『フキの恩返し』⑤
可能性は十分過ぎるほどにあった。少し考えればこの事態も想定できたかもしれない。
なのに、そこまで考えが及ばなかったのは滑稽ですらある。
フキは思わず自嘲した。
ちゃんと事前に言っておけば良かったのだ。
たった一言……いや、それでもサクラは気を遣ったかもしれない。
……遣うだろう。サクラはそういう奴だ。
なら、せめてサクラが昨日何を食べてきたのかを訊けば……いや、それも無理だ。
昨日のフキはもんじゃ焼きの訓練をして、図書館に寄った事で門限ギリギリの帰宅となっている。当然、サクラとあまり会話をしている時間はあまりなかった。