけいたしました。(途中相当に煮え切らなかったのでかなりやきもきさせてしまったのではないかと思います。すみません)

今回Arch Kerryがサービスシューズ(&ブーツ)とチャッカブーツを展開する予定、というところから、そう言えば、たかはし自身はじめての本格革靴がティーンエイジャーのころ何も知らず分からずに購入したリーガルのミディアムブラウンのヌバック・チャッカブーツだったことをふと思い出したこともあって、チャッカブーツにトライするのもいいかも、という極めて安直な発想から踏み出したため、方針が全く定まらずに結局、なんやかんやとグダグダと優柔不断っぷりを発揮いたしまして、12月のオーダー会から年を跨いで、2月中旬コンセプト案提示、4月にようやっと仕様決定し発注と相成りました。

そのグダグダっぷりを少しご紹介しますと、やれプエブロのパープルを使ってチャッカーブーツはどうだろうかから、いやいやチャッカブーツじゃなくてVチップブーツでコレを生成りのホースバットでシームレスヒールにしてそこにガッツリとウロコを使うのだとか、奇天烈仕様ばかりの妄想妄言に、もはや出発点が霞んで見えなくなっており、振り返るとよく収集がついたなと感心するばかりです。(そしてその妄想の痕跡は全く残っておりませんですハイ)

最終的に清水川Dにお示ししたのは、『アッパーをネイビーの馬革、ライニングも馬革、ソールはコマンドソールのVチップブーツ』という仕様になります。字面だけ見ると至ってシンプル、そしてたぶん現物もシンプルな靴に仕上がるだろうことを想定して、お願いしました。

ちなみに、企画コンセプトは『All road Arch Kerry』、全天候型アーチケリーです。

Vチップ・チャッカブーツでアッパーをネイビー、コバ・ウェルトを黒色にし、配色はシックに抑えることで、ドレスコード的に、スーツスタイルは無理ですが、上はぎりぎりジャケパン・オフィスカジュアルの通勤靴ぐらいまでを射程とし、

ソールはコマンドソールにノルウィージャンウェルテッド、タウンユースとしては明らかにオーバースペックですが、アウトドアユースを出自に持つUチップの系譜であるVチップデザインと組み合わせることで、名実共にアウトフィールドにも対応可能な革靴を目指します。

またチャッカブーツ丈とすることで、通年を通して着用可能とし、上述のとおり都市から野外、 晴雨雪の全天候対応の多領域に使用可能な、アメリカ的道具主義・合理主義・実用主義的な革靴、というのが獲得テーマです。

仕様案より抜粋

こちらをコンセプト案として、最終的にノルウィージャンウェルテッドを全周スリットウェルトに変更して、仕様決定としました。

改めてArch Kerryというブランド、Arch Kerryというネームで靴を誂えることに想いを巡らせたとき、恥ずかしながらビンテージシューズについての知見も造詣もない私には、ビン靴という切り口で何かを、というのはおこがましいを通り越して噴飯ものにしかならないのでその線はハナのはじめからなかったのですが、ただ思うに、Arch Kerryの靴づくり、というのは単なる懐古趣味ではなく、古き良き時代の革靴のエッセンスを、現代において実用靴として昇華し具現化する、という風に私は捉えています。今回のコンセプトや仕様は、ライフスタイルの変化によるドレスコードの解体と再構築がなされている時流にあって、革靴の在り様、単なる様式化や、はたまた嗜好品や工芸品ではなくて、実用品としての革靴の美しさ、ということを意識しています。

という能書きをエラソーに垂れたのですが、やっぱり私のなかでArch KerryといえばVチップ・アルゴンキンデザイン、というのが大きいですね。


Vチップブーツ各仕様

さて、前置きが長くなりましたが、各部・各仕様を細かく見ていきましょう!

