この世界

まるで何もないみたい
そこに何もないみたい
美しい景色のくせに
ここには誰もいないみたい

存在しないみたい
確認はできないみたい
汚らわしい体のわりに
常に誰かと一緒にいるみたい

ああ嘘みたい
けれど本当みたい
つまりはこの世界

ああ真実が見たい
けれど冗談を言いたい
それがこの世界


人を憎まない
人を殺さない
人は争わない
人は死なない

人は等しく
人は正しく
誰かに都合よく
誰もが仕方なく

正義という兵器
人を導く
人は欺く

支配欲に支配されて
自分以外の全てのものに
自分と同じを求める始末


昨日と今日
何ひとつ区別しない
難しいことは考えずに
目の前の土を踏む

見えないし聞こえない
何ひとつ目的もない
後は振り返らずに
また目の前の土を踏む

小象のなく声
仔猫のなく声
子供のなく声

ああまるで
人がいない世界で
倒れた木の音みたいだった

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