Intel 共同創業者 ゴードン・ムーア氏死去

リュディアです。たくさんの報道がなされていますが、インテルの共同創業者の一人であるゴードン・ムーア氏が3月24日に亡くなりました。94歳と大往生です。Intel のホームページに掲載されている Gordon Moore, Intel Co-Founder, Dies at 94, Moore, who set the course for the future of the semiconductor industry, devoted his later years to philanthropy.へのリンクをつけておきます。

半導体、および半導体業界の生き字引、あるいは生きる伝説のような方ですね。皆さんはウィリアム・ショックレーという方をご存じですか?トランジスタを発明し、ノーベル賞を受賞された方です。ムーア氏はこのショックレーに誘われてショックレー半導体研究所に勤めましたが、ショックレーと折り合いが悪いため退職しフェアチャイルドセミコンダクターを設立します。このフェアチャイルドセミコンダクターが実質、インテルの母体となります。このときにショックレー半導体研究所をやめてフェアチャイルドセミコンダクターを設立した8人が八人の反逆者、裏切り者と言われています。

辞めた後に成功した人は裏切り者と言われることが多いです。ただ特許を含め、技術をどこまで持ち出したのかが正確にはわからないのでこの話はここでやめておきます。

ムーア氏の名前を冠したムーアの法則が有名です。厳密にはムーア予測であって法則では無いのですが、1965年に今後10年は集積回路あたりの部品数は毎年2倍になると予測しました。集積回路あたりの部品数をトランジスタ数と読み替えているものも多いです。しかし最近の報道によくある性能が2倍になるという記述はいただけません。n年後に2のn乗になるという予測なのですがすごいですよね。1年後に2倍、2年後に4倍、3年後に8倍 ... 10年後に 1024倍というわけです。

最初にムーアの法則が発表された 1965年の10年後である1975年に今後10年は集積回路あたりの部品数は2年ごとに2倍になるという予測に修正しました。それでも20年後 = 1995年には 1024倍になる、と言ってるわけなのですごい話です。そしてこの法則というか予測は、半導体業界の前工程プロセス開発のロードマップとしてムーアの法則を守れという強制力を生むことになります。例えばわかりやすい例をあげると 0.1um = 100nm の半導体プロセスがあったとします。技術開発により 10nm の半導体プロセスが開発されたとします。このとき1次元方向に 10/100 = 0.1、面積なので二次元で考えると 0.01 つまりトランジスタのサイズが 1/100 になるということです。この考え方でムーアの法則が守られてきましたが、どうしても限界がやってきます。今は台湾 TSMC が最強ですが、少し前までは半導体製造においては Intel が最強であったため自社の創業者の予測を守ろうという機運もあったと思います。

そして1995年くらいからだと思うのですが More than Moore という言葉が生まれました。More と Moore をかけてるんですね。実際にはムーアの法則はもう守れないから他の方法で集積度を上げていくというように考え方を変更したということです。例えば以下のような記事があります。

今回はムーア氏の追悼なので技術的な話はここでやめておきますが、とにかく偉大な研究者かつ経営者であったことは間違いありません。シリコンバレーの父と呼ばれる所以です。この方がおられなければ今のスマートフォンも GAFAM も、数年あるいはそれ以上、遅れて誕生していたのだと思います。

では、ごきげんよう。

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