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奥津城に翁の号を刻むなかれ(2)
明神の章 その2 【笛の音】
「喜多さん、おはようございます」
喜多が数人の巫女たちと…先の疫病で家族を失った村娘達を引き取って仕事を与え…ともに八幡を切り盛りするようになって二年。
「太助さん、もう朝のお仕事を済ませたのですか?」
「やっぱり野菜は朝採れが美味いですからねえ。そんで、これ」
境内を清めていた喜多のところへ現れた壮年の村人が、板車に乗せて運んできた瓜を社の軒先に
あの頃の自分を抱きしめる
「あなたはお姉ちゃんなんだから」
私の両親の口癖だった
おもちゃの取り合いになった時
ちょっとした言い争いから喧嘩に発展した時
少しだけ親に甘えたい時
「お姉ちゃんなんだから」
の一言で、私の小さな小さな欲求は全て遮られる
「お姉ちゃんなんだから」
は私にとって呪いの言葉だった
「お姉ちゃんなんだから」
の一言で、私は一家団欒から外れて皿を洗った
寝室で洗濯物をたたんだ
家事を終えて団欒に