映画『1917』と主演俳優についての話(前編)

 はじめまして。10年くらい前に映画の感想ブログを書いてたことがあるんですが、久しぶりに筆を取ってみようかと思い立ちました。在宅勤務という名の自宅待機であんまりお外にも出られないしね。

ちなみにこっから結構長いです。しかも映画の話に辿り着くまでの前日譚が長い(一応つながりがあるんです)。ただのオタクの備忘録なので、暇な時にでも読んでくれたらとても嬉しい。

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はい。ご紹介したいのは皆さんご存知かと思います、映画『1917 命をかけた伝令』。アカデミー賞獲ったやつだっけ、ワンカット風が売りなんだっけ、とか。だいたいそんな感じの印象だった上にダンケルク的なやつかな?とか超適当に考えてたすいません。そもそも今年のアカデミー賞はパラサイトしか眼中になかったんだな(ごめんね)。

ざっくりあらすじ。

WW1真っ最中の1917年4月6日、舞台(戦地)はフランス。ドイツ軍と連合軍が睨み合う塹壕戦の最中で、2人の若いイギリス兵がとある作戦の中止命令を届けるべく、伝令として戦地を全力疾走する──…

ほんとにそれだけの、かなりシンプルな筋書き。ワンカット風の撮影方法のため、基本的にはほぼリアルタイムで2人の英兵の行動を追うので、余分なサブストーリーだとかはない。実際に先日滑り込みで観てきたけど、極めてドキュメンタリー的な印象を受けた(映画の感想は後編に記す予定)。


さて、私がなぜこの映画を公開当時(2/14)に観なかったのか、またなぜこのタイミングで柏の映画館まで小旅行をしてまで鑑賞に行ったのか、記憶が新しいうちに記したいと思う。


公開当時(読み飛ばしてくれてOK)

そりゃもう、「どうかした?大丈夫?」って聞かれるくらい宝塚にハマってた。厳密にいうと、はじめてのご贔屓様が2019年10月に退団され(その日にピアス穴を追加をするというクソ重いオタクムーブをかますなどした)、数ヶ月失意の底に沈んでいた私は韓国アイドルの笑顔で傷を癒しつつ冬を乗り越えようと奮闘していた(ちなみにこのKドルの来日コンが3月にあったけど、それもコロナで中止になったよ!!!つら!!!)。

2月初旬までの私は「2度とご贔屓は作らないし作れないと思う。もちろん退団公演期間中は、生まれてからこっちいちばん幸せな時を過ごさせてもらったな…と今でも思っているけど、あのキラキラした世界が彼女なしで回っている事実が私には想像以上に辛い」とやっぱり激重な感情を煮詰まらせていた。友人にも時に涙ながらそう語っていた。卒業という事実ではなく、その先で動き始めた現実を自分で思っていたようには受け入れられていなかったんだろうと思う。

さて、そんな傷心を抱えながら、2/9に友人に誘われて観に行ったのが宙組さんの『エルハポン/アクアヴィーテ』だった。

もうね!!すっっっごい面白かったというかザックザクに刺さっちゃったの!!!!

これについては気が向いたら別個で記事書きたい話なので詳細は省くけど、どハマりした。ついでに言うとトップスターの真風涼帆さんにもどハマりした。およそ数ヶ月の空白期間、2度とこんな気持ちになることなんてないだろう……と思ってたけど、再び私はあの世界に恋をしてしまったのだ。

この公演は2/16が千秋楽だったのだけど、正気を失ったオタクは有給をもぎ取り残り公演期間1週間で8回観に行った。この話するとだいたい「1週間は7日しかないけどどういうこと?」って言われるけど、まぁヅカオタの人たちならわかるよね。推しは観れるうちに観とかないと後悔するんだよ。

というわけで、宙組さんおよびトップスターの真風涼帆さんに持てる財と時間の全てを注ぎ込むのに必死で、2/14公開の映画のことなど当時の私は「観に行こう」とすら思ってなかったのである。


混乱の中で

こんなに宙組と真風さんのことが好きなのに、舞台をたくさん観たいのに!そう、非情なことに世間はコロナ一色に染まっていく。延期・中止になる公演、先の見えない演劇界──エンタメどころではないといった未曾有の混乱に不安がいっぱいの毎日が今も続いて、一体どうなることやら。都知事選は正気を疑う結果だったししんどいね。

さて、舞台の幕が開いてない以上はどうすることもできない。キャンセルになったチケットだけがどんどん手元に増えていって、お金は戻ってくるけど別に嬉しくない……てな状況が続く。実家にも帰れないし、ゴールデンウィークにやることなさすぎだった私はなぜかアコースティックギターを買いました(いまだにLet It Beをのろのろ弾くのが関の山な上達具合)。

4月に入って在宅勤務も増え、毎日タカラヅカスカイステージを眺め、ギターを爪弾き、Netflixでドラマや映画を観ながらTwitterを開く毎日。我ながら完全にやる気を失っている(しかもドラマ『タイタンズ』を完走して、DC界の推しその2ことジェイソン・トッドの相変わらずの扱われ方に酷く心を痛めていた)。

そんな中で映画アカウントのタイムラインを無目的に眺めていたら、とあるツイートが目に飛び込んできたのである。

……誰???