ライニング:ホースレザー

えっ、いきなりそこかよ、、、と思われるかもしれませんが、実はこの靴のキモはライニングが馬革、というところなのです。

馬革ライニング

某トレーディングポストオリジナルの革靴で、ホースレザーライニング仕様のモデルがありまして、ひょんなことから足入れさせてもらう機会があり、その柔らかなフィット感にいたく感銘を受けまして、かつ、その時にズドーンと脳天に閃いたのが、この馬革の柔らかさをArch Kerryの靴に奢るともっととんでもないことになるに違いない!ぜひやりたい!やってみたい!でした。

左から、馬・鹿・山羊・猪・豚・牛の生成り
馬革ライニングですが他の革に比べて肌触りが吸い付くようにモッチリでソフト

ご存知の方はご承知のとおり、Arch Kerryのフィッティングは今日日のタイトフィット志向とはおおよそ真逆の、足を優しく包み込む履き心地が印象的です。部材にフェルトを用い、足あたりがとても柔らかな作りになっているArch Kerryですが、ここから更にライニングに馬革を奢ることにより、もう一段上の高みを目指すというのが、この靴の企画の原点になります。

なお、使用した馬革は美肌白肌なので、表革とのコントラストから悪目立ちしないように、外からは見えないように履き口周りや外羽根はアッパーと共裏にしてもらっています。

履き口は共裏

アッパー:ホースハイド

こう言うと身も蓋もないのですが、取っ掛かりは前述の馬革ライニングの副産物です。中も馬なんだから、外も当然馬だろ、という超絶安直な発想です。ただ私が残当な捻くれ者でありまして、「馬革と言えばコードバン」ともいうべきコードバンに対する愛が皆目ありません。なのでそれ以外の馬革、ということで当初はエンジニアブーツによく用いられるホースバットを想定しておりました。

例によって悪い癖wを出して、自分で探してこようかと思ったのですが、ど素人が中途半端に探すより、ここはプロにおまかせ、という感じで、清水川Dにブン投げさせていただきましたところ、新喜皮革のホースハイドでとても良い色のネイビーを見つけてきてくださいました。こちらのホースハイドは革ジャンにも使われるようなのですが、大変人気があるそうで、たまたま上手い具合に在庫がある、ということで速攻で押さえていただいた次第。

サンプルですが左上あたりは水で濡らしたり
クリーム入れたり落としたりしてかなりイジメテストしてます

結果、共にハード系レザーたるコードバンでもホースバットでもなく、ソフトなホースハイドを用いることになり、つまりはライニング用馬革と相まって、思いがけずソフト&ソフトな組み合わせとなりまして、清水川Dをして『アーチケリー史上最高に触って気持ちいい靴』と言わしめる靴が爆誕したのであります。

モチモチ触感

いつものとおり自力で探しておれば、間違いなくホースバットを求めていたでしょうから、瓢簞から駒というかべきか、こういうのってオーダーメイドの醍醐味だと思います。まことに仕合わせなことであります。

あ、念のためですが、こちらのオーダーにあたって馬革は全量たかはし買い取りの持ち込み扱いでお願いしております。

ウェルト:全周スリットウェルト

企画コンセプトでは「全天候型アーチケリー」というのを謳っていたので、ワタクシ的には割と目玉な仕様として【ノルウィージャンウェルテッド】を当初案としてお示ししておりました。

SANTARI Facebookより「ノルウィージャンウェルト」

単純に中の人のSANTARIがノルウィージャンをやっていたので、これまたかなり安直に仕様要求したのですが、蓋を開けてみるとノルウィージャンをやるにはハンドソーン仕様になるということがわかりまして、おおむね予算との兼ね合い、言い訳Arch Kerryはグッドイヤーウェルトのイメージ(なお、Arch Kerry=グッドイヤーというのは清水川Dご自身もブログでそのようなことは述べられているのであながち的外れではないはず)、という理由から、最終的に【360°全周スリットウェルト】にしております。ぶっちゃけおサイフと妥協し屈しました(涙)

