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【ものがたり】ショートショート

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短い物語を。温かく見守ってください。修行中です。
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#ホラー

貝輪|ショートショート

 あなたは、私の友達に会ってくれる。会わせられる人なのが嬉しくて、ついつい私も友人との場に連れていったわ。本当にバカね、私ったら。 〇○○  他の友達は名前覚えないのに、■■のことは覚えるのね、って言えば。 「俺■■のしもべやからな。あいつは魔性の女やで」  冗談だとしても、そんなの聞きたくないの。ふーんって流した私に、否定の言葉くらい寄越してよ。 「■■って、結婚はすんの?」  それあなたに関係あるの? 「彼氏が俺と同じタイプなんは聞いたんやけど」  それで? だから

死にたがり屋のひとりごと|ショートショート

――ねえ。わたしが死んだら、この世界ってどうなるのかな?  彼女がそんな質問をしてきたのは、真夏らしい暑さの昼間のことだった。ぼくは畳の上に転がって、縁側から入ってくる、草の匂いがする風を感じていた。日光が燦燦と降り注ぐ庭を眺めながらだべってるぼくらは、なんとも言えず夏らしかった。 ――世界の話? さあ、なにごともなく続いていくんじゃない?  ぼくは暑さでぼーっとなりながら答えた。だからそのとき、彼女がどんな顔をしていたかは知らない。 ――おかしくない? だってこの世

降ってわいたお手伝い|ショートショート#note墓場

 落とし物を拾った。とても奇妙な落とし物を。 「これ…なに…?」  それを持って帰ると、妻はぐっと眉をしかめて、なにかこわいものでもあるかのようにそれを見た。 「分からない。見た目通りなら、手、だと思う」 「うん、そうね、わたしにも手に見えるわ」  険しい顔のまま頷いた妻は、それから目を離さずに僕のジャケットをハンガーにかけた。 「不思議なのはね、なんで手首から先だけが独立してるのかってことなの」  僕は頷く。妻の疑問はもっともだ。手、というものは普通腕があって