え、、、誰???


「ひと目見たその時から〜♪もう恋の虜〜♪」

途端に心の中のガストンが歌い出す(※ミュージカルオタクは感情が昂るとPTOにあったミュージカルソングを歌い出す習性があります)

え?誰だこのいかにも薄幸そうな俳優さんは……ジョージ・マッ………マ?マッケイ?マカイ?わからんぞ、とりあえず賭けてもいいけど英国人俳優だと思う(当たった)。

そう、この人こそが映画『1917』で主演の1人を演じたジョージ・マッケイ氏だった。ちなみに発音は「マカイ」か「マカーイ」が近いそう。この記事でも、この後はマカイくんと呼ばせていただきます。


ジョージ・マカイとの出会い

第一印象「待って待って、顔が好き」というミーハーにもほどがあるぜ、としか言いようのない私・ミーツ・マカイくん。もはや誰がRTしてくれたのか分からないけど本当にありがとうございます。あなたのおかげで私は彼に出会えました。

速攻でそのままwikiで調べると、どうやらまだ若い俳優さんらしい。そしてやっぱりイングランド出身か。出演作の項目を見ると『1917 命をかけた伝令』と見覚えのあるタイトルがあるじゃないか。

ここでやっと1917という映画が私の視界に入ってきたわけだ。ああ、あのワンカット風撮影が話題になった戦争映画か…私戦争映画はあんまり得意じゃないんだよな……ていうかヅカライフ真っ最中だったじゃんあの時………そりゃ観ねえはずだわ……。

検索で「1917は映画館で見るべき!」という感想を拝見するたび、己のタイミングの悪さに嘆いた。そりゃ観たいよ!どう考えてもスクリーン映えする映画だもんね、IMAXで観させてほしいよね!!どっこいすでに月末には配信開始、次月には円盤発売も決まっており、とっくの昔に公開終了していた。完。

とりあえずすぐに観れない1917は置いておいて、マカイくんの出てる作品をチェックすることにする。もしかしたらこれを読んで興味が湧いてくれたかもしれない人向けに、私が今の所観れた作品について本日(7/21)時点での視聴環境をご紹介しよう。

①Netflix→はじまりへの旅、ずっとあなたを待っていた、オフィーリア

②U-NEXT→11.22.63(ドラマ)、わたしは生きていける、サンシャイン、パレードへようこそ

③アマプラ→マローボーン家の掟

④TSUTAYAディスカス→兵士ピースフル

さてこのジョージ・マカイくん、28歳と若手ながら子役上がりのためキャリアが長い。実は全然『無名の新人』じゃないのである(上記の作品意外にも出演作はあるし、日本で公開してないのだと個人的にケリーギャングがとても気になっている)。舞台経験もあり、大人しげで内向的な風貌とは裏腹にものすごく身体能力が高くてバッキバキ。もう信じられないくらいバッキバキなのでちょっと画像検索してきて欲しい。

(マッチョというよりバレエダンサーのような印象を受ける。体脂肪率を聞きたい)


そして、主に近年の出演作を大まかに観たことがある人は確信を持っていると思うけど、マカイくんはどうやら結構な頻度で酷い目に遭い、心を壊したり病んだり、最悪死んだりする(あるいはそこまで行かなくても一度は酷い目に遭う)。しかも自業自得じゃなくて外的要因でそうなってしまうパターンが多いらしいぞ。

……そういうの大好きだ!

個人的にしんどい指数高めでおすすめなのはマローボーンと11.22.63。マローボーンは非常に完成度の高いサスペンスホラーだし、11〜は原作スティーブン・キングで1シーズンのミニドラマなので比較的観やすい。お時間あれば是非どうぞ。しんどくないのがいいよ〜という方ははじまりへの旅とパレードへようこそかな。どっちも素敵な作品なのでこちらもぜひ。


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(まるでUKロックバンドのベーシストだなってお顔立ちも好きなんですね…ハイ……)


まだ彼を知って日の浅いファンが言うことなので「へぇ〜」くらいに見てもらえればと思うのだけど、マカイくんは「決して派手なタイプではないが、非常に誠実かつ堅実でバランス感覚に優れた演技をする役者」だと感じている。求められる役割や存在感、空気感を的確に捉えている人なんじゃないだろうか。カメレオン俳優ともまた違う気がするけど、「本質」まで変えてくるタイプだから作品ごとに印象がガラッと変わる。なので非常に見応えがあると感じた。あと若いのにSNSやってなくて機械音痴っぽいところとか推すしかないし、ミュージカルオタクとしてはあの身体能力と歌唱力を活かしてぜひウエストサイド物語のトニーなんかを演ってもらいたいのだ。

というわけで、すっかり役者ジョージ・マカイの魅力にやられてしまった私はある日、Google検索で驚きの事実を知る。

とっくの昔に公開終了してると思った『1917』が、キネマ旬報シアター柏さんでやってるじゃないか!!(※7/17で上映終了しています)


……よし、旅に出よう。


(後編へ続く)