今回の場合は装飾性ではなく過剰な機能性のアイコンとしてノルウィージャンにしようとしておりましたので、仮に選択していれば、押し出しの強い太糸のチェーンステッチ、ではなく、細めのシングルで目立たないように収めようとは考えておりました。それとストームではなくスリットにしてあるのはその名残ですね。それにしても無念でなりません(ちーん)

スリットウェルト

また、Arch Kerryの特徴的な張り出したコバ仕様、いわゆる半イカソールについては、清水川Dと相談し、後述のコマンドソールとの兼ね合いで外観が間延びしかねない、とのことから、ノーマルコバにとどめています。

Arch Kerry Instagramより「半イカソール」

ソール:ハーフコマンド

こちらも企画コンセプトとして「All road Arch Kerry」を謳っておりましたので、悪路対応可能なようにと当初仕様からコマンドソールを指定しておりました。

結構悩んだのが、オールラバーコマンドにするかハーフラバーコマンドにするかです。コンセプトの全天候型を貫徹するのであればオールラバーなのですが、前述のとおり最終的にウワモノがノルウィージャンからスリットウェルトに変更になったり、現実的には野外フィールドで履くことはまずなくタウンユースに終始するだろうこと、アッパーとソールのバランス、こと後述のベンチマークモデルの影響もあってハーフコマンドにしております。

ビブラム・ハーフコマンドソール

なおオールソールせずに交換可能なようにハーフラバーは出し縫いをしない接着タイプにしてもらっています。

デザイン:Vチップ(チャッカ)ブーツ

Vチップブーツ、もちろんArch Kerryの既存デザインにはありませんので、新規にパターンを起こしていただいております。

清水川Dデザイン

なにもわかっていない素人の恐ろしさを存分に発揮できた(大汗&苦笑)のではないかと思われるのが、すでに短靴でVチップ・アルゴンキンデザインがあるから、あとは履き口を適当に適切に伸ばせばブーツになるだろう的な発想で、ここでも割と安直にブン投げました。(しかも元々チャッカブーツやるって言ってたし)

投げられた清水川DもDで、「あ、Vチップ(短靴)あるからできますよ〜」っていうノリだったし、です。

ただ、製造先の通称:奥浅草アクアリウムで、SANTARIの中の人こと製造人のタテシューズの舘さんと、清水川D・私とで最終の詰めで三者面談(プラス立会人にも来ていただいていたので正しくは四者面談、あ、同じくSANTARIの中の人の藤山さんも入れると五者面談か)したときに、舘さんがなんともいえない顔をされていた気がしたのですが、きっと気のせいではなかったのではないかと今更ながら思うのでありました(理由は後述)。

2023年3月某日の秘密会議

全体のデザインについては、私の方からは、Arch KerryとしてスタンダードなVチップブーツにしてほしい、とだけお願いしました。

意図としては、ブランドとしてこれからブーツモデルを展開していくタイミングなことや、仕様内容からワンオフで終わらせるのはもったいないと思われたので、リファレンスモデルとして出来上がってくれれば良いな、という考えからです。

使用した素材(馬革)こそ、奇を衒っていますが、そうでなければ、極めて正統派な靴になっております。事実、仕上がりは相当な完成度だと思います。

それもそのはずで、パターンデザインが出るまでは喧々諤々、例えば、アイレット数なんかは6穴だとデザインとして重いのではと2穴案が出たりもしておりました。

そして最終仕様決定後も、(少なくとも)履き口の丈については、複数回修正が入っておりまして、清水川Dと舘さんで相当揉んでくださったようです。本当にありがとうございました!

ブーツは丈感が命!

個人的に「ブーツは丈感が命」だと思っています。最後の最後まで手抜かりなく丁寧に取り組んでいただいた経緯から、この段階でその完成度の高さを確信しておりました。

フラスコ型のヒールカウンターデザイン

ハトメ:第一アイレットのみ外ハトメ

こちらも例によって、第一アイレットだけ外ハトメにしてもらっています。しかもSANTARIホールカットシリーズで用いている小さな金色のハトメ、ズバリそのものです。靴単体で見れば、ブーツなので大きいハトメにしてもよいのですが、なんと申しましょうか自分のなかではシリーズものなんですよね、ブランドは違えども。なので完全に自己満足ですハイ。

ちょっとしたアクセントに!

