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『ファントムメナス』⑤


 千束がクラリスと共に小走りに横断歩道を渡ってくるのが見えた時、すでにたきなはやるべき事を終えていた。

 尾行者の肩をつかむと同時に引き寄せ、バランスを崩しかけた相手の膝裏につま先で軽く一撃を与えてその場に跪かせると、背後から髪の毛をわしづかみにしつつ、もう一方の手で逆手に握ったペンを頭蓋骨と頸骨の隙間に軽く・・突き立てていた。

 やや上向き加減のペン先はすでに皮膚を破っており、もし暴れようものなら、ここから・・・・どうなるのかは追跡者の彼にもしっかり伝わっている事だろう。

「たきな……あー……」

 店から出てすぐの場所で、走ってもいない千束とクラリスなのだが、二人して「はぁ、はぁ……」と荒い息。
 額に汗が浮いており……いろいろ限界なのが察せられた。

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