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逃亡日記 第30夜 川内倫子"M/E 球体の上 無限の連なり"

ひとめ見た瞬間から、ふっと肩から力がぬけて、心が静かになっていく。
久しぶりに"写真の力"に、こころを持っていかれた。

『川内倫子 M/E  球体の上 無限の連なり』は、ステートメントより解説より、自分の目で心で感じた方がいい…今日はそんな話。


・記憶のかたち

写真×空間×動画のインスタレーションで構成された今回の展示。


『Illuminance 』は異なる2つのビデオが同時に再生されて、ずっと新しい"瞬間"が生成される。

雷、花火、花ふぶき、森、雨、雪…
こどもの頃いつかみた気がする既視感が続く。

きっと、あまりにも日常のひとこまで、こんな風に切り取られることで、初めて"かけがえのない瞬間"だったことを思い出す。


『A whisper』は倫子さんのおうちの裏を流れるせせらぎを切り取って、展示室の床いちめんに動画として映す構成。

音と光と流れる水と。映像だとわかっていても、そっとつま先立ちになって渡ってしまう。


『M/E』は、やわらかなドレープで作られた空間×写真と、大画面の2つの動画で構成される。

いちばん好きな作品
ふりそそぐ虹色のフレア
レンズ越しだからこそ見える世界もある



倫子さんの写真そのものが、ふわっとした光で満ちているんだけど、ドレープを通すことでさらに繊細な印象になる。

ドレープを通した世界もいい✨


光と音と空間しかないのだけれど、シンプルなくみ合わせでさまざまな"記憶のかたち"が展開されて、思ってたより密度の濃い内容だった。

繊細なグレイのグラデーション
この作品もすき


・やわらかな光


町でも森でもアイスランドでも…津波に流され傷ついた町でも。

穏やかな光がさして、水は流れ、鳥がとぶ。

炎は山を駆け、海は氷山を押し流す。

こどもはカーテンにもぐりこみ、森を歩き、花火に声をあげる。

すべてをホームビデオのように、見ている人の心にそっと手を繋いでくるように、倫子さんのレンズが写していく。

アイスランドの氷山も
カーテンの中のこどもも
スーパーボールも 

優しい視線。優しい光。


・写真のふしぎ


『M/E』では、同じ大きさの写真がずらっと並ぶのだけど、それは極小のクラゲと氷山とりんごが同じ大きさで並んでいたりするってこと。

1つの写真として観た時と、被写体の大きさに気づいた瞬間と、自分と世界を捉える感覚がぐるっと変わる。

マクロから広角に切り替えた感じ?
プラネタリウムでぐるりと視点が変わった感じ?

倫子さんの目には、壮大な風景もりんごもクラゲも氷の粒も、同じ大きさ同じ強さで映るんだな…と思ったら、"球体の上 無限の連なり"のタイトルが"あー…そういうことか!"ってすとんと落ちた。

てのひらのうえの氷


雪の中の氷


山のように大きな氷



写真家ってすごいね?

そこにある光と空気を切り取りながら、そこにこめられた"想い"を見る人に伝える。

カメラを持つと、"切り取りたいもの"に集中していって、風景からの被写体からの構図…とか考えて、だんだん視野が狭くなる私。

"世界はこんなに広いんだよ"
…と背中をそっと押された気がした。


※会期中に記事を書こうとして間に合わず…アーカイブとなりました…
と、思ったら‼ ︎滋賀県立美術館に巡回✨
…もう1回みようかな♪

滋賀県立美術館にて
2023/1/21から3/26


川内倫子 M/E 球体の上 無限の連なり
東京オペラシティアートギャラリーにて
2022/12/18まで

読んでくださってありがとう🌟ぽちぽち書いていきますね。