失われた音楽を発見したい

――歴に対して知識が浅すぎる――

 こんにちは、Lyzine(リジン)です。この名義は私、理人がDTMをやるときにカッコつけるための名義です。やっぱり作曲者名に「理の人」はちょっとダサいので。

COMPOSER:Lyzine
COMPOSER:理の人
このカッコよさの差、わかる?


 それはともかく、今回はようやく音楽の話をします。とはいってもたった10年程度しか音楽をやっていないので、専門的なガチ解説はできませんのであしからず。

 この記事はCCS †裏† Advent Calendar 2023の12月6日の記事です。
 CCS †裏† Advent Calendar 2023 - Adventar

 前日の記事はこちら。
 【CCS新説シリーズ】抹茶さん=神説【1053】 - ほむのアトリエ (hatenablog.com)

 CCSでは先輩方によって1053についての研究が進められています(??)。

これは「1053進行」です。


次の日の記事はこちら↓
男装barに行ってきました - o_joh4869の日記 (hatenadiary.com)

脳破壊される先輩が見れます。


 ロストテクノロジーの発見とは言ってもやることはシンプルで、自分が過去、それも今以上に音楽理論を知らなかった頃に作った曲をいくつか分析してみて、「コイツやってんなぁ」とか、「どうやってこんなの作ったんだろう」みたいなことをしたい、というだけの自己満足記事になります。
 DTMや作曲の知識があればあるほど面白い記事になると思いますが、そういう知識が全く分からないという人でも読めるように、基礎的な解説も含めます。

 ぜひみんなもDTM、やろう。
 失敗しても大丈夫。こうやってセルフでネタにできるんだから。


 なお、発掘対象には私が(名義は何にしろ)どこかで発表した曲もしていない曲が多く含まれます。


1. 前提

 まず自分の過去を振り返るために、私の音楽活動の略歴をば。
 私が小学生当時、音楽に興味を持った一番最初のきっかけは「太鼓の達人」です(さすが小学生)。特にLindaAI-CUE氏による楽曲シリーズ、いわゆる2000シリーズが特に好きでした。

 小5のときに運命の出会いがありました。それはNintendo 3DSソフト「大合奏!バンドブラザーズP」です。

大合奏!バンドブラザーズP (nintendo.co.jp)

 このソフトは基本的には音ゲーですが、かなり充実した作曲機能がついていたんですね。しかも技術の発展により、ボーカロイド®に似た合成音声に歌わせる機能までついていました。そして作った曲が勝手に音ゲーの譜面に起こされ、実際にプレイすることができる……

最高じゃねぇか!!

 当時、WiiUソフト「スプラトゥーン」が発売だったか発売予定だったかのホットな時期で、「Splattack!」がコラボ的な感じで収録されていました。
 WiiUがなかったのでスプラトゥーンを買うつもりはなかったのですが、その再現度の高さ、バイヴスの上がるシンセサイザーのサウンド。それに感動した私はバンブラPを購入することを決意したのです。ちなみにこのバンブラPというソフト、そんじょそこらのPC向け作曲ソフトよりも高性能です。

 はじめは音楽の教科書に載っている楽譜を書き写して再現したり、理論のかけらもない実験的な音楽、そしてLinda氏に影響された音ゲー曲もどきを量産したりしてました。さすがにこういうのは分析するまでもありませんのでやりません。

 ということで変な歴史を語り切ったので、ここからが本題、ロストテクノロジーの発見に向かいましょう。

2.分析してみよう

1.メジャーコードを順番に並べただけなのに

【詳しくない方向けの前提知識】
 音楽で最も重要な3つの要素はメロディー、ハーモニー、リズムであるというのが通説です。そのうちのハーモニーの部分を支える重要な要素の一つに「コード」があります。コードとは「和音」のことで、たくさんの音を同時に鳴らすことを言います。ピアノの鍵盤を片手で3つか4つ一斉に押している場面を思い浮かべてもらえればと思います。
 コードはたくさんの音を組み合わせるのでその組み合わせはほぼ無限通りです。詳しい話をしすぎると本題からそれるので割愛しますが、明るい響きの物は「メジャー」、暗い響きの物は「マイナー」みたいにある程度のグループ分けがあり、そのコードの中心となる音(英語名)をひとつ代表として、グループ名と代表の音を組み合わせて呼びます。以降変なアルファベットの羅列が出てきたら、曲中でコードが出てくる順番、いわゆる「コード進行」のことです。