ラスト:スプリットラスト+乗せ甲

Vチップアルゴンキンなので、使用したラストはスプリット専用に起こされたスプリットラストです。当然といえば当然なのですが、あえて項立てしているのにはちょっとした理由があります。

Arch Kerry公式HPより

よくよく考えると当たり前といえば当たり前、なのかもしれないのですが、ノーマル木型であるアーチラストに比べて、ほんの若干ですがスプリットラストのほうが捨て寸量が多いんですよね。またVフロントを綺麗に出すためにトウに稜線が立っており、これも若干でしょうが、つま先上部の空間量も大きいはずです、たぶん。

Arch Kerry公式HPより

実は私、足の親指がデカいのか長いのか、はたまた歩き癖なのか、歩行時に親指の爪先端が靴に干渉するきらいがありまして、冒頭の話のそもそも初っ端も初っ端イチバンのはじめにArch Kerryのオーダーを見送ったのは、このアタリが気になったから、というのがあります。

Arch Kerry公式HPより

今となってはSANTARIですでに3足作成しているのでそのあたりの対処法は中の人たる舘さん&藤山さんと共有しているので、今回はプラス乗せ甲をしてもらっているのですが、そもそもVチップじゃなくて、仮にホールカットにしていたとしても、このスプリットラストを使用するというのは有力手だったということです。もちろんスプリットの稜線がアッパーに浮かんでくる可能性があるそうなのですが、それはそれでカッコイイ気がしますし、むしろやってみたい!

話が長くなりましたが、何を言いたいかというと、ハンドメイドラインだとこういう対応やラスト変更が可能だということなのですね。

Arch Kerryはこのほかにスペードソール用にトウをアーモンドトウにしたラストもあります。

もちろんそれぞれ専用ラストとして製作されているわけですが、こういうところをうまく活用して、意外な使い方をしてみるのもオーダーメイドの楽しみ方、でもあります。(もちろんできることとできなことがありますのでフンベツは必要です)

なお、Arch Kerry・SANTARIとも自分専用ラストの新造も対応されていますので、沼というかドブにどっぷり浸かるのもオツですね(白目)


はじめてのアーチケリー(完成)

それではいよいよ完成品の仕上がりを見てまいりましょう!

まず化粧箱です。そうArch Kerryといえば、モデル・型番などに用いられているこだわりのフォント&ハンコですね。これが良い味を醸し出しており気分が否が応でも盛り上がります。こういうディティールをあだや疎かにしない、ということもArch Kerryが支持されているポイントなのではと思います。

ラベルのブランドロゴと印字がなんとも良い雰囲気

ただ受取時に外箱も含めてブーツにしては随分と小せえなぁ箱だなぁ、もしや間違えて別の短靴が送られてきたのではないかと若干訝しみながら開封したのですが、まぁ上手いこと納まっているではありませんか(笑)

みっちりと納まっておりました

Arch Kerryとしてはブーツはこれが初なので、ブーツ専用の資材なんぞあるわけもなく通常の短靴用の箱だったわけですが、清水川Dいわく「サイズ5.5だからなんとかなった」とのことでした。しかしながら上手いこと納まったのは間違いなくショート丈であることの証左かと思います。実物寸法的にも当初コンセプト通りで使い回しは良さそうな予感がします。

さぁそして現物です!
ぜひ前項の清水川Dデザインとも比較して見ていただきたいのですが、どうでしょうか、この再現度の高さ!そして何よりカッコイイ!(サイズが5.5なのでノーズがデザインより短いぐらいですね)

Arch Kerry ALGONQIN boots

清水川D・舘さんをはじめ、なぜか某店四丁目の中の人からも無茶苦茶カッコイイという事前情報と、チラ見せ画像どころかインスタLive動画さえ見ておりましたので心構えはできていたのですが、やはり実物のもつ質感や存在感を目の当たりすると自然と不自然な笑みwが溢れてきますね。

異口同音に大絶賛な理由については、身贔屓を差し引いたとしても、見た感じのバランスがとても良い按配なんだと思います。といいますのも、現物を手に取ってイチバン最初に感じたことは、コマンドソールが意外にすんなり収まっている、ということです。

厚みはダブルソールぐらいある?

見ての通り、底だけをみると、ハーフコマンドとはいえ、かなりゴツくてイカついのですが、靴全体としてみるとさほどの違和感はなく、むしろコロンとしたArch Kerry独特のフォルムによって中和されて、どこか可愛らしさすら醸し出しております。

どことなく可愛らしい

ちなみに仕上がった靴はどこからどう見たってArch Kerryの靴、なのでもはや差し障りはないでしょうから種明かしをしますと、今回のVチップブーツ製作着手にあたって清水川D・私とも一致してベンチマークとしてあげたのがAlden別注バリーラストVチップチャッカブーツです。

ですのでエッセンスは随所に見て取れるものの、全体としてはやはりどこからどう見てもArch Kerryなのは流石!だと思うのです。それもこれもArch Kerryの名だけでなく、靴作りとしての実のほうもしっかりと積み上げてこられた賜物ではないかと深く感じ入る次第です。

紐をLiricheの江戸uchiにしてみました精悍

そしてノルウェージャンの夢が潰えてしまったなか、もはや唯一の売りとなってしまった、アッパーのホースハイドレザーですが、牛革スムースとは全く趣が異なり、ワイルドなテクスチャーをしております。やはり運動量の差なのでしょう、どことなく筋肉質な印象を受けます。だからと言って硬いわけではなく、しなやかというのでしょうか、適度な弾力と引き締まった革質という感じがします。このあたりがコードバンともホースバットとも違う部分ではないでしょうか。

また今回使用した新喜皮革製ホースレザーはカラーはネイビーということなのですが、色味は紺や青というより、ペトロールブルーのような緑掛かった色合いでして、特に光源によってかなり色合いが変わります。タンニン鞣しとのことで経年変化も期待できるのではないかと今から楽しみです。

ネイビーやブルーというよりペトロールブルーっぽい

あ、ちなみに無茶苦茶クリーム入ります(爆)

デリケートクリームを追いクリした結果(汗)

はいてみたアーチケリー(感想)

結論から申し上げると、実は納品後すぐに靴磨き選手権大会2023 1st ROUND OSAKAがありまして、慣らし運転ならぬ慣らし履きもなく、いきなり1日ぶっ通しで履いて、歩き回ったり、脚立を乗り降り(えっ)したりしたのですが、足に一切のダメージがなく驚きでした!いきなり快適シューズ!

会場でやりたい放題(違)しても無問題でした!!

履いてみた感触としては、「(コマンドソールなので)底、分厚!」デス。どういうことかというと、馬(ホースハイド)x馬(ライニング)のおかげ、上物は軽い&柔らかいせいで、アッパーの感想は吹っ飛ばして足の感触はとにかく底のゴツさだけにフォーカスされます。なんだか分厚い底だけを履いているカンジです(笑)。履き心地という観点からするとたぶんかなり極端な仕様になっている予感がしますね。

ズドーン!

逆にいうと、それ(上物を意識させない)ぐらいアッパーの足なじみは良い、ということだと思われます。

実用面では同じものを牛革仕様で仕上げるより軽いはず、なので、こと革の使用面積が大きいブーツタイプとしてタウンユースであれば利点として大いに享受できると思います。また特にArch Kerryの場合芯材以外の中材にフェルトが入っているので、履きこむことでより柔らかくなりすぎる(ヘタる)、という心配もないでしょう。

今回の馬革Vチップブーツの履き心地ですが、くるぶし丈でしっかりと足首をホールドされていることと厚底から来る安定感、一方で足回りは程よい緩さで保持されているので、不思議な快適さがあります。