 最初に分析する楽曲は、私が初めてまともに機械音声機能を使って、歌詞まで頑張って書いて出来上がった2018年制作の楽曲です(多分制作自体はもっと昔ですが、最終更新日しか分かりませんでした)。2023年現在、どこにも公開していません。
 コード進行を見直した結果、いろいろ怪しいものを発見しましたが、とりあえず今回はサビ部分のコード進行だけを見てみましょう。

サビ部分、問題のコード進行

C D E/B F/C G/B A/C♯ B C F/C A/C♯

 はい。コード進行理論を少しでも知っている人、もちろん私も含めて、が見たら一発で頭悪いって分かりますね。本当に当時の自分は何を考えていたんだろう。
 
多分、当時の私はまだコードを使うことを学んだ段階であり、「メジャーコードは明るい」というだけの知識を持って、すべてをメジャーコードにしてしまったのでしょう。

 どういうこと?という方もいると思いますのでここは少し解説をば。
 まず前提として、「明るい曲だからメジャーコードだけ使えばいい」という考えは根本的に違う、ということが重要です。
 音楽理論の言葉に「ダイアトニックコード」というものがあります。ダイアトニックコードというのは、その曲のスケール(ハ長調などの調のこと)に最も相性がいいコード群を指します。例えばハ長調ならC、Dm、Em、F、G、Am、Bdimですね(間違っていても厳しい指摘は怖いのでやめてください)。
 ダイアトニックコードだけで曲を作れば、いい意味で安定感があり、悪い意味でコードに個性のない曲が出来上がるでしょう(決してダメな曲になるわけではありませんよ)。
 裏を返せば、変に攻めていない曲を作るだけであれば、ダイアトニックコードを使いまくればいいんです。この知識のもと、もう一回件の進行を見てみましょう。

C D E/B F/C G/B A/C♯ B C F/C A/C♯

 ※スラッシュに関しては、本記事ではスルーで大丈夫です。スラッシュの左側がコード名なので、そこだけに注目してください。

 はい。頭おかしいですね。
 無理に明るい曲を目指してメジャーコードを詰め込んだ結果、ダイアトニックコードでないコードを多用してしまったのです。
 ダイアトニックコードでないコードは、使ってはいけないというわけではありません。なんなら楽曲によっては効果的に使って深みを出せる力を持っています。でもこんな風になんも考えずに連打してはいけません。むしろ不協和音になって邪魔なだけです。

 このままではただの不協和音をばらまく曲について過去の自分の行いを反省するだけになってしまうので、この曲から学べることを考えてみました。結論としては、「こんなに不協和音だらけなのに、曲全体を聞くとそんなに違和感ないように出来上がっている」でした。

 この曲の歌詞などから、この曲は過去や未来の自分に対する後悔や恨みを歌う曲だったようです。しかもそれも、明るい(と当時は思ってた)コードとハモリ付きの明るいメロディーで、ハイテンポなドラムや伴奏と共に。
 そう考えると、この曲は『きゅうくらりん』や『クーネル・エンゲイザー』のように、明るい雰囲気の裏でえぐいことを歌っている曲だったというわけです。


 令和トレンドのこういう曲調を令和になる数年前に取り入れていたんですね!過去の自分は凄いなあ!!!!!




はい。


 こんだけこき下ろしといてなんですが、実際コードの一つ二つで曲がぶっ壊れるということはさらさらありません。「不協和音だ!ギャァ!」となるのは大抵メロディーが不協和音になっているときです。

 余談ですが、他にもこういうダイアトニックコードを知らない人ムーブをかましている曲は多数見つかりました。いつかアレンジしてどこかでリリースするとなったらそこらへんしっかりアレンジしないと。


2.実験的がすぎる1コード曲

 記事を書いている途中で気づきましたが、この分析の焦点はほぼほぼコード進行になりそうです。

 さて、基本的に一曲の中でコードは複数使うのが当たり前です。Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロで異なるコード進行を使い分けることも多いです。
 それなら当然、曲中ずっとひとつのコードだけで貫き通す曲というのはかなり珍しいわけです(ないわけではない)。そして、今回いろんな自楽曲を漁ったところ、見つかってしまいました。しかも、それも扱いが難しいコードで。

問題のコード
実際に曲で使われていたものを再現したので4音になってますが、
コード自体は一番高い音は無くても成立します。

 これは「Fsus4(エフ サスフォー)」と呼ばれるコードです。sus4は響きがふわふわしていて、すぐ次にメジャーコードを鳴らすと良い感じになるという特徴があり、メジャーコードの補助として使うことが多い和音です。
 それをあろうことか、りじんくん(こうこういちねんせい)は、一曲通してこのコードを使う楽曲を作ってしまいました。

 未完成のまま放置されています(当たり前)。

 一応この曲を擁護しておくと、Fsus4のもつキラキラとした、ふわふわとした響きを活かして夏の朝をイメージしたジャジーな曲になっていました。つまり、挑戦的なことをしている自覚はありながらそれを夏うた(歌詞はない)に昇華させているので、メロディーやリズムの構成が上手かったんですね。

 なお、私の作曲人生で、1コードの曲はこれが最初で最後です。そして、二度と更新されることもないでしょう


3.不協和音を転調でイリュージョン

 ここまでは、過去の自分の謎を紐解いて、それをごり押しで良い感じに解釈していたんですが、ここからはシンプルに自分が過去に起こした奇跡を見てみたいと思います。

 ここからは本格的な音楽理論の話があるので、変に簡単に言うよりも用語を使う方がむしろ分かりやすいので、解説を入れておきます。

【ここから使う音楽理論用語】
・コードをⅠ、Ⅱ、Ⅲ…と呼ぶことについて
 コードを呼称するときは基本的に「アルファベット+分類」なのですが、アルファベットはコードを「絶対的に」指定します。
 例えば「Am」と言われたらラ+ド+ミで確定、イ短調やハ長調で特に重要なコードですが、それ以外でもAmと言われたら基本的にはラドミです。これでは他の調でコード進行の話をするときに若干不便です。
 そのため、ローマ数字を使うことで「相対的に」指定する方法を使うことがあります。調の基本の音をⅠとし、それを基準にⅠからⅦまでの音を決め、分類をつけてコードを表します。例えばイ短調で「Ⅰm(いちマイナー)」と言われたらAmですが、ホ短調のⅠmはEmです。どの調でも共通の話をするときはこっちの方が便利ですね。なお、ローマ数字にしなくても通じる文脈では普通の数字も使います。

・コードの分類
 コードには分類とは別に、その調の中での役割があります。
 ・トニック:中心となるコードです。長調ならⅠ、Ⅵmが該当。
 ・ドミナント:トニックに繋げるとうまくいくことが多いコードです。
        長調ならⅤ、Ⅶdim(諸説アリ)が該当。
 ・サブドミナント:何でもできる名脇役です。長調ならⅡm、Ⅳが該当。
 Ⅲmがありませんが、これは状況によってトニックだったりドミナントだったりします。

 3番目に分析するのは、今回の4曲の中で唯一、私が世の中に出している楽曲です。曲名は「洞窟に響けドラムロール」。「け」は誤字ではなく命令形です。『響け!ユーフォニアム』と同じノリです。
 この曲は私が高校生時代、文化祭で制作したゲームの通常戦闘BGMとして使用したものです。フィールドの環境によってちょっとずつ楽器やBPMが違う、ちょっとこだわったBGMです。せっかくならnoteに貼りたいところですが、残念ながらMIDIファイルしかないので断念。
 高校名やゲーム名や当時の私の名義はバレたら身バレするので伏せます。

 本題に入ります。この曲で過去の私が魅せたテクニックは、転調によるサブドミナントマイナーの変化です。
 転調とは単純に曲の途中で調が変化することで、歌曲ではサビ後の落ち着いたパートやラスサビの盛り上がりに良く使われています。
 サブドミナントマイナーは、上述のサブドミナントをマイナーに変えたものです。普通に使うとただの不協和音なので危険な存在ですが、ここぞというときに使うとものすごいエモくなる、諸刃の剣です。

 この曲のAメロ(イ短調)のコード進行はこんな感じです。
Am G/B F/C G/B
Am G/B F/C G/B
Am G/B F/C G/B
Am G/B Fm/C G/B

 基本的にはⅠm、Ⅶ、Ⅵ、Ⅶの繰り返しですが、4回目だけⅠm、Ⅶ、Ⅵm、Ⅶになっています。短調のⅥはトニックかサブドミナントのどちらかになるので、ここではサブドミナントとします。これがサブドミナントマイナーです。
 この曲はこのコード進行がかなり大部分を占めていますが、Bメロ、Cメロを経由して、2回目のAメロに帰って来た時に事態が大きく変化します。

2回目のAメロ
イ短調 Am G/B F/C G/B
イ短調 Am G/B F/C G/B
ハ短調 Cm A♯/D G♯/D♯ A♯/D
イ短調 Am G/B Em/B(変イ短調) G/B

 ここで転調ラッシュ。イ短調から半音3つ分(短三度)上のハ短調に転調します(短三度転調は上でも下でもとてもエモいので私は大好きです)。そして何事もなかったかのようにイ短調に戻ってきたと思ったら、1小節だけ半音1つ分(短二度)下の変イ短調に転調、そしてすぐにまたイ短調に戻ります。