ライニング馬革、については、前述のとおり、ソールの厚さ・ゴツさとのコントラストに完全に吹き飛ばされて、劇的ビフォーアフターみたいな感想は、、、ない、というのが正直なところです。ただそもそもワタクシこれがファーストArch Kerryで比較すべきライニング馬革でないArch Kerry靴を持っていないですし、もっと言うとArch Kerryブーツは現時点ではコレしか世の中に存在しないので、今のたかはしには純粋比較は不可能です。なので想像で語るとするならば、

まず柔らかさ、だけでいくと、キャンバス生地 ≧ 馬革 > 牛革 な印象です。
ただしキャンバス生地仕様は腰裏は牛革なので、ブーツだとまた違ってくると思います。というか馬革ライニング、ブーツとの相性が非常によろしいかと思われます。

逆に、Arch Kerryのキャンバス生地仕様は、相当によくできている、とあらためて感じました。

あ、でもでも触り心地は極上です。馬革ライニング。

そしてこれぞ!ジ Arch Kerryな手書きのライニング表記

なおホースハイドとの組み合わせという観点からすると、ホースハイドの柔らかさをスポイルしたくなければ、キャンバスor馬革、馬革のテクスチャだけを採用し履き心地はシャキッとしたければ牛革、でしょうか。

というわけで今回のようなホースハイドx馬でいくなら、ソールはシングルソール(でより返りの良いハンドソーン)か、スポンジソールとかがバランスが良い気がします。特にスポンジソールなんかにすると異次元実用革靴に確変しそうな気も。なので短靴仕様で、いま流行り?空白となっている?のスニーカーのちょい上ドレスシューズ下のレンジのオサレ実用靴としていかかがでしょうか?>清水川D

ちなみに清水川Dからは、馬革ライニングはレギュラー化(予定)、ホースハイドは全丸買取で対応可(要在庫確認)と伺っていますので、気になる方は直接ご相談してみてくださいね!!!

プレメンテはTORCHの松田さんにお願いしました!男前

【追記】その後の履き心地について

その後の感想ですが、馬革ライニング、やはり足あたりは良いです!

特にブーツだけに履き口周りの柔らかな足なじみの良さはすこぶる快適であると言えるでしょう。一般的な牛スムースのようにつるんつるんというわけでもなく適度なグリップ感もあり、ライニング材としてオススメですね!


最後になりましたが、早3年に迫ろうかという約束をようやっと果たすことが出来、そして何よりこうやって素晴らしい靴に出会うことが出来たことに、清水川さんには改めて御礼申し上げます。大変長らくお待たせいたしました。ありがとうございました。

舘さんには直接何足も靴を作っていただいているのですが、今回清水川さんというファクターが入ることで、どうなるんだろうかと楽しみでした。(プロに対して失礼極まりないのですが)正直に申し上げてその完成度の高さに脱帽です。あらためて清水川さんの識見そして革靴への情熱、舘さんとの阿吽の呼吸、というものが発現・具体化された靴、だと感じています。ほんとイイ靴、良いブランドです、Arch Kerry(ハート)。

また舘さんには、最終最後の帳尻を色々と合わせていただいたのではないかと思います。毎度毎度すいませんですハイ。

そして、この靴の誕生に関わってくださった皆様に、厚く熱く御礼を申し上げます。ありがとうございます。

人間には暖かい靴が必要なんだ。
サカエとアツシ愛のアーチケリー

於・靴磨き選手権大会2023大阪会場


あとがき

今回のVチップブーツ、あまりの出来の良さ・カッコ良さに清水川Dご自身も自分用にオーダーされたいと随所でしきりに仰っておられました。ぜひ某コードバン#8でやっていただきたいです!想像しただけで垂涎モノですね。

そして完成の暁には、うちのネイビーブーツと、姉妹艦ならぬ兄弟靴として、2人して内股で頑張ってなんちゃってシューサークル写真を撮りましょう!楽しみにしております!

待ってます!

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