 この転調ラッシュ中に何が起こっていたのか?正直、ハ短調への転調はどうでもよくて、重要なのは1小節だけの変イ短調への転調です。
 1回目のAメロでサブドミナントマイナーがあったところだけピンポイントに転調していることに気づいたでしょうか。これにより不思議な感覚が聞き手を襲います。
 Emは、"イ短調にとっては"Ⅴmのコードです。Ⅴmは短調のダイアトニックコードです。コードだけ聞いていると、さっきまでサブドミナントマイナーとかいう不協和音だったのが突然ダイアトニックコードになり、「あれ?不協和音じゃない?」というような錯覚がします。しかし、現実は当然、転調が入っているのでメロディーは変イ短調のものになっているし、"変イ短調にとっては"Emがサブドミナントマイナーなのは変わりません。
 このように、サブドミナントマイナーだったところだけが転調してまるでダイアトニックコードのように錯覚させられるのに、メロディーは当然転調しているためやはり不協和音になってしまう。この不思議な感覚が、この曲に潜むテクニック?なのです。
 私は、このテクニック?を曲名になぞらえて「洞窟マジック」と呼んでいます。
 皆さんも使ってみてくださいね。
 使ったら教えて下さいね。
 嬉しくなるので。

 そうでなくてもサブドミナントマイナーはいいぞ。



4.人生最高傑作のコード進行

 このコード進行は、2019年に制作、2023年現在未発表の音ゲーを意識した近未来的な曲で、一曲通じて使われているコード進行です。

Lyzine進行として流行らせたい

C F/C G/B Am/C Em/B
(Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅵm-Ⅲm)

 正直言うと、誰にも言いたくない、秘密にしたまま突然世に出したいぐらい好きなコード進行です。
 4小節に5コード入っているので検索が困難でした。そのため、不遜かもしれませんがここでは「Lyzine進行」と名付けさせていただきます。この名前のまま流行ったらまじでうれしい。

 Lyzine進行を分析してみると、基本的なコード進行である1453進行(C-F-G-Em)をアレンジしたものでしかないことに気づきます。もともと、明るい145で上げといて3で落とす、未来的な不安と切なさを醸し出す進行に、さらに6(Am)をぶちこむことによって切ない気持ちを増幅させています。

 ここからは私の独自解釈が混ざるのでお気を付けください。
 1453進行をトニック(T)、ドミナント(D)、サブドミナント(SD)で分けると、T-SD-D-Tになっています。ⅢmはDの後なのでTと解釈するのが妥当でしょう。しかしここにⅥmを加えてLyzine進行にするとどうなるでしょう?ⅥmはTなので、ⅤのDの「次にはTが来てほしい」気持ちをⅢmの代わりに請け負ってくれます。

 1453の場合 Ⅰ(T) Ⅳ(SD) Ⅴ(D)(Tが次に来てほしい) Ⅲm(T)
 14563の場合 Ⅰ(T) Ⅳ(SD) Ⅴ(D) Ⅵm(T) Ⅲm(?)

 56の部分は他のコードの半分の長さなので、請け負えるほどの尺があるか心配ですがまあいいでしょう。すると、1453でTだったⅢmがフリーになりました。ⅢmはTにもDにもなるという話でしたが、ここでDだと解釈したらどうなるでしょうか?
 
そう、コードは繰り返し現れるものですから、Ⅲmの次に来るのはⅠ、すなわちTなのです。なんとも都合よくDの次にTが来てくれたではありませんか。結構無理やりな解釈かもしれませんが、Lyzine進行は循環コードになっているのです。だから一曲通して使い続けても気持ちよく聞き続けられるのかもしれません。

 ちなみに、「人生最高傑作」と銘打っていますが、これは本当です。
 この曲は高校受験の前か後かに完成させたことを覚えています。
 つまり、現在大学生の私は、未だに中学3年生の楽曲を超えられていないと思っている、ということです。その理由のひとつが、当時なけなしの知識で完成してしまったLyzine進行にあることは間違いありません。

3.おわり

 そして、今回この記事を書くにあたって、なぜこの曲はこんなに良いんだろう、ということで真面目にいろいろ分析したわけです。その流れで洞窟マジックやLyzine進行の再発見ができたので、今後、中学生の理人くんを超えたLyzineが生まれるでしょう。生まれるかもしれません。

 ということで、ボードゲームの記事よりもよっぽど長くなってしまいましたが、お疲れ様でした。経験者の方に「ふーん」って思ってもらえるのはもちろん、初心者の方に「ふーん」って思ってもらえることもすごくありがたいです。また何か、別の記事でお会いしましょう。

 またこんど!

――こんなのが初の音楽系記事ってまじ?――

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